ヒーロー再誕 ~ヒーロー諦めた俺がもう一度ヒーローを目指す話~

秋月 銀

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上梨西我編

7話 業火は尽きることなく

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 「わっ、上梨さん武器を創り出す能力だったんですか?」

 俺の隣でパタパタと星叶が模擬戦を指さしながら足を鳴らす。ホコリがたつから止めなさい。

 「いや全然違うと思うよ。確かにそんな能力者もいると思うけど、上梨君のは借り物だし」
 「借り物、ですか?」

 カズミネの言葉に、星叶は首を傾げて?を浮かべる。

 「前に星叶さんと模擬戦する時に教えていなかった事なんだけどね。学園は武器の貸し出しも行ってるんだよ」

 能力者の能力が全て、素手で本領発揮出来る訳ではない。杖を使って能力強化出来る奴もいるし、剣を使って炎を付加させる事の出来る奴もいる。その為学園では大雑把な種類の武器を貸し出している。

 その種類は五種類。刀、剣、杖、槍、斧だ。一時期、銃の使用も検討されたらしいが、遠距離から《完全遮断》を発動させられるとの事で却下された。

 「学園側に要望を出せばもっと細かい設定の武器も貸し出し出来るんだけどね」

 カズミネが人差し指をピンッと立てながら説明する。アレって何の意味があるんだろうな。どうでも良い疑問が頭をよぎるがそのままよぎらせた。

 「細かい武器の設定、ってなんでしょう?」
 「簡単に言ってしまえば、改造だよ。剣を短剣にするとか。斧を両手持ち、片手持ちに変更するとか」

 学園側が貸し出す武器は基本、誰に対してでも同一の型の物が与えられる。なので、自分が使いやすい武器を選んだ筈なのに合わない場合も出てくる。その時に、学園側に改造をお願いするというわけだ。

 「へぇー、でもそれならなんで田中さんは武器を使わないんですか?自分に合う武器が無いとか」

 星叶の質問にため息を吐きつつ、応える。

 「単に俺の実力不足だよ」
 「武器が使用者を選ぶみたいな事が起こったんですか?」

 どこの世界観だそれ。武器に意志なんて有ってたまるか。

 「俺が武器を使わないのは、貸し出される武器が全部合わなかったからだ。好きで素手喧嘩ステゴロやってる訳じゃない」
 「そんな時に、改造の要望を出すんですよね?」

 確認の様に星叶はカズミネに視線を向ける。それを受け取ったカズミネが苦笑した。

 「そうなんだけどね?学園側もいちいち一人一人の要望を聞いていられないって事なのかどうか知らないけど、改造の要望が全員が全員通る事は無いんだ」

 つまり、とカズミネは続けた。

 「武器の改造が出来るのはある程度の地位や実力を持つ人だけなんだ」

 俺が武器の改造を出来ない理由はここにある。生徒会やその他の例外達なら改造出来るのだろうが、俺はそんな地位を持っていない。ましてや実力の有無なんて証明する方法はほぼ一つしかない。

 学年戦での優勝。ただこれに尽きる。

 ただの模擬戦で幾ら強者を破っても、偶然と片付けられるのが関の山なのだ。しかし学年戦ならそうは行かない。組合せやその日の体調にもよって勝敗は左右されるが、学年戦での優勝は間違い無く実力の有を証明出来る。

