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学園生活日常編
2話 その力の隠し場所
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愛川の手伝いが終わる頃には、時刻が既に8時に差し掛かろうとしていた。僅かな範囲の花壇とはいえ、作業は楽なものではなかった。隣の愛川は雑草を抜くのに妥協せず、まだ芽が生えたばかりのものも摘んでいくので俺も妥協は出来なかった。花も植え替え終わり、作業の全てが終了すると俺は汗をかいていた。気持ちの悪い汗じゃない。労働終わりの清々しい汗だ。
しかし、作業内容は単純なのに楽な労働ではなかった。ずっとしゃがみ込んでの作業だったので腰やら膝やらが固まって痛い。これを愛川は一人でやろうとしていたのか。
俺の隣で同じように立ち上がり、背伸びをしていた愛川へ話しかける。
「なぁ愛川。この花壇の手入れってお前が毎日してるのか?」
「毎日って訳じゃないけど、まぁ暇がある時くらいね。それに毎朝早くに登校してるけど、特にやる事がないし」
愛川も早く登校してきているのか。同士を見つけたみたいな気持ちになってちょっと嬉しくなったりする。
そこで俺はふと思いついた。
「花壇の手入れはいつやってるんだ?」
「花も生き物よ。今日植え替えたばかりだから、これかは毎日水やりとかしなくちゃいけないのよ」
「じゃあ明日もこのくらいの時間に、愛川はここにいるのか」
「そうなるわね。流石に毎朝とはいかないでしょうけど」
「俺も手伝わせてくれ。この花壇の仕事」
「別にいいけど………どうしたのよ」
「俺も愛川と同じくらいに登校して勉強したりしてたんだが、何だかその勉強に集中出来なくてな。と言っても勉強以外にすることも無くて何かやる事が欲しかったんだ。今日俺がここに来たのもそういう理由だな」
「なんなのよソレ」
愛川がクスッと笑った。その笑顔に、不意に鼓動が速くなる。顔に僅かだが、熱が集まるのが感覚でわかる。前回の学年戦でキツく睨まれていたのもあって、今見せてくれているこの笑顔が、俺の目にはひどく魅力的に映る。
危ねえ危ねえ。元が美少女である愛川にこんな笑顔を向けられたら、思わず好きになる所だっただろうが。でも愛川は俺の事なんぞ、そんな対象に思ってないだろうし、俺もそう思わないようにする。
俺の得意技である、表情一瞬切り替えで普段の顔に戻す。割りとこの技の使用頻度が多すぎる。特に佐藤先生相手だと多用してるな。
「じゃあ明日から貴方も来てくれるって事で良いのよね」
「そうだな。明日もこのくらいの時間に来る」
「わかったわ。もうすぐホームルームも始まるし今日はこのくらいで解散しましょ」
近くの水道で手の泥を洗い流した後、特に示し合わせた訳でもなく2人で並んで校舎へと歩いて戻る。だって俺、帰り道知らないしな。愛川において行かれると、まさかの敷地内で迷子という黒歴史の1ページが作られてしまう。それだけは避けなければ。
変哲もない世間話を交わしつつ歩く。愛川から異様な熱気が漂ってきている。なんでコイツこんなに熱いの?夏風邪?話している感じ、体調が悪いようには見えないが、もしかしたらがあるかもしれないので注意しておいたら。そしたらものすごい勢いで「だ、だだ大丈夫大丈夫!心配する必要ないから!」って拒否られた。そこまで拒否られると割りとヘコむ。私のか弱い心がへし折れてしまいます。
暫く歩いていると、ようやっと見慣れた校舎になってきた。俺の教室までもう少しだ。
「俺はこっちだ」
「私はこっちだから」
俺はA組、愛川はB組なのでそれぞれの教室の前で別れた。と言ってもA組とB組なので隣接しており、距離はそこまで離れていないのだが。軽く手を振って、教室に入ろうとすると1歩もその場から進めていない事に気がついた。あれ?なぜ?扉は開いていて、目の前にはクラスメイト達が楽しく話している風景があるというのに、俺はその輪に入れないとでも言うのか。
透明な壁があるかのように進めていなかったが、原因はもっと近くにあった。こんな事、前にも体験したな。もしやと思い、顔だけ振り返ると案の定そこには愛川がいて、俺の背中あたりの制服を引っ張っているようだった。
斜めしたを向いまま、愛川は俺を引き留めている。ほのかに朱が頬にさしている。やっぱり熱でもあるのだろうか。そんな心配をしていたが、どうやらそうではなかったらしい。
「………ちゃんと明日もきなさいよ」
蚊の鳴くような小さな声だった。だが俺はライトノベルにありふれるラブコメの鈍感主人公ではない為、愛川の言葉はしっかりと耳に入っていた。
「わかってるって。約束破る程、落ちぶれた人間じゃねえよ」
そう言って、愛川に笑いかける。カズミネに借りたポイントを返す約束?勿論破っちゃいない。返済を引き延ばしにしているだけだ。ホントダヨー。
