ヒーロー再誕 ~ヒーロー諦めた俺がもう一度ヒーローを目指す話~

秋月 銀

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学年トーナメント戦 本戦編

6話 女子の応援を受ける奴は嫉妬対象

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 シュウヤからの応援を受けて、僕はフィールドへと進んで行った。シュウヤの気持ちは痛い程理解出来ている。だから僕もこの勝負、本気で挑むつもりだ。

 フィールドまで降りるとそこには既に上梨君の姿があった。向こうも僕に気がついたのか片手を上げて近づいてきた。

 「よっ春日原。まさか初戦から当たっちまうなんてな」
 「ホントだね。出来ればA組のメンツとは決勝戦とかで闘いたかったんだけど、そう上手くはいかないみたいだ」
 「それが学年戦ってもんじゃないのか?まぁ、相手がいくら同じクラスのお前でも手加減なんてしないからな」
 「わかってるよ。というより手加減されたら、僕は君の人間性を疑うからね」
 「そりゃ厳しい」

 僕と上梨君はお互い苦笑した。

 「それじゃそろそろ試合開始かな?」
 「ああ。全力の勝負、楽しみにしてるぜ」

 そう言って僕から離れていくその背を無言で見送った。全力、か。悪いけどそれは出来そうにないよ。

 本気は出すつもりだ。でも、僕の持てる全ての力は使う訳にはいかない。僕の“翼”はこんな所で解放するものなんかじゃない。

 その思いは口にする事はなく、僕達は向かい合って試合開始の合図を待つ。数分もかからず、スタジアムにアナウンスが響いた。

 『お待たせしました!それでは、本戦第一回戦二組目の試合を開始します!!』

 ブザーの音と共に視界が淡い水色に染まる。二人の防護陣プロテクトが展開されたのだ。

 上梨君は早速、懐から剣の柄を取り出した。そして一瞬で柄から白銀の刃が姿を現した。

 「はぁぁぁぁぁ!!」

 そして一呼吸置く間もなく、剣を振りかぶって突進してくる。速い。けど、見切れない程じゃない。僕は上段の斬撃をサイドステップで回避して、上梨君との距離を取る。

 だが、上梨君はその距離を直ぐに詰めてきた。そしてそのまま剣を薙いでくる。

 「あっちゃあー……これは無理だね」

 ろくな回避行動も出来ず、直撃。

 回避した直後を狙われた攻撃を喰らってしまい、《完全遮断フルブロック》が発動してしまった。もう一度、僕は上梨君との距離を取る。今度は追いかけて来なかった。

 上梨君は得意気な顔1つせず、油断なくこちらを見つめて来るばかり。こういう相手は、かなりやりづらい。自分自身の力を信じている上に、対戦相手を決して下に見る事がない。この手の相手に油断や隙は滅多に生まれてくれない。

 取り敢えず、上梨君が動く気配がなかったので、僕の生徒会能力である《不可視の神手》(シュウヤ命名)を発動させておく。この能力はとっさに発動出来るものではなく、僕の胸からゆっくりと生えてくる感じなので、発動まである程度の時間を有する。

