ヒーロー再誕 ~ヒーロー諦めた俺がもう一度ヒーローを目指す話~

秋月 銀

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学年トーナメント戦 本戦編

4話 アホだったー!!

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 「つまりこっからが本当の勝負って訳だな」

 俺は愛川を見据えてそう言い放つ。愛川もこちらを睨みつけたまま、動かない。暫く二人で見つめ合ったまま、行動を停止していた。

 格好良く能力を叫んで発動させたまではいいのだが、実際状況は好転してなどいない。愛川有利だった状況を五分五分にまで引き上げただけだ。前回愛川と闘った時は、同じ様な能力を持っていた俺に対して戸惑いを隠せなかった愛川を取り敢えずタコ殴りにしていたら終わっていた。

 だが、今回はそう上手くはいかないだろう。なにせ、愛川はもう1つの能力を持っているのだから。

 だから俺は動けない。不用意に動いてしまったら、まだ見ぬ能力の餌食になってしまうかもしれない、そう思うのを止められない止まらない。

 せめて新たな能力の情報を少しでも聞き出そうと話を持ちかけるか。

 「なぁ愛川。せっかく生徒会に入って能力もらったんだろ。どういう能力なんだ?」
 「ふっ、普段の学校生活ならまだしも、試合中の対戦相手に教える馬鹿がいると思うの?」
 「お前がその馬鹿だと信じているよ」
 「ぶっ飛ばされたいの!?」

 チィ。そうやすやすとは口を割らないか。参ったな、能力がわからないんじゃ次の行動もとりようがないぞ。今の俺に出来るのは、愛川の次の手に反応していく事くらいだ。

 気合いを入れて愛川を見つめる。愛川も俺を見つめる。暫く二人で見つめ合う。

 愛川が段々赤くなってきた。

 「貴方馬鹿じゃないの!?試合中なのよ!なんでこんなに見つめてくるのよ!」
 「うっせぇ!これが戦略じゃ!バーカバーカ!!」

 次の行動を決めかねているとは素直に言える訳なく、取り敢えずおちょくっておく。すると愛川はむきぃー!と地団駄を踏み出した。やっぱりコイツ挑発にかなり弱いぞ。

 地団駄を踏み終わった愛川はもう一度こちらをキッと睨みつけてくる。

 「もういいわ!決着をつけてあげる!」

 そう口にするが早いか、こちらに向かって駆け出してくる。見る限り、何か新しい能力を使っているとは見えない。ただの突進か。それなら━━━━

 俺も軽く助走をつけて跳び蹴りを放つ。すると見事に愛川の防護陣プロテクトに直撃。ブゥゥゥンと響く重低音で《完全遮断フルブロック》の発動を確認した。

 跳び蹴りによって愛川は軽く吹き飛ばされる。俺も反作用により、少し後退した。これで俺達の距離は再び開かれた。

 愛川が悔しそうに歯噛みしている。まぁ前回も大体こんな感じで敗北してたしな。男女の違いもあり、俺の方が普通にリーチが長い。そのため俺の攻撃の方が先に愛川の防護陣に届くのだ。基本俺は攻撃される事なくフルボッコしてた。

 だが今回はそうはいかないと踏んでいたのだが。何故愛川は新しい能力を使わないのだろうか。

 「新しい能力は使わないのか?多分使わなきゃ負けるぞ」
 「はぁ?貴方、春日原から聞いてないの?」
 「聞いたこともねぇよ。てか、何を聞いてないのかすらわからん」

 愛川はやれやれと言った風に肩を竦めた。その様子がちょっと様になってて腹立つ。まさにアニメとかで見る偉そうな上司だ。腹立つ。

 「じゃあ教えてあげるわよ。良い?能力ってのは同時使用が出来ないのよ」
 「へぇーそうなのか」
 「反応薄いわね……」

 反応が薄いと言われても、仕方ないだろう。だって俺も含めた大半の生徒は一人1つしか能力持っていないんだし。能力2つ持っているのは極少数だ。そんな少数の能力事情を知っても、そうなのかしか出てこねぇわ。

 しっかし不便だな。新しい能力を得たとは言え、同時使用は不可能ときた。つまり愛川は《調和への誇りコスモスプライド》を発動させている時点で、その他の能力は使えないのか。

 その事を理解すると急に脱力した。なんだよ、警戒して損した。新しい能力が使える様になったって言うからどんな物かとヒヤヒヤしていたが、《調和への誇りコスモスプライド》中に使えないんじゃ、結局前回の二の舞いじゃないか。