コクリと小さく頷いた後、愛川は自分の教室へと戻っていった。すると身体が自由に動かせるように戻った。
あの万力の如く凄まじい力が、愛川のどこに隠されているのかさっぱりわからない。まぁ気にするだけ無駄なんだろうな。俺も、カズミネが待っているであろう教室に足を踏み入れた。
しかし、作業内容は単純なのに楽な労働ではなかった。ずっとしゃがみ込んでの作業だったので腰やら膝やらが固まって痛い。これを愛川は一人でやろうとしていたのか。
俺の隣で同じように立ち上がり、背伸びをしていた愛川へ話しかける。
「なぁ愛川。この花壇の手入れってお前が毎日してるのか?」
「毎日って訳じゃないけど、まぁ暇がある時くらいね。それに毎朝早くに登校してるけど、特にやる事がないし」
愛川も早く登校してきているのか。同士を見つけたみたいな気持ちになってちょっと嬉しくなったりする。
そこで俺はふと思いついた。
「花壇の手入れはいつやってるんだ?」
「花も生き物よ。今日植え替えたばかりだから、これかは毎日水やりとかしなくちゃいけないのよ」
「じゃあ明日もこのくらいの時間に、愛川はここにいるのか」
「そうなるわね。流石に毎朝とはいかないでしょうけど」
「俺も手伝わせてくれ。この花壇の仕事」
「別にいいけど………どうしたのよ」
「俺も愛川と同じくらいに登校して勉強したりしてたんだが、何だかその勉強に集中出来なくてな。と言っても勉強以外にすることも無くて何かやる事が欲しかったんだ。今日俺がここに来たのもそういう理由だな」
「なんなのよソレ」
愛川がクスッと笑った。その笑顔に、不意に鼓動が速くなる。顔に僅かだが、熱が集まるのが感覚でわかる。前回の学年戦でキツく睨まれていたのもあって、今見せてくれているこの笑顔が、俺の目にはひどく魅力的に映る。
危ねえ危ねえ。元が美少女である愛川にこんな笑顔を向けられたら、思わず好きになる所だっただろうが。でも愛川は俺の事なんぞ、そんな対象に思ってないだろうし、俺もそう思わないようにする。
俺の得意技である、表情一瞬切り替えで普段の顔に戻す。割りとこの技の使用頻度が多すぎる。特に佐藤先生相手だと多用してるな。
「じゃあ明日から貴方も来てくれるって事で良いのよね」
「そうだな。明日もこのくらいの時間に来る」
「わかったわ。もうすぐホームルームも始まるし今日はこのくらいで解散しましょ」
近くの水道で手の泥を洗い流した後、特に示し合わせた訳でもなく2人で並んで校舎へと歩いて戻る。だって俺、帰り道知らないしな。愛川において行かれると、まさかの敷地内で迷子という黒歴史の1ページが作られてしまう。それだけは避けなければ。
変哲もない世間話を交わしつつ歩く。愛川から異様な熱気が漂ってきている。なんでコイツこんなに熱いの?夏風邪?話している感じ、体調が悪いようには見えないが、もしかしたらがあるかもしれないので注意しておいたら。そしたらものすごい勢いで「だ、だだ大丈夫大丈夫!心配する必要ないから!」って拒否られた。そこまで拒否られると割りとヘコむ。私のか弱い心がへし折れてしまいます。
暫く歩いていると、ようやっと見慣れた校舎になってきた。俺の教室までもう少しだ。
「俺はこっちだ」
「私はこっちだから」
俺はA組、愛川はB組なのでそれぞれの教室の前で別れた。と言ってもA組とB組なので隣接しており、距離はそこまで離れていないのだが。軽く手を振って、教室に入ろうとすると1歩もその場から進めていない事に気がついた。あれ?なぜ?扉は開いていて、目の前にはクラスメイト達が楽しく話している風景があるというのに、俺はその輪に入れないとでも言うのか。
透明な壁があるかのように進めていなかったが、原因はもっと近くにあった。こんな事、前にも体験したな。もしやと思い、顔だけ振り返ると案の定そこには愛川がいて、俺の背中あたりの制服を引っ張っているようだった。
斜めしたを向いまま、愛川は俺を引き留めている。ほのかに朱が頬にさしている。やっぱり熱でもあるのだろうか。そんな心配をしていたが、どうやらそうではなかったらしい。
「………ちゃんと明日もきなさいよ」
蚊の鳴くような小さな声だった。だが俺はライトノベルにありふれるラブコメの鈍感主人公ではない為、愛川の言葉はしっかりと耳に入っていた。
「わかってるって。約束破る程、落ちぶれた人間じゃねえよ」
そう言って、愛川に笑いかける。カズミネに借りたポイントを返す約束?勿論破っちゃいない。返済を引き延ばしにしているだけだ。ホントダヨー。
コクリと小さく頷いた後、愛川は自分の教室へと戻っていった。すると身体が自由に動かせるように戻った。
あの万力の如く凄まじい力が、愛川のどこに隠されているのかさっぱりわからない。まぁ気にするだけ無駄なんだろうな。俺も、カズミネが待っているであろう教室に足を踏み入れた。
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