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四人でのお泊まり会 編
どこで寝るか会議
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「私、あそこの大きなソファでも充分ですよ。寝心地良さそう」
「なんで朱里がソファで寝るんだよ。朱里がベッド使って、俺がソファでいいだろ」
尊さんはキョトンと瞬きをして言うけれど、そうはいかない。
「だって尊さんのほうが、この家にお邪魔した歴が長いでしょう? 恵は公式アンバサダー。私なんて新参者なんですから、土間でいいんです。土間」
「どこの奉公人だよ」
「公式アンバサダーってなに」
二人に同時に突っ込まれ、私は「だって……」と両手の人差し指をツンツンする。
尊さんは溜め息をついたあと、恵を見て尋ねる。
「中村さんはどうしたい? 一応、今日ここで皆で泊まろうと思ったのは、不安を抱えた二人がお互いの無事を確認できたほうがいいという事と、それぞれの恋人とも過ごせたほうがいい、って理由からだけど」
尊さんに尋ねられ、恵は少し考える。
「……どっちを優先するかとかじゃないんですが、朱里と一緒に寝たいです。ショックな出来事があった朱里を慰めたいし、私も安心したい。……私も朱里も、恋人の前だから口汚く罵らず、我慢しているところはあります。……だから、ちょっと被害者同士二人になって、言いたい事を言う時間も必要かな……と」
そう言われ、涼さんは頷いた。
「分かった。確かにそうしたほうがいいね。……でも、どうしようか。俺のベッドで二人で寝るかい?」
「いや! 家主に対してそれはあまりにも」
私は両手を突き出してブンブンと振る。
「涼さん、押し入れ……、はこの家にはないかもしれませんが、どこかに敷き布団はありませんか?」
「あるよ」
「じゃあ、私の部屋でベッドと敷き布団とで寝ます。篠宮さんは空いた客間のベッドで寝てください。……私が仕切るのもなんですが」
「了解、そうしよう」
涼さんはパンと手を打って立ちあがると、「布団を運ぶね」とスタスタ歩き出す。
「あっ、私が寝ますから、私が運びます!」
すぐに立ちあがって追いかけようとしたけれど、涼さんに目の前に手を突きつけられ、寄り目になって立ち止まった。
おずおずと顔を上げると、涼さんはニッコリ笑って言う。
「朱里ちゃんはお客様で、今日とてもしんどい想いをした人だ。ここは俺の家だし、お客様をもてなすのは当たり前の事。それに自分の手が空いてるのに、女の子に重い物を持たせる育ちはしていないんだ」
顔も考えもイケメンな涼さんの言葉を聞いて目を見開いていると、彼は私の両肩に手を置き、クルッと回れ右させる。
「座ってゆっくりしてて」
そう言って歩いて行ってしまったので、私はモソモソと元座っていた場所に戻った。
「……できた人ですね」
感心して言うと、尊さんはちょっと自慢げに「だろ?」と眉を上げて笑う。
「恵も本当に良かったね。涼さんみたいな人が彼氏で」
隣に座っている彼女をツンツンとつつくと、恵は難しい表情で腕組みする。
「……いい、……んだけど。……あまりに完璧すぎて申し訳なくなっちゃう。あれもこれもやってくれるから、何ができるかな? って考えると、自分が小物すぎて泣けてくる」
「分かる! 私も尊さんと一緒にいると、まさにそれ」
真顔になって頷くと、彼は「おい」と項垂れる。
「あんまり神聖視しなくていいぞ。男って、好きな女の前ではいつでも格好付けていたいだけだから」
その言葉を聞き、私はキョトンと目を丸くする。
「尊さんもいつも格好付けてる?」
すると彼は少しふてくされて答える。
「格好付けてるよ。朱里はすげぇ可愛いし、見放されたくない。理想の男でありたいと思ってるし、頼られる存在になりたい」
「激重……」
恵が呟き、尊さんは疲れたように俯く。
それから顔を上げ、溜め息をつくと脚を組んで言った。
「あのなぁ、俺と涼が二人で旅行してる時なんて、まぁ大雑把で酷いもんだぜ。お互い寝癖そのままで、室内に下着やら靴下やら干すし、パンイチで寝るし」
私と恵は彼の言葉を聞き、「ほー……」となってから顔を見合わせる。
「……だって男同士だしねぇ」
「そんなもんだよねぇ……。うちの兄貴と似たようなもんだわ」
「……そう捉えてくれるかもしれないけど、間違えても好きな女の前ではそういう姿は見せたくないし、気の利く頼れるいい男って思ってほしいわけ」
