【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十部・ニセコ 編

彼女の両親に迎えられる

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 イギリスでの一件があって以降、松井は海外出張の同行を河野に任せる方針にしたらしい。

 オフィスで一緒に働いて河野の力量を測ったのち、イギリスの件で語学力に行動力、如何に機転を利かせ、ポンコツになった佑を支えられるのか確認した。

 そして十分すぎる能力を持っていると認識したようだ。

 今後松井は、佑の不在時に会社とのパイプ役を担う。
 出張時の同行は、国内をメインにすると言っていた。

 それも次第に河野がメインになっていくと思うと、松井の退職が近付いているのを実感し少し寂しくなる。

「約束の数日前に来てしまって、香澄に怒られると思うか?」

「赤松さんに顔を合わせるのが二十四日当日なら、問題ないと思います」

「……だよな」

 河野に同意され、佑は安堵する。

 しかしそれも、意外な形で破られる事になった。



**



 札幌のホテルにチェックインしたあと、佑は河野に頼んで大角梅坂屋に入っているジョン・アルクールで、いつものコロンを購入してもらった。

 香澄は航空会社の飛行機を使ったはずだし、自宅に置いてあるコロンの瓶はそのままだった。
 まず彼女に会ったら、あの香りを身に纏ってもらい、抱きついて思う存分嗅ぎまわしたい。

〝香澄の匂い〟を嗅ぎたいし、叶恵が同じ香りをさせていた記憶を上書きさせたい意図もある。

(……我ながら変態だな)

 河野にお使いを頼んでいるあいだ、佑は護衛を連れて香澄の実家まで車を走らせた。

 その日は十月二十日の日曜日だ。

 約束の日まであと四日となったが、数日早まるのは見逃してほしいと心の中で香澄に言い訳していた。

 西区にある香澄の実家まで車を走らせ、見覚えのある家を少し離れた場所からジッと見る。
 今日なら日曜日で、家に人がいてもおかしくない。

「あー……、どうしたもんか」

 佑がうなると、呉代が提案する。

「行ってみたらどうですか? 『札幌出張で、たまたま通りがかった』とか、幾らでも言いようがありますよ」

「……確かに、ここまで来て大人しくホテルに引き返すのも芸がないな」

 約一か月ぶりに香澄に会える気持ちが逸り、佑はフライングをしてもう止まれない状態にあった。

「……行ってくる」

 佑は車から降り、小山内と呉代がついてくる。
 久住と佐野はホテルで待機させていた。

 風に吹かれてカサカサと落ち葉が道路を滑ってゆき、北海道の秋が最盛期なのを知らせる。
 街路樹のナナカマドの実やプラタナスの葉も色づき、色とりどりの景色を見せていた。

(香澄もずっと、この紅葉を楽しんでいたんだろうか)

 佑の脳内では、すでに香澄と紅葉デートするプランが浮かんでいる。

 妄想を一度やめ、雪国ならではの玄関フードに入ると、赤松家の表札を見た。
 それから、少し呼吸を整えて玄関チャイムを押した。

(いるかな。早いって言われるだろうか。笑って飛びついてくれないかな。『私も会いたかった』って言ってくれたらいいんだけど)

 こみ上げる恋慕が佑を自然と笑顔にさせる。

 ピンポーンとチャイムが鳴ったあと、佑は緊張してインターフォンのカメラをチラッと見る。
 少ししてスピーカーから『あらっ』と栄子の声がした。

『み、御劔さん!? ちょ、ちょっと待ってください!』

 間もなく玄関のドアがガチャッと開き、栄子が顔を見せた。
 遅れて崇も現れ、呆然とした顔でこちらを見ている。

「まぁーっ、どうして……いや、香澄ですよね!? とりあえず上がってください。冷えますから」

 佑はすっかり動揺した栄子の反応に思わず笑い、好意に甘えた。

「すみません、車があるんですが、家の前に寄せさせてもらってもいいですか?」

「ええ、勿論。何でしたら運転手さんも中へどうぞ」

 栄子はスリッパを出し、「コーヒー淹れますね」と台所に駆け込んでいった。

 佑は東京銘菓が幾つも入った紙袋を二つ置き、さりげなく香澄の気配を探る。
 玄関先で話を聞いた呉代は、伝言のためにすでに戻っていた。

「お久しぶりです。急にすみません。礼を欠いた事を……」

 崇に向かって頭を下げると、彼は訳知り顔で微笑む。
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