 「って事は今のお前は2年前と何ら変わりない訳だな」
 「か、かか変わってるわい!身長とか体重とか、その他諸々じゃい!」
 「落ち着け落ち着け。口調が崩れてるぞ。後、俺が言いたかった変化はそういうものじゃない」

 再びワチャワチャと腕を振るい出す愛川。

 俺はそれ以上会話を続ける事なく、愛川へと突っ込んで行った。

 完全に気を抜いていた愛川めがけて拳を振り下ろす。まずは一発。ゴスッと防護陣に直撃させた。今度は逆でもう一発。こちらも綺麗にヒットした。

 3発目を当てようとして腕を振るうと、愛川はそれを避けた。流石に喰らってはくれないか。だが、俺は腕の振りを利用して回転し、回し蹴りを愛川へと御見舞してやる。

 そこまで離せていなかったので、回し蹴りも防護陣に直撃した。多分この調子で勝てるわ。

 愛川も負けじと拳を放ってくるが、腰の入っていないヘロヘロパンチだ。俺の防護陣に届く前に、俺が逆に愛川の防護陣を殴り、二人の距離を離した。

 「むかぁー!!なんで当たんないのよ!」
 「フッ、雑魚が。これが強さと言うものだ」
 「なんなのよ!」

 完全にヤケになったのか、愛川がこっちに突っ込んでくる。丁度良いタイミングで腕を振るって防護陣に当てる。愛川がまた吹き飛んだ。

 ここまでの試合を見ていただければ十分に理解出来たと思うがあえて口にしよう。

 愛川美里は超弱いのだ。

 多分、格闘とか学んだ事もないだろうし、現実で殴り合いの喧嘩すらした事ないだろう。女の子としてはそれが普通かもしれないが、愛川にとっては別にその必要がなかったのだ。

 規格外の能力で、相手が何かをする前に決着をつけられてしまうのだから。俺と闘うまで、完全能力頼りで勝利してきたのだろう。

 だから愛川にはろくに格闘戦が出来ない。そこが、俺と愛川の勝敗を決める大きなポイントになっていた。

 愛川はもはやグルグルパンチになってきている。雑すぎる。勿論、そんなパンチかすりもしないので、避けてから思いっ切り蹴る。

 「くっ……なんで勝てないのよ………!」
 「原因は全てお前にあるな残念ながら」
 「そんなの信じられる訳ないでしょ!」
 「じゃあ使えばいいだろ。生徒会に入って、手に入れたって言うもう1つの能力をさ」
 「………………良いわ。そこまで言うなら見せてあげる。後悔しない事ね!!」

 そういうと愛川は俺から距離を取った。俺はそれを深追いすることなく、立ち尽くした。

 え?まさか乗せられたのか?本当に能力を使う気か?

 突然の愛川の行動に疑問符しか浮かんでこない。多分阿呆ヅラしてるであろう俺を見て、愛川は高らかに笑った。

 「あーはっはっはっは!もう遅いわよ!この能力で貴方をメッタメタにしてあげるんだから!」
 「なっなにーやめろーなにをするー」

 何も言わないのも怪しいので、取り敢えず反応はしておいたが棒読みになってしまっている。まさか愛川はアホなのか?自分でさっき言った事を忘れてるのか?

 完全にドヤ顔になって、愛川はこちらに右の掌を突き出してきた。

 「これぞ生徒会書記の能力!《ワールズ━━━━」

 アホだった━━━━━━━━!!愛川もアホの子だった━━━━!!

 愛川はドヤ顔と能力名を言いかけた口の形そのままで動きが停止していた。格好いいポーズもしているのだが、俺から見ればシュール過ぎて笑えない。

 愛川はさっき自分で言った事を忘れていたのだろうか。能力の同時使用は不可能だと。ならばもう1つの方の能力を使うには《調和への誇りコスモスプライド》の発動を止めるしかないのだが、

 さっきまでの状態は、俺と愛川がそれぞれ能力を使う事により、二人だけが行動出来る特別な世界だったのだ。その世界で愛川が能力の使用を止めたら、アイツ自身も他の全てと同じ様に止まるのは当たり前なんだが。

 確かに俺は先程、愛川に能力を使ってみろと挑発したが、こんなに綺麗に乗ってくるとは想像もしてなかった。チョロすぎる。

 そして最後まで気付かず、逆に勝利を確信した顔なのが何とも言えない。罪悪感まで湧いてくるわ。

 しかしここで俺も《混沌なる誇りカオスプライド》を解いて、むざむざ愛川の能力を喰らうつもりもない。

 俺は動かない愛川に近づいて、その防護陣が破壊されるまでタコ殴りにし続けた。
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