【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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お留守番 編

片づけながら

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「……色々と申し上げてしまいましたが、三日月の周囲にはいなかったピュアなお嬢さんだと分かりまして、非常に安心しております。第一秘書ともども応援し、お守りして参りますので、どうぞこれから宜しくお願いいたします」

 最後に上条さんは丁寧に挨拶をし、恵は慌てて「ど、どうも」と頭を下げる。

 そこまで話したあと、上条さんはチラッと腕時計を見てから表情を引き締める。

「警察の方々には、十八時に来てもらうよう言ってあります。その頃には三日月も戻っていますので、ご安心ください」

 尊さんもその時間までには、このマンションに来ていると言っていた。

 恵も佳苗さんも事件の事を思いだしたのか、無意識に溜め息をついている。

「田村氏とどのような関係に関係にあったのか、事件当日どのような行動をとっていたか、事件に通じるきっかけはどのような事柄があったかなど、お話すればいいかと思います。もしかしたら田村氏の弁護人も、後日話を窺いにくるかもしれませんね。恐ろしい思いをされたかと思いますが、皆味方ですので安心してお話ください」

「はい」

「分かりました」

 私と恵は頷き、どちらからともなく手を握り合う。

「では、荷物の搬入も終わったようですし、私は一旦社に戻ります」

「ありがとうございます」

 私たちは上条さんに挨拶し、玄関まで彼を送る。

 引っ越し業者の人も、手続きを終えて帰っていった。

「さて、色々話を聞きたいところだけど、三日月さんが帰って荷物がこのままだったらアレだから、先に片づけちゃいましょうか」

 佳苗さんが言い、私たちは段ボールに向き合う。

「と、とりあえず段ボールを開ける係は私がやるから」

 先ほどの〝恵の下着〟のくだりを気にしたのか、恵は焦って言う。

「OK、OK」

 その後、私たちは協力して恵の荷物を部屋にしまう事にした。

 すっかり存在を忘れていたけれど、佳苗さんはウォークインクローゼットに収まっているブランド品の数々を見て、「ぎえええええ!」と悲鳴を上げていた。

「けっ、恵! 絶対着なさいよ!? 三日月さんのご厚意を無駄にしたらダメよ!?」

 モデルだからか、佳苗さんは目を見開いてハァハァと興奮している。

「……あんまり着たくないんだけどなぁ……。汚したら嫌だし。私はファストファッションで十分だよ」

 恵はそう言いながら、穿き慣れたデニムをハンガーに吊している。

「でもね、恵。分かっていると思うけど、三日月さんみたいな人の隣にいるには、相応の服を着るって大事よ? メイクをするとかお洒落をする事って、個人の美意識の問題でもあるかもしれないけど、どれだけ自分に手を掛けているか、自分を大切にしているかにも繋がってくるの」

 佳苗さんは片づけながらも、大切な話をする。

「極端な話、女性が二人いるとして、片方はさほどスキンケアにこだわっておらず、近づいたら肌荒れが分かる感じ、髪も枝毛があったり白髪も見えている。……片や定期的に美容室に行って髪を整え、スキンケアもして肌つやが良く、身綺麗にしている人がいたら……、大体の人は後者を好ましく思うわ。……勿論、恵は普通にヘアケアもフェイスケアもしているけど」

「……まぁ、そうだね。悲しいけど、人の第一印象は見た目で割と決まっちゃうって言うし」

「男女問わず身なりがきちんとしている人って、自分を大切にしている人と思えるわ。だから信頼度も増すの。ヨレヨレの服を着た人に『この商品とても効くんですよ』ってセールスされても、胡散臭いでしょう?」

「確かに……」

 母の言葉を聞き、恵は頷く。

「恵はこれから三日月さんのご家族に会ったり、富裕層の友人に会う事もあると思うわ。そういう人たちって、目が肥えているの。お母さんもモデルをやっているから、服の縫製、シルエットの良さとかでいい物かピンとくる。勿論、姿勢の良さとか立ち姿でも、その人がちゃんと鍛えているかも分かる」

 確かに佳苗さんは、週に二回ジムに行ってきっちり鍛えている。

 五十四歳でもはつらつと元気で、四十代半ばぐらいに見えるのは、何かと気を遣っているからだと思う。

 そういう母を持つから、恵もいまだ自主的に朝ランをしているんだろう。

 ちなみに恵のお父さんは地方公務員で役所関係のお仕事についているけど、休日は登山やキャンプをするアウトドア派だ。

「色んな事を気にしすぎると、毎日の生活でもストレスを感じてしまうから、急にあれこれ気を遣いなさいとは言わない。でも、少しずつ意識を変える事も大事よ。他人と一緒に暮らすって、少なからずストレスがかかる事だし、恵だけじゃなくて三日月さんも何かしらの変化を感じるとは思う」

「そうだね。彼は今まで気ままな一人暮らしだったのに、そこに私がお邪魔するんだから、お互い譲歩はしないと」

 そこで、私はちょっと口を挟んだ。
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