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取り戻した平和
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それから数か月経つ頃には、すべてが鎮静化していた。
スローンはシャーロットを誘拐した罪、前元帥グローヴとその妻を殺害した罪、そしてダフネルと協力して国王の命を狙った罪。ベネディクトに毒を与えた罪。
それらに加え毒となる植物を育てた罪や、毒を生成した罪。ありとあらゆるものが露見し、牢獄に入った。
有力貴族であっても、カールソンもスローンに協力した罪を問われた。
なによりスローンの毒を入れる小瓶は、すべてカールソン侯爵領で作られたものだ。
多妻は違法ではないが、平等に愛することができないという状態で妻より不服があれば、罪を被ることにも繋がる。
カールソンの元にいた妻たちは、全員彼の財産が目当てだ。
彼の屋敷に軍人が訪れ雲行きが怪しくなると、女性たちは全員被害者という顔でカールソンの元から離れていった。
隣国アルトドルファーでも、財務大臣ダフネルが失脚した。
若い騎士ベネディクトを恋人を盾に脅し、和平を結ぼうとしている隣国の王を襲わせるなど、言語道断だ。
戦争中も敵国と通じて一人私服を肥やしていたことや、スローンの娘を愛人に持っているのも、間者の疑いを濃くさせた。
彼らの周囲にいて言動を合わせたり、協力をしていた貴族たちも一掃された。
ベネディクトは一転して悲劇のヒーローとなり、彼のために立てられた墓標には花が絶えない。
ゴットフリートとエリーゼ率いるアルトドルファー騎士団の件は、ギルバートがエドガー国王に嘆願してもみ消された。
「被害者である私の妻も同意しています」という彼の言葉や、やはりギルバートが英雄であることが大きい。
権力や英雄の名を笠に着た行為は、下手をしたら反感を買うかもしれない。
だがそこはギルバートも上手いもので、彼が自身を『英雄』として扱うのはシャーロットが関わる場合のみだった。
つまり、今回だけだ。
夫婦そろって国王と密談をしにきた場で、エドガー王はシャーロットに何度も確認をした。
けれどそれにシャーロットも、「両国の平和のためなら構いません」と微笑むのだ。
結果、ギルバートとシャーロットの夫婦が、国王にいたく気に入られたのは言わずもがなである。
「何かあったら、なんでも言いなさい」
一国の王からそこまでの温情をもらい、ギルバートは少し考える。
「……では、私に蜜月をもう一度頂けませんか? 会談を前にしていたので、本来の蜜月の時は十分愛し合えなかったのです」
しれっとそう言うギルバートに、横でシャーロットが瞠目している。
確かに二月宮に呼ばれ、ほぼ毎日出かけていたとはいえ、あれほど愛し合っていたではないか――。
そんな目だ。
「なんだ、そんなことか。いいだろう。先の蜜月は邪魔をして済まなかった。今度は呼び出したりせぬゆえ、ブラッドワース城でゆるりと過ごすといいだろう」
再戦の危機に比べて、なんと慎ましい願いを言うのか。
ますます元帥を気に入った国王は、そう言ってギルバートに再びの蜜月を与えるのだった。
スローンはシャーロットを誘拐した罪、前元帥グローヴとその妻を殺害した罪、そしてダフネルと協力して国王の命を狙った罪。ベネディクトに毒を与えた罪。
それらに加え毒となる植物を育てた罪や、毒を生成した罪。ありとあらゆるものが露見し、牢獄に入った。
有力貴族であっても、カールソンもスローンに協力した罪を問われた。
なによりスローンの毒を入れる小瓶は、すべてカールソン侯爵領で作られたものだ。
多妻は違法ではないが、平等に愛することができないという状態で妻より不服があれば、罪を被ることにも繋がる。
カールソンの元にいた妻たちは、全員彼の財産が目当てだ。
彼の屋敷に軍人が訪れ雲行きが怪しくなると、女性たちは全員被害者という顔でカールソンの元から離れていった。
隣国アルトドルファーでも、財務大臣ダフネルが失脚した。
若い騎士ベネディクトを恋人を盾に脅し、和平を結ぼうとしている隣国の王を襲わせるなど、言語道断だ。
戦争中も敵国と通じて一人私服を肥やしていたことや、スローンの娘を愛人に持っているのも、間者の疑いを濃くさせた。
彼らの周囲にいて言動を合わせたり、協力をしていた貴族たちも一掃された。
ベネディクトは一転して悲劇のヒーローとなり、彼のために立てられた墓標には花が絶えない。
ゴットフリートとエリーゼ率いるアルトドルファー騎士団の件は、ギルバートがエドガー国王に嘆願してもみ消された。
「被害者である私の妻も同意しています」という彼の言葉や、やはりギルバートが英雄であることが大きい。
権力や英雄の名を笠に着た行為は、下手をしたら反感を買うかもしれない。
だがそこはギルバートも上手いもので、彼が自身を『英雄』として扱うのはシャーロットが関わる場合のみだった。
つまり、今回だけだ。
夫婦そろって国王と密談をしにきた場で、エドガー王はシャーロットに何度も確認をした。
けれどそれにシャーロットも、「両国の平和のためなら構いません」と微笑むのだ。
結果、ギルバートとシャーロットの夫婦が、国王にいたく気に入られたのは言わずもがなである。
「何かあったら、なんでも言いなさい」
一国の王からそこまでの温情をもらい、ギルバートは少し考える。
「……では、私に蜜月をもう一度頂けませんか? 会談を前にしていたので、本来の蜜月の時は十分愛し合えなかったのです」
しれっとそう言うギルバートに、横でシャーロットが瞠目している。
確かに二月宮に呼ばれ、ほぼ毎日出かけていたとはいえ、あれほど愛し合っていたではないか――。
そんな目だ。
「なんだ、そんなことか。いいだろう。先の蜜月は邪魔をして済まなかった。今度は呼び出したりせぬゆえ、ブラッドワース城でゆるりと過ごすといいだろう」
再戦の危機に比べて、なんと慎ましい願いを言うのか。
ますます元帥を気に入った国王は、そう言ってギルバートに再びの蜜月を与えるのだった。
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