【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
518 / 778
お留守番 編

第二秘書の本音

しおりを挟む
「さしでがましいようですが、素敵な親子で私も安心しました」

 三人の視線を集めた彼は、口を挟んで申し訳なさそうにしながらも、話を続けた。

「私は大学を卒業してから三日月グループに勤めておりまして、七年前、三日月が二十五歳の時から秘書をしております」

 思っていた以上に上条さんが涼さんと長い付き合いだと知り、私たちは目を丸くする。

「ですから、彼の事は上司でありながらも弟のように感じていました。秘書は仕事だけでなく、プライベートにも立ち入る場合があります。私も第一秘書もこの家の鍵を持っていますし、今後恵さんがここに住まわれるなら、朝起きた時に私が家にいる……なんて事もあるかと思います」

「それは……、仕事なので」

 恵は返事をしつつ、ペコリと会釈をする。

「三日月のプライベートを垣間見ていて、彼はあの通りの人柄で御曹司なので、……あまりこの場で言う事ではないかと思いますが、非常に女性からモテました。彼は自分からは言わないでしょうけど、どうしても三日月と結婚したいと強く願う女性から付きまとわれたり、周囲の誤解を招く噂を流されたりなど、痛い目にも遭っていました」

(わあ……)

 確かにイケメン御曹司で性格もいい彼なら、沼ったら最後だろう。

 芸能人よりは身近に感じるかもしれないから、「頑張れば自分を見てくれるかもしれない」と思う女性がいてもおかしくない。

「そういう経験を経て、三日月は女性全般に対して冷たい態度をとるようになりました。先ほどお母様とご挨拶していた時は、とても柔らかな対応をしていましたし、恵さんに対しても包み込むような愛情の示し方をしているかと思います」

 チラッと恵を見ると、とても真剣な顔で上条さんの話を聞いていた。

「偽りのない態度ですから、ここにいる皆さん三人とも、三日月を優しい男性と思われるかと思います。……ですが会社では女性社員に一切の期待を持たせないよう、徹底して一線を引いていますし、パーティーなどでも表向きの笑顔は見せますが、個人的に誰かに心を開く事は滅多にありません。社長夫妻も、本人の希望で『結婚する気持ちになるまでは、無理に見合い話などを持ち込まない』とお約束していまして、周囲からは〝決して手に入らない高嶺の花〟扱いをされてきました」

 彼がスーパー御曹司で魅力的な人なのは分かっていたけれど、そこまで色んな人に想われ、かつ涼さん自身も誰も欲していなかったと改めて知った。

「……ハードルを上げてしまったようで恐縮ですが、そんな三日月がある日、親友の篠宮さんとその彼女さんとランドに行ってくると言ったので、私は『いい息抜きになればいいな』と思っておりました。……なのですが、連休が終わったら『結婚すると思う』とウキウキして言い始めましたので、どこかに頭でもぶつけたのかと心配しまして……」

 最後の言葉を聞き、私は「ぶふっ」と噴き出した。

 確かに私たちは涼さんに〝温厚で優しくて、人の出来ている御曹司〟という印象しか持っていないけれど、そうじゃない面を七年も知っている上条さんからすれば、青天の霹靂だろう。

「……ですから、ある意味、申し訳ないながら『騙されていないか』と心配しておりました。三日月は酸いも甘いもかみ分けた男ですから、そう簡単に女性に騙されない事は分かっております。……ですが出会って数日であんなにも人が変わったような態度をとるなんて……、…………恋って怖いですね…………」

 上条さんは、秘書モードを忘れてそうな雰囲気でしみじみと言う。

「……な、なんかすいません……」

 恵は申し訳なさそうな顔をし、ペコペコと頭を下げている。

「いえ! 私も余計な事を申し上げて、大変申し訳ございません。こんな事が三日月に知れたなら、大目玉を食らいますね……」

「大丈夫です! 黙ってます。貴重なお話を聞かせてくださって、ありがとうございます」

 私はグッとサムズアップして頷いてみせる。

「ありがとうございます。……そういうわけで、秘書として、兄のような立場として心配していたものですから、今日実際に恵さんとそのお母様にお会いして『大丈夫だ』と確信できて良かった……、と申し上げたかったのです」

 秘書のOKをもらえて、恵はホッとしたように息を吐く。

 そこで、佳苗さんが尋ねた。

「三日月さん、具体的にどんな感じでウキウキしていたんですか?」

 尋ねられた上条さんは、呆れたような表情で笑う。

「……三日月は一部の女性に〝凍土の帝王〟と呼ばれるぐらいのクールさを誇っていたのですが、……あれは〝糖度の帝王〟ですね。スイートですよ。……何もないのに気持ち悪いぐらいニコニコして、休憩時間はイヤフォンもしていないのにリズムを取りだすんですよ。何があっても動じない第一秘書も、信じられないものを見ている顔をしていましたし、私も正直『気持ち悪い』と思っていました」

「あらぁ……」

 佳苗さんはニヤニヤし、私もニヤニヤしている。

 というか、上条さん、結構歯に衣着せないタイプだな。面白い。

 恵はどういう反応をしたらいいか困っていて、クッションを抱えていた。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...