【R-18】上司と継弟に求められて~私と彼と彼の爛れた生活~

臣桜

文字の大きさ
9 / 114

新しい生活

しおりを挟む
 新しい家は渋谷区広尾にある、三階建ての大きな家だった。

 一階のほとんどはガレージで、あとは玄関ホールと客室があり、エレベーターもある。

 二階は両親のベッドルーム、私の部屋、弟の部屋、父の書斎に母の部屋があり、三階には広々としたリビングダイニングや、アイランドキッチン、美術品を置く部屋もあった。

 私たちは引っ越す前に食事会を開き、新しい父と弟と挨拶していた。

 父は品のいい男性で、いかにもお金持ちという雰囲気がある。

 でも偉ぶったところはなく、食事会でも沢山話題を振ってよく笑っていたので、慣れるまで時間は掛かるかもしれないけれど、良い関係が築けそうだと思った。

 いっぽうで弟の亮は、少し長めの前髪の下からジッと私を見つめる、なんだかやりにくいタイプだ。

 挨拶してもボソッと『よろしく』と言うだけで、兄弟のいない私はどうやって亮と接していけばいいか分からず悩んだ。

 広尾の家に住み始めた当初は、他人の家で暮らしている感覚がとれず、なかなか眠れなかった。

 さらに戸惑ったのは、父が私を買い物に連れ出しては、着せ替え人形のように服や靴、バッグなどを買い与えた事だ。

 今までなら絶対に手の出ない、百貨店や高級地の路面店の商品を買われ、価値観の差にクラクラしてしまう。

 でも、とても美味しいレストランでの食事や、スイーツは嬉しかった。

(こんなお金持ちと結婚して、捨てられないかな)

 そんな不安を抱くのは当然だったけれど、父は思いの外母にベタ惚れだった。

 大人になってから知った事だけれど、父の周りには彼の妻になりたがるギラギラした女性が多く、そのぶん彼は母の素朴さや優しさに惹かれたらしい。

 そんな感じで今までからは一変した環境になったけれど、転校先の学校でもなんとか勉強に食らいつき、新しい生活に慣れていった。





 転機があったのは、私が二十歳になった時だ。

 私の誕生日は八月三十日で、継父に『大人の仲間入りをしたから』と言われ、誕生日前の週末に、都内の外資系ホテルのレストランでお祝いをしてもらった。

 フレンチレストランで食事を終えたあと、両親は子供たちに『デートしたい』といって、二人でホテルのバーに向かった。

 父はそれも見越して部屋をとり、私たち子供組は部屋に戻って自由時間を過ごす事にした。

 宿泊するのはクイーンサイズのベッドが二台ある二部屋で、男性組、女性組に分かれている。

『フレンチ、美味しかったね。いまだにフォークやナイフの順番とか、分からなくて緊張するけど』

『別に、間違えたら新しいのを持ってきてくれるし、特に気にする事ないだろ』

 私は父が買ってくれたワインレッドのワンピースを着て、亮はスーツ姿だ。

『じゃあ、私こっちだから』

 私は隣り合っている部屋の前で亮に別れを告げ、カードキーを取り出す。

『……ちょっと、いい?』

 その時、亮が廊下の壁に手をつき、斜め上から見下ろしてきた。

『え?』

 いきなり壁ドンされて驚くと、亮は私の手からカードキーを取り上げ、ドアを開けると勝手に中に入っていった。

『あっ、りょ、亮……』

『姉ちゃんのベッドどっち』

『窓側』

『ふーん』

 気のない返事をしつつも、亮は私のベッドに腰掛ける。

『な、何なの?』

 困った私は立ち尽くし、弟を見るしかできない。

『ん』

 と、亮がスーツのポケットから、ラッピングされた小箱を取りだした。

『え?』

『やる。誕生日プレゼント』

『あ、ありがとう……』

 驚いた私は、おずおずと贈り物を受け取る。

 今までもプレゼントされた事はあったけど、亮は口数が少なく、私を慕っている雰囲気はなく、義務的にくれているのだと思っていた。

 困っていたら助けてくれる家族としての優しさはあったけれど、心が通じ合っているとは思えなかったので、私はいまだに彼の〝姉〟になれたと感じていない。

 家族になったからお互い誕生日やクリスマスは祝うけど、『無理させてないかな?』と不安になる事はあった。

『開けていい?』

『どうぞ』

 ピーコックグリーンのボックスを空けると、黄緑色やグリーンの石、透明なのや小さな真珠がついた、マルチカラーの指輪が入っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

処理中です...