【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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彼と彼女のその後 編

人生を楽しむための選択肢

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「今の君は何でもできるんだよ。もう何に縛られる必要もない。男を見て怯えなくていいし、スカートを穿くのが怖くても俺が守るから、自由にお洒落を楽しんでいいんだよ。『自分は男っぽい』なんて呪いを掛けないで、憧れている服を好きに着てごらん」

 ゆっくり目を開くと、目の前に信じられない美形がいる。

 そっと彼の頬を撫でると、涼さんは愛しそうに目を細めて笑った。

「恵ちゃんは今まで硬くつぼんでいた。でもそろそろ、周りを気にする事なく咲いてみていいんじゃないかな? 本当はスカートに憧れているのに、〝何か〟を気にして穿けないなんて勿体ない。……正直、俺だって恵ちゃんのスカート姿見てみたいよ」

 最後に涼さんは悪戯っぽく付け加える。

「……涼さん、スカートを穿いた女性が好きですか?」

 恐る恐る聞いてみると、彼らしい答えが返ってきた。

「恵ちゃんがパンツスタイルのほうが好きというなら、無理強いはしない。でも両方楽しみたい気持ちがあるなら、ぜひスカート姿も見てみたいな。選択肢が多くあるなら、色々経験してみるほうが楽しいと思うんだ」

 そう言われ、涼さんとデートする時にスカートを穿く自分を想像してみる。

 色々気にしてしまいそうだけど、いつもみたいな男っぽい格好でいるよりは、さまになるかもしれない。

「……うん。……じゃあ、今度お店に行った時に見てみます。……何が似合うのか分からないんですが」

 いつも服を買う時は朱里のアドバイス通りに買っていて、それで周りから「似合ってる」と言われるスタイルができている。

 でもスカートにも色んな種類があって、果たして何が似合うか分からないから、また朱里に相談してみないと。

(……服屋の店員って苦手だからな……)

 最近でこそ、話しかけていいか悪いかの意思表示ができるカラーカードを導入した店もあるみたいだけど、基本的にあちらも接客業だから、商品を見ていると話しかけてくる事が多い。

 コミュ障ではないつもりだけど、得意ではない分野でプロの話術に勝てるはずもなく、苦手意識を抱いたら即、店から逃げてしまう癖がある。

「じゃあ、これから来てもらう?」

「はい?」

 彼の言っている事が分からず、私は目を瞬かせる。

「ちょうど俺も夏になる前に着る物が欲しかったし、一緒に見てみようか」

 そう言うと、涼さんはスマホを出してどこかに電話を掛ける。

 呆気にとられて見ていると、簡潔に用事を済ませた涼さんはニッコリ笑って言った。

「これから外商が来てくれるから、のんびり待ってようか」

「がい、しょう」

 セレブ御用達の単語を耳にし、私はピキーンと固まってオウム返しに言う。

「……い、……いや。……私、デパートの服とか高くて買えないんで、その辺のファストファッションで充分…………デス……」

「いいから、気になった服、何でも買ってあげるよ。勿論、スカートやワンピースだけじゃなくて、パンツも靴も帽子もアウターもアクセサリーも、一通り持ってきてもらうから」

 おう…………っ…………。

 私は両手で顔を覆い、タラタラと冷や汗を掻く。

 トラウマを打ち明けて失念していたけれど、この人は馬鹿がつくほどの金持ちだった。

 ランドでも色んな物を『買ってあげようか?』と言っていたし、結局指輪ももらってしまったし……。

「あ、……あの、……返せる宛てがありません……」

 お金がないと言うのは恥ずかしいけれど、買ってしまう前にちゃんと言わなくては。

「なに言ってるの。俺が恵ちゃんにお金を請求するわけがないでしょ。そんなせこい事しないよ」

 涼さんはパチクリと目を瞬かせて言ったあと、「そうだ」と言って立ちあがった。

「少し待ってて」

 彼はそう言ってリビングから出て、どこかに行ってしまう。

「はぁ……」

 溜め息をついた私は、いつまでも寝転がっているのもなんだと思い、フカフカのクッションに背中を預けて脚を伸ばす。

 ディープソファは、座る角度のまま横になれるほど座面の幅があり、ハッキリ言ってキングサイズのベッドみたいだ。

(このリビングにいるだけで生活できそう)

 座った感じの弾力も程よく、布団を掛けたらそのまま快適に眠れそうだ。

(……涼さんと一緒に住む……、か)

 誰だってセレブみたいな生活をしたいって思うだろう。

 私も希望が叶うなら、今の賃貸マンションより広くてグレードの高い所に住んでみたい。

(でも、本気なのかな)

 いまだに涼さんと付き合っている実感がなく、今後彼とどんな交際を続けるのか、想像できていない。

 と、涼さんが「お待たせ」とA4の紙を手に戻ってきた。

「色々戸惑う事があると思うから、簡単な契約書を作ってみた」

「契約書!?」

 その単語を聞き、私は目を丸くして声を上げた。
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