私は少し照れくさそうに言った尊さんを見て「ふふん?」と笑い、彼の頬をツンツンつつく。
「照れミコ?」
「なんで朱里がソファで寝るんだよ。朱里がベッド使って、俺がソファでいいだろ」
尊さんはキョトンと瞬きをして言うけれど、そうはいかない。
「だって尊さんのほうが、この家にお邪魔した歴が長いでしょう? 恵は公式アンバサダー。私なんて新参者なんですから、土間でいいんです。土間」
「どこの奉公人だよ」
「公式アンバサダーってなに」
二人に同時に突っ込まれ、私は「だって……」と両手の人差し指をツンツンする。
尊さんは溜め息をついたあと、恵を見て尋ねる。
「中村さんはどうしたい? 一応、今日ここで皆で泊まろうと思ったのは、不安を抱えた二人がお互いの無事を確認できたほうがいいという事と、それぞれの恋人とも過ごせたほうがいい、って理由からだけど」
尊さんに尋ねられ、恵は少し考える。
「……どっちを優先するかとかじゃないんですが、朱里と一緒に寝たいです。ショックな出来事があった朱里を慰めたいし、私も安心したい。……私も朱里も、恋人の前だから口汚く罵らず、我慢しているところはあります。……だから、ちょっと被害者同士二人になって、言いたい事を言う時間も必要かな……と」
そう言われ、涼さんは頷いた。
「分かった。確かにそうしたほうがいいね。……でも、どうしようか。俺のベッドで二人で寝るかい?」
「いや! 家主に対してそれはあまりにも」
私は両手を突き出してブンブンと振る。
「涼さん、押し入れ……、はこの家にはないかもしれませんが、どこかに敷き布団はありませんか?」
「あるよ」
「じゃあ、私の部屋でベッドと敷き布団とで寝ます。篠宮さんは空いた客間のベッドで寝てください。……私が仕切るのもなんですが」
「了解、そうしよう」
涼さんはパンと手を打って立ちあがると、「布団を運ぶね」とスタスタ歩き出す。
「あっ、私が寝ますから、私が運びます!」
すぐに立ちあがって追いかけようとしたけれど、涼さんに目の前に手を突きつけられ、寄り目になって立ち止まった。
おずおずと顔を上げると、涼さんはニッコリ笑って言う。
「朱里ちゃんはお客様で、今日とてもしんどい想いをした人だ。ここは俺の家だし、お客様をもてなすのは当たり前の事。それに自分の手が空いてるのに、女の子に重い物を持たせる育ちはしていないんだ」
顔も考えもイケメンな涼さんの言葉を聞いて目を見開いていると、彼は私の両肩に手を置き、クルッと回れ右させる。
「座ってゆっくりしてて」
そう言って歩いて行ってしまったので、私はモソモソと元座っていた場所に戻った。
「……できた人ですね」
感心して言うと、尊さんはちょっと自慢げに「だろ?」と眉を上げて笑う。
「恵も本当に良かったね。涼さんみたいな人が彼氏で」
隣に座っている彼女をツンツンとつつくと、恵は難しい表情で腕組みする。
「……いい、……んだけど。……あまりに完璧すぎて申し訳なくなっちゃう。あれもこれもやってくれるから、何ができるかな? って考えると、自分が小物すぎて泣けてくる」
「分かる! 私も尊さんと一緒にいると、まさにそれ」
真顔になって頷くと、彼は「おい」と項垂れる。
「あんまり神聖視しなくていいぞ。男って、好きな女の前ではいつでも格好付けていたいだけだから」
その言葉を聞き、私はキョトンと目を丸くする。
「尊さんもいつも格好付けてる?」
すると彼は少しふてくされて答える。
「格好付けてるよ。朱里はすげぇ可愛いし、見放されたくない。理想の男でありたいと思ってるし、頼られる存在になりたい」
「激重……」
恵が呟き、尊さんは疲れたように俯く。
それから顔を上げ、溜め息をつくと脚を組んで言った。
「あのなぁ、俺と涼が二人で旅行してる時なんて、まぁ大雑把で酷いもんだぜ。お互い寝癖そのままで、室内に下着やら靴下やら干すし、パンイチで寝るし」
私と恵は彼の言葉を聞き、「ほー……」となってから顔を見合わせる。
「……だって男同士だしねぇ」
「そんなもんだよねぇ……。うちの兄貴と似たようなもんだわ」
「……そう捉えてくれるかもしれないけど、間違えても好きな女の前ではそういう姿は見せたくないし、気の利く頼れるいい男って思ってほしいわけ」
私は少し照れくさそうに言った尊さんを見て「ふふん?」と笑い、彼の頬をツンツンつつく。
「照れミコ?」
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