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彼と彼女のその後 編
ギューしていい?
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「けーいちゃん」
涼さんは嬉しそうに私の名前を呼び、ゆっくり近づいてくる。
けれど足を止め、ポケットからスマホを出すと私に向けた。
「その、ちんまりと体育座りしている姿が可愛いね。写真撮ってもいい?」
「え。……ど、どうぞ……」
まさか体育座りを褒められるとは思わなかった。
「ピースとかしたほうがいいですか?」
「あっ、ピースいいね。可愛いね」
なんだか、どんどん涼さんが運動会に来たお父さんに見えてきた。
私は運動帽を被った気持ちになり、少し照れながらピースをする。
カシャッと音がしたあと、私はハッとして尋ねた。
「あの、涼さん、SNSアカウントとかあるんですか?」
「いや? ほぼしてない」
「ほぼとは」
「家族と限られた友達だけがフォロワーの、写真を見せる用鍵アカウント。自慢とかじゃなくて、俺、海外に行ったら連絡しなくなって心配させるから、SNSに写真ぐらい載せろって言われて、専用のアカウントを作ったんだ」
「はぁー……」
そう言われると涼さんらしい。
「見てみる?」
「はい」
返事をすると、涼さんはスタスタ近づいてきて、私が座っているリクライニングソファの肘掛けに腰かけた。
(わっ)
急に距離が近くなってドキッとするも、彼はスマホを操作してSNSの画面を出し、「どうぞ」と手渡してきた。
(わ……、いい匂いする……)
涼さんからは私が使ったのと違うボディソープの香りがし、ついクンクンしてしまいそうになり、内心で「犬じゃないんだから!」と突っ込みを入れる。
涼さんの写真アカウントは、さすが世界中行っているだけあって、多国籍に溢れている。
食べ物は珍しいし、広々とした大地や色んな人種の人と笑顔で映っている写真もあった。
(こうやって見ると、御曹司っていうより世界を知っている人っていう感じだな)
そう思うと、彼を見る目が変わった。
今までは美形とか、物凄いお金持ちという印象が強かったけれど、海外に行けば彼の容姿がどうとられるか分からないし、私服姿だと余計に三日月家の御曹司とは思えないだろう。
(普通のTシャツにデニムだし)
写真に写っている涼さんからは、御曹司感はなく、気のいいヒッチハイカーみたいな雰囲気が出ている。
画面をスクロールしてざっくりと写真を見せてもらったあと、私は「ありがとうございます」と彼にスマホを返した。
「どういたしまして」
すると、お礼を言われた直後にチュッとキスをされてしまった。なんで!?
ビックリして固まっていると、涼さんは私を見てクスクス笑う。
「ごめん。恵ちゃんが可愛くて、ちょっかいかけたくて堪らない。ギューしていい?」
「……い、いいですけど……」
まさか涼さんが「ギュー」とか、可愛い事を言うと思わなかった。
朱里だったら「牛していい?」って言うんだろうか。あの子なら言いかねない。
そんな事を考えている間にも、涼さんは私をギュッと抱き締めてくる。
そして小さく「可愛いなぁ……」と呟いたのが聞こえ、私はじんわりと頬を染める。
「抱っこしてもいい?」
「え? わ、わっ」
返事をする前に涼さんはヒョイッと私を横抱きし、怖くなった私はとっさに彼に抱きつく。
「恵ちゃんは軽いよね。抱きやすい」
涼さんはそう言いながらベッドに向かい、ポスンと私をキングサイズベッドの上に下ろす。
「あ……、と」
どうすべきか分からなくて固まっていると、涼さんは「入ってみる?」と羽根布団をめくった。
「……お、お邪魔します……」
私は小さな声で挨拶をし、モソモソとワラジムシのように布団の中に潜った。
(どうしよう……)
ドッドッ……と胸が高鳴り、何もしていないのに体が熱くなって堪らない。
