【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第二十四部・最後の清算 編

秘書候補の紹介

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 翌朝、御劔邸に姿を現した松井は、香澄の姿を見てにっこり微笑んだ。

「お帰りなさい」

 いつ、何があっても自分を受け入れてくれる彼に、今ほど感謝した事はない。

「ただいま。……です。……もう、何もない、と……言えます」

「ふふ、断定できないんですか」

 松井にからかわれ、香澄は「すみません」と謝る。

 今までも『もう絶対に何もない』と信じていたけれど、斜め上の出来事が次々に起こってしまった。

 けれど今度こそは、元凶となる二人の処分が決まったので、もうあんなに極端な行動を起こす人は現れないと信じている。

 世界は香澄が思っているよりずっと邪悪だったが、テオやソフィアたちのように、困っている人を助けてくれる善い人がいるのも事実だ。

 勿論、香澄が懇意にしている周囲の人たちは、皆それぞれの悩み、闇を抱えながらも、善くあろうと心がけている。

 佑のような成功者は妬まれやすいが、それ以上に、普通の善良な人々に支持されていると信じたい。

 佑は昨日帰国したというのに、いつも通りシュッとしたスーツ姿で朝食をとり、松井が読み上げるスケジュールを聞いている。

(本当は私も、こうやって秘書業に身を入れないとならないのに)

 そう思っている香澄の気持ちを見透かしてか、佑はこう語りかけてきた。

「松井さんを見て焦る気持ちは分かるけれど、香澄は今、元気なように見えて、まだ〝いつもの自分〟には戻れていない。ゆっくり休んで、その間に麻衣さんと東京観光をして、日常に戻れた安心感を十分に理解したあと、式を挙げる事も視野に入れて、何が今の自分に一番大切なのか、ちゃんと考えてみてほしい」

「……はい」

 すると松井も補足した。

「残酷な事を申し上げれば、赤松さんが抜けても誰かが秘書の座につき、社長を支える事ができます。ですが〝御劔社長〟の夫人役は、赤松さんにしかできません。勿論、母としての役割も。……今の時代、子育てをしながら仕事を続ける女性は多いですが、仕事のやり甲斐以外の主な理由は、生活のためです。……社長の妻でいる以上、生活に困る事はないでしょう。今後の事を考えるなら、社長夫人としてグローバルな活動をするために、語学の勉強をするのもいいかもしれませんね」

「参考にさせていただきます」

 麻衣は香澄と松井のやり取りを見守っていた。

 これからChief Everyに勤める身として、社長秘書がどんな人か興味があるのだろう。

「そうだ、松井さん。もしも香澄が秘書から抜けたとして、このマティアスが社長秘書となる事を視野に入れています。彼は前職でもエミリアの秘書をしていたから、大体のノウハウは身についているはずです。専門用語は少し勉強してもらうとして、言語の問題は大体クリアしていますし、日本、Chief Everyのやり方を教えれば即戦力になると思っています。麻衣さんと結婚して、配偶者ビザを取得するまで、まだ時間がかかるだろうし、暮らす家を整えるための時間もあるから、今すぐにとは言いませんが」

 佑がマティアスを紹介したので、彼は食事の手を止めて会釈する。

 松井は微笑んだまま彼を見つめると、「承知いたしました」と頷いた。

(そうか、マティアスさんが秘書になる案もあったんだっけ。私なんて不要……とは言わないけど、今までみたいに危険な事もあるかもしれない、佑さんの秘書には、色々と場慣れしている男性秘書のほうがいいのかもしれない)

 今までは意地になって「私が秘書として頑張ります」と思っていたけれど、色んな事があって、まず生きて佑と幸せになる事を重視し始めた今、以前ほど秘書である事への執着はなくなっている。

(遠すぎる目標の事は、あまり考えすぎないようにしよう。まず、休養しつつ少しずつ考える)

 そう決めたあと、香澄は白米と味噌汁、焼き魚に玉子焼き、納豆も加えた、ザ・和食という朝食をしっかりとった。





 佑が出社したあと、香澄は麻衣、マティアスと共に食後のコーヒーを飲みつつ、お喋りをする。

「お腹がこなれたら、少しブラブラしてみる?」

「うん! 東京案内してよ。年末は観光客向けの所を紹介してもらったけど、香澄が普段行っている界隈とか知りたい」

「俺も同行する」

「いいの? 女子同士の外出って、お喋り多いし、男性には興味のない場所が多いと思うけど」

 麻衣が尋ねると、マティアスはいつものように淡々と答える。
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