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変化2
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スゥスゥと規則正しい寝息が聞こえるようになり、クライヴはゆっくり手を止める。
「……百合、か……」
清純な乙女の象徴とされる百合が、何をしてモニカに悪さをしているのだろう?
百合の花壇は、ウィドリントンの庭園にもある。
彼女の口から今まで「百合が嫌いだ」と聞いたことはないし、普通の女性がそうであるように、あの清らかな花をモニカも好んでいた。
他に思いつくことは、神話に出てくる女性が百合に囲まれて死んだというもの。
だがあれはあくまで神話で、現実にはあり得ない。
百合の花、花粉、茎、根に毒性があるのは、クライヴも知っている。
子供の頃から飼っていた犬が元気だった時、百合や鈴蘭などには近づけないようにと周囲に口を酸っぱくして言われた。
けれどそれも、人が毒として死ぬには大量に摂取しなければならない。
おまけにモニカの周囲で、毒殺された近しい者という話も聞いたことがない。
「確かに香りが強い花ではあるが……」
百合の花というのは、かなり強く香る。
女性たちがつける香水も、バラが多く好まれるが百合の香りも好まれる。時にその強すぎる香りが苦手……という者も、クライヴの周囲にいることはいた。
モニカも王室の調香師が調合した香水を、長らく愛用している。彼女のために作られたその香りは、フワリと柔らかく香るものだ。
仮にモニカが王宮ですれ違うレディで、香りが強すぎる者がいたとする。
そのレディがつけている香水が百合で、しかもそのレディがモニカに嫌がらせなどをしていたら――?
「あり得ない話ではないが……」
――けれど、天真爛漫と言われていたモニカが、そのような嫌がらせに遭うだろうか?
隣国の王子という立場からであったが、クライヴから見てもモニカが誰かと諍いを起こしているという話は聞かない。
彼女と会った時、ケイシーにモニカから聞けない話を必ず聞く。
だが有能な侍女の話でも、モニカという王女は本当にのびのびと育っていたのだ。
邪気というものを持たないモニカは、誰かの悪意に気づけなくても仕方がない。
それを代わりに感じる立場のケイシーが、「思い当たりません」と言うのならそれを信じるしかない――。
「じゃあ、別の意味での『百合』なのか……?」
考えようとして、すぐに思いつくものでもない。
「今日は無理があるから、ウィドリントンの客が帰国してから、図書館に通うか……」
これまで頭に知識を叩き込んできたつもりだが、案外役に立たないものだ。
自身の努力が徒労に終わったことにやや失望して、クライヴは溜息をつく。
が、気持ちを切り替えると晩餐に向けて自分も少し休憩することにした。
「君のことは、必ず俺が守るから」
ブーツを脱いでモニカの隣に寝転び、額に口づけた。
彼の妻は天使のような寝顔を見せたまま、静かに眠っている――。
**
「……百合、か……」
清純な乙女の象徴とされる百合が、何をしてモニカに悪さをしているのだろう?
百合の花壇は、ウィドリントンの庭園にもある。
彼女の口から今まで「百合が嫌いだ」と聞いたことはないし、普通の女性がそうであるように、あの清らかな花をモニカも好んでいた。
他に思いつくことは、神話に出てくる女性が百合に囲まれて死んだというもの。
だがあれはあくまで神話で、現実にはあり得ない。
百合の花、花粉、茎、根に毒性があるのは、クライヴも知っている。
子供の頃から飼っていた犬が元気だった時、百合や鈴蘭などには近づけないようにと周囲に口を酸っぱくして言われた。
けれどそれも、人が毒として死ぬには大量に摂取しなければならない。
おまけにモニカの周囲で、毒殺された近しい者という話も聞いたことがない。
「確かに香りが強い花ではあるが……」
百合の花というのは、かなり強く香る。
女性たちがつける香水も、バラが多く好まれるが百合の香りも好まれる。時にその強すぎる香りが苦手……という者も、クライヴの周囲にいることはいた。
モニカも王室の調香師が調合した香水を、長らく愛用している。彼女のために作られたその香りは、フワリと柔らかく香るものだ。
仮にモニカが王宮ですれ違うレディで、香りが強すぎる者がいたとする。
そのレディがつけている香水が百合で、しかもそのレディがモニカに嫌がらせなどをしていたら――?
「あり得ない話ではないが……」
――けれど、天真爛漫と言われていたモニカが、そのような嫌がらせに遭うだろうか?
隣国の王子という立場からであったが、クライヴから見てもモニカが誰かと諍いを起こしているという話は聞かない。
彼女と会った時、ケイシーにモニカから聞けない話を必ず聞く。
だが有能な侍女の話でも、モニカという王女は本当にのびのびと育っていたのだ。
邪気というものを持たないモニカは、誰かの悪意に気づけなくても仕方がない。
それを代わりに感じる立場のケイシーが、「思い当たりません」と言うのならそれを信じるしかない――。
「じゃあ、別の意味での『百合』なのか……?」
考えようとして、すぐに思いつくものでもない。
「今日は無理があるから、ウィドリントンの客が帰国してから、図書館に通うか……」
これまで頭に知識を叩き込んできたつもりだが、案外役に立たないものだ。
自身の努力が徒労に終わったことにやや失望して、クライヴは溜息をつく。
が、気持ちを切り替えると晩餐に向けて自分も少し休憩することにした。
「君のことは、必ず俺が守るから」
ブーツを脱いでモニカの隣に寝転び、額に口づけた。
彼の妻は天使のような寝顔を見せたまま、静かに眠っている――。
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