涼さんに背を向けて寝ていたけれど、背後で彼が身じろぎしたのを感じてビクッと体を強張らせた。
涼さんは嬉しそうに私の名前を呼び、ゆっくり近づいてくる。
けれど足を止め、ポケットからスマホを出すと私に向けた。
「その、ちんまりと体育座りしている姿が可愛いね。写真撮ってもいい?」
「え。……ど、どうぞ……」
まさか体育座りを褒められるとは思わなかった。
「ピースとかしたほうがいいですか?」
「あっ、ピースいいね。可愛いね」
なんだか、どんどん涼さんが運動会に来たお父さんに見えてきた。
私は運動帽を被った気持ちになり、少し照れながらピースをする。
カシャッと音がしたあと、私はハッとして尋ねた。
「あの、涼さん、SNSアカウントとかあるんですか?」
「いや? ほぼしてない」
「ほぼとは」
「家族と限られた友達だけがフォロワーの、写真を見せる用鍵アカウント。自慢とかじゃなくて、俺、海外に行ったら連絡しなくなって心配させるから、SNSに写真ぐらい載せろって言われて、専用のアカウントを作ったんだ」
「はぁー……」
そう言われると涼さんらしい。
「見てみる?」
「はい」
返事をすると、涼さんはスタスタ近づいてきて、私が座っているリクライニングソファの肘掛けに腰かけた。
(わっ)
急に距離が近くなってドキッとするも、彼はスマホを操作してSNSの画面を出し、「どうぞ」と手渡してきた。
(わ……、いい匂いする……)
涼さんからは私が使ったのと違うボディソープの香りがし、ついクンクンしてしまいそうになり、内心で「犬じゃないんだから!」と突っ込みを入れる。
涼さんの写真アカウントは、さすが世界中行っているだけあって、多国籍に溢れている。
食べ物は珍しいし、広々とした大地や色んな人種の人と笑顔で映っている写真もあった。
(こうやって見ると、御曹司っていうより世界を知っている人っていう感じだな)
そう思うと、彼を見る目が変わった。
今までは美形とか、物凄いお金持ちという印象が強かったけれど、海外に行けば彼の容姿がどうとられるか分からないし、私服姿だと余計に三日月家の御曹司とは思えないだろう。
(普通のTシャツにデニムだし)
写真に写っている涼さんからは、御曹司感はなく、気のいいヒッチハイカーみたいな雰囲気が出ている。
画面をスクロールしてざっくりと写真を見せてもらったあと、私は「ありがとうございます」と彼にスマホを返した。
「どういたしまして」
すると、お礼を言われた直後にチュッとキスをされてしまった。なんで!?
ビックリして固まっていると、涼さんは私を見てクスクス笑う。
「ごめん。恵ちゃんが可愛くて、ちょっかいかけたくて堪らない。ギューしていい?」
「……い、いいですけど……」
まさか涼さんが「ギュー」とか、可愛い事を言うと思わなかった。
朱里だったら「牛していい?」って言うんだろうか。あの子なら言いかねない。
そんな事を考えている間にも、涼さんは私をギュッと抱き締めてくる。
そして小さく「可愛いなぁ……」と呟いたのが聞こえ、私はじんわりと頬を染める。
「抱っこしてもいい?」
「え? わ、わっ」
返事をする前に涼さんはヒョイッと私を横抱きし、怖くなった私はとっさに彼に抱きつく。
「恵ちゃんは軽いよね。抱きやすい」
涼さんはそう言いながらベッドに向かい、ポスンと私をキングサイズベッドの上に下ろす。
「あ……、と」
どうすべきか分からなくて固まっていると、涼さんは「入ってみる?」と羽根布団をめくった。
「……お、お邪魔します……」
私は小さな声で挨拶をし、モソモソとワラジムシのように布団の中に潜った。
(どうしよう……)
ドッドッ……と胸が高鳴り、何もしていないのに体が熱くなって堪らない。
涼さんに背を向けて寝ていたけれど、背後で彼が身じろぎしたのを感じてビクッと体を強張らせた。
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