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第五部・ブルーメンブラットヴィル 編
いつになったら俺を信じてくれるのかな?
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「今日はどの香りがいいかな」
彼は愛用しているジョン・アルクールの様々なあれこれを、そのまま持って来ていた。
プライベートジェットだから可能な事で、東京での〝いつもの〟がこちらでも体験できのはさすがだ。
香澄も大好きな香りに包まれて嬉しいはずなのに、今ばかりは恨みがましい目で佑を見上げている。
「……他に隠している事はない?」
「ほら、まずは立って。風邪をひく」
佑は香澄の腋に手をやり、子供を抱っこするように立たせる。
そのまま二人でシャワーブースに入り、シャワーを出してから香澄の体を洗い始めた。
「婚約パーティーの事は、隠し事……っていうほどじゃないんだけどな」
彼は大きな掌で香澄の肌を撫で、温かなシャワーで流していく。
「佑さんに隠し子がいるとか私以外に女性がいるとか。そういうことは考えてない。ただ……、これから結婚生活を送るに当たって、ちゃんとご挨拶をしなければならない方々を把握しておきたいの」
「まぁ……、正論ではあるな」
ふむ、と頷き佑は少し沈黙する。
不安になって彼を振り向くと、視線を天井の方にやって何やら考えているようだ。
思わず薄い色の目に見とれかけ――、「いや、そうじゃない」と我に返る。
「もしかして、考えないといけないぐらい複雑なの?」
「いや……。オーマの血筋はいま言った自動車メーカーとして、その血縁となると国内のあらゆる上層部に繋がっていくな……と思って。どこから話したものか考えているんだ。オーパのほうだってドイツ国内で済まない、ちょっと飛べばフランスのファッション業界やイギリスの貴族、アメリカの大企業関連もいる。要点だけまとめて言えと言われても、なかなか……。あと、俺の友達も経営者や政治家、芸能人が多いな」
「ううう……」
頭が痛くなる。
「と、とにかく両家顔合わせをしてから婚約パーティーだよね? で、結婚式は日本、そのあと新婚旅行に行って、帰国して仕事……に戻る……と」
「そんな感じだな」
「……それで、国内の招待予定の方々はどんな人? 私がリスト作ろうとしたら、松井さんが『私が手配致しますから』と言ってやらせてくれなくて……」
「まぁ、それはね。キーボードをタイプする香澄の指がいちいち止まりそうだし」
その言葉を聞いて、香澄はゴクリと口腔に溜まった唾を嚥下する。
「――――」
頭が痛くなってくる。
思わず両手で顔を覆った香澄を見て、佑はいつものように軽やかに笑う。
それからジョン・アルクールのボディソープを数度プッシュして手に取り、香澄を洗い始めた。
「まぁ、ニコニコしていれば済むから大丈夫。頻繁に顔を合わせる人は、松井さんが資料を作ってくれるし、データ化したものをタブレットにでも入れて見ていればいい」
「覚えるのは……まだ得意だからいいとして」
はぁー、と重たい溜め息が出る。
こういう時、接客業をしていて良かったと思う。
店のリピーターに挨拶をすると、友人を連れてより太い客になる。
もらった名刺もすべてファイリングして、その後はネットで会社やSNSも調べて次回の会話のきっかけを資料としてまとめた。
そういうことは苦ではないのだけれど……。
「……私、佑さんの隣にいて大丈夫かな」
自身なさげに俯いた香澄は、ごく〝普通〟の女性が抱える不安がある。
「ん?」
「……佑さんを知れば知るほど、好きになる。でも同時に、そのネームバリューの凄さに自分の存在がとてもちっぽけで軽いものに思えて……。怖い」
〝世界の御劔〟と言われている彼の秘書になるだけでも重圧なのに、その妻となれば世間からどういう目で見られるのだろう?