 まぁそんな事言っても、俺の能力には特に武器を必要としないので、俺はアクセサリーみたいな感覚で使用していたのだが。

 「私も武器使ってみたいです!」
 「星叶さんには要らないと思うけど…………」

 そんな事ないですよー!とカズミネに武器の良さを力説する星叶を尻目に俺は模擬戦を行う二人へと視線を下ろした。

◆◆◆

 先程までとは展開が大きく変わった。

 現在、凄まじい速度で繰り出す刀によって攻め込んでいるのは、上梨西我。その攻撃を危なげなく回避していく、山田李伊奈。

 攻守が反転して、一見上梨が優勢に見えるがそうではない。

 「これならッ……………どうだ!」

 全力で繰り出される横薙。と同時に踏み込む事により前に出ていた上梨の体の分、刀の攻撃範囲が山田の方向へと移動する。

 刀を大きく振るう事により、相手の防護陣に当てる確率を少しでも増やす一撃。これを彼女はまたしても回避する。

 「いつまでもそんなんじゃ負けるどころか、一撃も与えられないわね!」

 彼女は未だに《完全遮断フルブロック》を発動させていない。回避に専念しだした山田に、上梨は一度も触れてすらいなかった。

 (クソッ!予想以上に身体強化されてる!山田アイツも、そして俺もだ!)

 上梨は彼女の移動速度や運動神経にも驚かされたが、それ以上に自分自身の変化に戸惑っていた。まるで、自分が自分ではないような。防護陣に覆われた途端、知らない世界が彼を迎え入れたような、そんな感覚が彼にはあった。

 だが、それは怖いものじゃない。敬遠するものでもない。

 額に浮かぶ汗は動く度に頬を伝う、呼吸も段々と速度を増していく。僅かに、けれど確実に蓄積されていく疲労の中で上梨は、笑っていた。

 それは小さな笑み。戦っている山田にすら分からないような笑み。

 しかし、分かっていた。

 彼だけは、上梨西我だけは、笑っている事を分かっていた。

 (キツイ筈なのに、全然気分が静まらない………寧ろ俄然やる気が出てきた!)

 上梨は一度大きく息を吸って、吐き出すと同時に鋭い突きを繰り出す。今までとは段違いの速度に対応出来なかったのか、山田は回避する間もなく防護陣で今の一撃を受ける。

 ブゥゥンと響く重低音は、《完全遮断》が発動された音だ。

 上梨は突きの反動を利用して、山田との距離を取る。山田はまるで親の敵を見るような視線を上梨に向ける。

 「攻撃してこないんじゃ勝てないんじゃないのか……?」
 「うっさいわね…………それなら今すぐにでも使ってあげるわよ!!」

 山田が叫ぶと、彼女の肩からボゥと小さな火の粉が舞い上がる。それは一度だけに留まらず、小さな火の粉はやがて巨大な炎と変貌し、彼女の心情を代弁するかの様に燃え盛っていた。

 発火能力。

 能力と言われて思い浮かぶモノ、と聞かれたら真っ先に思い付く人も少なくはない。

 能力も非常に単純で火を扱うだけなのだが、それ故に実力の有無を能力で見て取れてしまう。

 しかし、彼女はまるで自分を覆い尽くす様に炎を纏わせ、さらに自分の周囲にも幾つかの火炎球を生成していた。山田の周りに浮かんだ火炎球が一際大きな輝きを放ち、ゴオッと燃え盛る。

 間違い無く強者だと、上梨は直感で理解する。実際に彼女の様に炎を纏うのは簡単ではない。発火能力者はあくまで“火”を扱う能力者であり、普通は“炎”など一瞬だけでも創り出す事は困難なのだ。

 だがそれを彼女はいとも簡単にやってのける。

 「手加減なんてしない。私の最強を、ぶつける」

 それを見た上梨は刀を水平に構え直し、切っ先を山田へと向ける。

 「そう簡単に負ける訳にはいかないんでな。お前の最強、斬らせてもらう…………!」

 静寂が二人を包む。

 上梨の頬に伝った汗が顎へと伝わり、音も無く落下する。

 そして彼等は同時に動く。

 「焼き尽くせ、《業火炎陣ごうかえんじん》!!」
 「《神器顕現じんきけんげん》━━━━ティルヴィングッ!!」

 山田李伊奈から放たれた激しい熱線と、上梨西我が呼び出す神剣が、ぶつかり合った
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