恋と美容術で男爵家のオテンバ令嬢アカリーヌは天下を取りに行く

乙巴じゅん

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1章 オテンバ令嬢アカリーヌの恋と仕事が動きだした

財布を買う

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 アカリーヌはダニエルへのプレゼントを買いに、小物を売るコーナーへ来た。商店街で異国の商品を扱うのも王子様のお陰なはず。
(王子様は庶民のことを考えてくださるからね。直接お話する機会はないけどさ。王家からお知らせの紙が配られるし、貴族の間でも話題になる)
 アカリーヌは貨幣の流通をすすめている王子に期待もしていた。
 ダニエルへのプレゼントは、やはり小銭入れだと考える。
(シュシュはあんがい高かったよねー。部屋にあるので間に合わせよう)
「財布が大安売りだって。うん、これからお金を使う機会は増えるからね」
 マームの言ってたように財布が無難と考えている。
「ハーマベ王国の珍しいのがございますね。貴重かと」
 マームもあっちこっち見回していた。
「ポシェットか。財布代わりになる」
 紐の着いた小振りな入れ物が気に入った。馬の皮を使っているらしい。
(馬かー。ニーバンもこれが気にいるだろうか。いや。愛馬の皮を思いだすのかな)
 馬の皮をつけるのは、馬も恐がるだろう。なぜかニーバンのことを思いだすのは恋だろう。
「男の好みによりましょう。腰に巻くには」
 マームがいうように、ベルト以外はしない風習が男性にはあった。剣を下げて戦う印象を無くしたいらしい。
(ダニエルに似合いそうにもないしねー)
 馬が気に入っただけだった。
「あらまー。竹の細工ものか。オーカウエ地方の作成じゃん」
 掌に乗る大きさだが、見た目は巻き寿司に使う巻きすだれ。オーカウエ地方はフーモト男爵家から坂を上った丘の上。公爵の領地になるが、隣同士として交流もあった。
 紐をほどき、すだれを巻き返してみる。
「中が小箱になっておりますね。おしゃれだと思います。お金も取りやすいと」
 マームが賛成する。火入れして、落ち着いた黒の部分もあり、男性も好みそうだ。
「近くだし、市場にも置いてもらおう。なになに、二十マニー。そういうものか」
 これは大安売りでもないようだが、財布が二千円なら許容範囲だろう。しかし、百均みたいな市場で売れるのか疑問だ。
「庶民が買えるような珍しいのを市場へ置きたいよね」
「竹製ですと、オーカウエ地から直接に仕入れなされば安くなると思います」
「なるほどね。話してみよう」
「それで、いかがなさいます、美容コーナーでお働きなさるなら、リン波の念力がお嬢様の強みでしょう」
「確かにねー。王女様がおっしゃられたように、イベントでお披露目は価値があると思う」
「希少価値というものでございましょう」
「市場を離れるのも、ちょっとね」
(王都で働くと庶民からますます離れちゃう気がする。でもさー、地元の庶民は、わざわざ買わないよ。リン波の念力を送る方法も教えたし)
 あの湧水の場所は誰でも使えるから竜の涙は無料で使える。商売になるわけもない。
 財布を買って、仕事をするか迷いながら商店街をあとにした。
 貴族が優先されるレールの敷かれた馬車軌道もある。
(荷馬車や庶民も使えればね。移動は楽になると思う。王都は馬車も多いから、よけいに考えるんだよ。貴族の特権って何? 威張るだけじゃん)

 とりあえず今は、フーモトへ戻る。
「あの女をぎゃふんと言わせたいよね」
 馬車に揺られながらつぶやく。さすがに女性を蹴飛ばしはしないが、見下されて黙る性格ではない。
「美容術はお嬢様が上手いでしょう。やはり市場のことが心配でございますね」
 マームはアカリーヌの考えも知っているらしい。
「みんなと働くのは楽しみだからね。最近はよそよそしいけど、気持ちは休まる」
「お仕事を始めれば、故郷を離れる方も多うございます。これも大人になることかもしれません」
 マームは、何かへ向かってアカリーヌがすすむのを歓迎しているようだ。ハルナのツボ美容にも関心を持ったし、リン波の念力で稼げるのか試してもみたい。
「寂しくはなるかな。お金を儲けて、何かを庶民へ還元できたら良いか」
 王都では貨幣の流通が進んでいる。田舎から都会へ出かけていくのは、ひとつの生き方でもある。
(すぐには結論をださなくてもいいかな)
 


 
 

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