不安に駆られていると、全身に泡を塗りつけた佑が、デリケートゾーン専用の洗浄料をプッシュして、香澄の秘唇に指を滑らせた。
「ひぅっ!」
突然の刺激だったので、半ば放心していた香澄は悲鳴を上げる。
「じっ、自分で洗うから!」
「いいから、いいから」
「あの……っ」
慌てて彼の腕を押さえるが、尋ねられた言葉に力が緩む。
「香澄は、いつになったら俺を信じてくれるのかな?」
「え……? 信じて、る、けど」
佑は香澄の微かに生えたアンダーヘアや、陰唇の間、それに陰核の包皮の間なども丁寧に洗ってくる。
彼は愛用しているジョン・アルクールの様々なあれこれを、そのまま持って来ていた。
プライベートジェットだから可能な事で、東京での〝いつもの〟がこちらでも体験できのはさすがだ。
香澄も大好きな香りに包まれて嬉しいはずなのに、今ばかりは恨みがましい目で佑を見上げている。
「……他に隠している事はない?」
「ほら、まずは立って。風邪をひく」
佑は香澄の腋に手をやり、子供を抱っこするように立たせる。
そのまま二人でシャワーブースに入り、シャワーを出してから香澄の体を洗い始めた。
「婚約パーティーの事は、隠し事……っていうほどじゃないんだけどな」
彼は大きな掌で香澄の肌を撫で、温かなシャワーで流していく。
「佑さんに隠し子がいるとか私以外に女性がいるとか。そういうことは考えてない。ただ……、これから結婚生活を送るに当たって、ちゃんとご挨拶をしなければならない方々を把握しておきたいの」
「まぁ……、正論ではあるな」
ふむ、と頷き佑は少し沈黙する。
不安になって彼を振り向くと、視線を天井の方にやって何やら考えているようだ。
思わず薄い色の目に見とれかけ――、「いや、そうじゃない」と我に返る。
「もしかして、考えないといけないぐらい複雑なの?」
「いや……。オーマの血筋はいま言った自動車メーカーとして、その血縁となると国内のあらゆる上層部に繋がっていくな……と思って。どこから話したものか考えているんだ。オーパのほうだってドイツ国内で済まない、ちょっと飛べばフランスのファッション業界やイギリスの貴族、アメリカの大企業関連もいる。要点だけまとめて言えと言われても、なかなか……。あと、俺の友達も経営者や政治家、芸能人が多いな」
「ううう……」
頭が痛くなる。
「と、とにかく両家顔合わせをしてから婚約パーティーだよね? で、結婚式は日本、そのあと新婚旅行に行って、帰国して仕事……に戻る……と」
「そんな感じだな」
「……それで、国内の招待予定の方々はどんな人? 私がリスト作ろうとしたら、松井さんが『私が手配致しますから』と言ってやらせてくれなくて……」
「まぁ、それはね。キーボードをタイプする香澄の指がいちいち止まりそうだし」
その言葉を聞いて、香澄はゴクリと口腔に溜まった唾を嚥下する。
「――――」
頭が痛くなってくる。
思わず両手で顔を覆った香澄を見て、佑はいつものように軽やかに笑う。
それからジョン・アルクールのボディソープを数度プッシュして手に取り、香澄を洗い始めた。
「まぁ、ニコニコしていれば済むから大丈夫。頻繁に顔を合わせる人は、松井さんが資料を作ってくれるし、データ化したものをタブレットにでも入れて見ていればいい」
「覚えるのは……まだ得意だからいいとして」
はぁー、と重たい溜め息が出る。
こういう時、接客業をしていて良かったと思う。
店のリピーターに挨拶をすると、友人を連れてより太い客になる。
もらった名刺もすべてファイリングして、その後はネットで会社やSNSも調べて次回の会話のきっかけを資料としてまとめた。
そういうことは苦ではないのだけれど……。
「……私、佑さんの隣にいて大丈夫かな」
自身なさげに俯いた香澄は、ごく〝普通〟の女性が抱える不安がある。
「ん?」
「……佑さんを知れば知るほど、好きになる。でも同時に、そのネームバリューの凄さに自分の存在がとてもちっぽけで軽いものに思えて……。怖い」
〝世界の御劔〟と言われている彼の秘書になるだけでも重圧なのに、その妻となれば世間からどういう目で見られるのだろう?
不安に駆られていると、全身に泡を塗りつけた佑が、デリケートゾーン専用の洗浄料をプッシュして、香澄の秘唇に指を滑らせた。
「ひぅっ!」
突然の刺激だったので、半ば放心していた香澄は悲鳴を上げる。
「じっ、自分で洗うから!」
「いいから、いいから」
「あの……っ」
慌てて彼の腕を押さえるが、尋ねられた言葉に力が緩む。
「香澄は、いつになったら俺を信じてくれるのかな?」
「え……? 信じて、る、けど」
佑は香澄の微かに生えたアンダーヘアや、陰唇の間、それに陰核の包皮の間なども丁寧に洗ってくる。
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