 ガチガチの接近戦相手だと、発動するまでに時間がかかってしまうのがデメリットだ。この能力のメリットは、透明という強力なものなので多少のデメリットには目を瞑る。

 僕は透明な物体の形状を剣へと変化させた。拳状態よりは、確実に相手の《完全遮断フルブロック》を発動させやすい為である。

 軽く息を吸って吐く。もう一度吸って、僕は全力で移動を開始した。

 「ッ!?」

 一瞬、上梨君の驚愕の表情が見えたが、それも直ぐに見えなくなった。3秒にも満たない時間で僕は上梨君の背面へと移動した。そして《不可視の神手》へと意識を向ける。

 標的は上梨君。彼めがけて、僕は剣を飛ばす。

 「ま、そう来るとも思っていたぜ」

 ガキィン!と金属同士がぶつかり合う音が響く。上梨君は視線の向きを変えないまま、僕の攻撃を防いでみせていた。

 「上梨君って相当な達人だね……」
 「まぁ、な。家が道場なんだ。そこで小さい頃から剣術を教えられてきたんだよ」
 「なるほど…ね!」

 上梨君の背後で鍔迫り合いの様にもなっていたので、僕の剣を引いて今度は側面から斬りつける。だがこれも上梨君は防いでいた。

 おかしいな?僕の能力って見えないのがウリのはずなんだけど。

 「ねぇ上梨君。君には見えてるの?」
 「いいや?
 「だったらどうして……」
 「見えてないだけで、お前の能力は確かに有るものなんだろ?ならその存在くらいは何となくだけど感じる事くらいは出来るさ」
 「………………」

 何も言えない。あまりの規格外さにただ言葉を失うばかりだ。

 少しばかり彼を見くびっていたのかも知れない。こうまでして、僕の攻撃を防がれるとなると、僕の有する攻撃手段は殆ど意味をなさないじゃないか。

 これは……気合いを入れていかないと勝てないね。

 上梨君はくるりと反転して、僕と視線を合わせてくる。その表情には笑みが浮かんでおり、瞳には尽きる事のない闘志が燃え上がっていた。

◆◆◆

 「田中さんは、上梨さんの応援はしないんですか?」

 カズミネが去ってギャラリー席に残った俺と星叶。試合が開始してからもカズミネの応援を続ける俺に対して、星叶が問いかけてきた。

 「上梨の応援を全くしない訳じゃないさ。ただ、俺としてはカズミネに勝ってほしい。だから応援比率も自然と6:4くらいになってしまうんだ」
 「いやいや、田中さんの現在の応援比率、10:0ですからね?上梨さんへの応援の言葉一言も発してませんでしたからね?」

 くっ。ついにアホの子星叶から突っ込まれてしまった。我一生の不覚。だが、俺が上梨の応援をしていないのにもちゃんとした理由があっての事なのだ。星叶にもそう伝える。

 すると星叶は不思議そうに首を傾げた。

 「じゃあその理由って一体何なんですか?」
 「わかった教えてやろう。星叶、アレを見ろ」

 そう言って俺は首を90度右へと動かした。星叶もそれに倣って90度右を見る。

 俺達の視線の先、そこには椅子にも座らず赤髪を振り乱して必死に応援をしている女子生徒の姿があった。

 「上梨ィー!!私が応援してあげてるんだから負けんじゃないわよ!!」
 「ほらな」
 「………………」

 無論、その女子とは山田さんの事である。山田さんはカズミネなど眼中に入っていないかの様に、上梨の応援ばかりしていた。なら山田さんから応援されていない分、俺がカズミネの応援をするべきだろう。女子から応援されている上梨への嫉妬心とかはない。一切ない。シンジテヨ。

 山田さんを見た星叶は何とも言えない表情で、カズミネと上梨の試合へと視線を戻した。

 「じゃあ私はどうやって応援すればいいですかね」
 「何をそんなに悩む必要があるんだ。お前はアホの子なんだから」
 「………………今アホの子って言いました?絶対言いましたよね?」

 ついつい口が滑ってしまった。だがここでテンパったりしたら余計に駄目になってしまう。だから俺は普段通りの表情で、出来るだけ堂々としていた。

 「どっちか片方だけを応援しなきゃ、なんて決まりはないだろ?お前が応援したいのはどっちか、じゃなくてどっちも、なんだろ?」

 その言葉に星叶がハッと息を飲んだ。そして頷いた後、こちらにニコリと笑いかけてくる。その笑顔は、迷いなんて写っちゃいない魅力的なものだった。

 「春日原さん!上梨さん!二人共、頑張って下さぁぁぁぁぁい!!」

 星叶は手をメガホンの様にして叫んだ。そうだな、そっちのほうが星叶らしい。

 その様子に思わず微笑が溢れる俺だった。
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