地の果てまでも何処までも

薄荷ニキ

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地の果てまで追ってくる男 2

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「ちょっ、ちょ、ちょ……」

 性急に人の服を剥いでくる男に、俺は必死に待ったをかけた。まあ、それで聞いてくれるような男ではないと百も承知なんだけれど。だからといって、人様のTシャツを駄目にする勢いの強引さはいただけない。

 このシャツ、こう見えても高かったんだぞ、ぺらぺらのクセに。俺にしたら、だけど……

 そう言ったら、男──『善次郎』改め、アゼルはニヤリと犬歯を覗かせて言った。これから幾らでも買ってやるよ、と。

 これだから金持ちは嫌いだ。は、こいつが何をして稼いでいるのか知らないが、俺が連れ込まれたのは所謂『億ション』と言う場所だ。ビル全体の階数は20程しかないが、コイツが住んでいるのはペントハウス。夜景は十分に綺麗だし、広さもたっぷりメゾネットタイプ。設備も最新ときたらもう──まったく、碌なもんじゃねぇ。

「分かった。分かったから、ほら、バンザーイ」

 これまでの長い付き合いの中で、俺はこの男が一度言い出したら絶対に後に引かないことを身に染みて学んでいる。早々に降参して両手を上げると、アゼルは満足そうに口角を上げてキスをしながらのし掛かってきた。優しくシーツの海に押し倒され、乱暴に脱がされたシャツがポイっと虚しくベットの下に舞い落ちる。

「ベル……」

「……ふぅ、はっぁ……」

 大男だけあって舌も肉厚だ。それが縦横無尽に口腔を貪るのだから、俺はすぐに息が上がった。ちゅうと吸い返してやると、すぐに機嫌が良くなるのは昔と変わっていない。

「いい子にしてたか?」

 息も絶えになった俺を見下ろし、上半身を起こしたアゼルがゆっくりと着ていたシャツを脱ぐ。その仕草がいちいち官能的で、俺はふいっと顔を背けた。きっと頬が赤くなっているだろうが、幸いにも部屋の灯りは窓からの夜景だけだ。恐らくバレはしないだろう……いや、絶対にバレないでくれぇぇぇ。

 俺の腰に馬乗りになったまま、まるで見せつけるようにアゼルがその長い両腕を横に広げる。指先に辛うじて引っ掛かっていたシャツが、ゆっくりと床に落とされた。長い髪の毛を後ろで括るということは、がっつりとヤるつもりだ。イヤラしくペロリと唇を舐めながら、器用に髪を纏めるのだから始末に悪い。

 ああ、それにしても。相変わらずいい体だなぁ。立派な男の骨格だ。
 肩から大胸筋にかけての美しい筋肉の流れ。二の腕の盛り上がり。腹もしっかり6つに割れていて、脇から背筋にかけても抜かりなく引き締まっている。ただ硬いだけでなく、弾力があってしなやかで。恐らく攻撃パンチされても、それほど堪えたりはしないだろう。

「ベル? ちゃんと答えろよ。俺が欲しくて、仕方なかったんだろ? ちゃんと行儀良く待っていたか?」

「馬っ鹿じゃねぇの。最後に会ってから、何年過ぎたと思ってんの?」

 俺は照れ隠しにそんな憎まれ口を吐いた。アゼルが再び覆い被さってきて、剥き出しになった俺の耳をべろりと舐める。

「……っ」

「そうだなぁ……」

 やめてくれー。そのまま、耳に息を吹きかけるようにそこで喋るのは!擽ったいだろ!

「お前がこんなに逃げ回らなければ、もっと早く見つけられていたのにな。きっと20年は無駄にしたぜ」

「はあ……んんっ、お前こそ、いい加減、諦めたらいいのに……」

「無理だよ。お前の匂いが俺を呼ぶんだもん」

「ちょっ……」

 くぅうん、人の乳首を指先で押しつぶすな! 引っ掻くのも、摘むのも駄目!いや、ちょっ、舐めるのも反則ーー!

「俺が丹精込めてゼロから仕込んだ体だぜ。勿体無くて、誰が他の奴にくれてやるものかよ」

「はああぁあ、ううぅん」

 それは刺激が強すぎるというか、キスしながら乳首引っ張って、股間の方にも手を伸ばすのは止めていただけますか!!

 俺の最近のお気に入り、防御力皆無の短パンは、あっさりとアゼルの暴虐を受け入れてしまった。短パンの上から大きい手でねっとりと撫でられたと思ったら、裾の脇から長い指が侵入してくる。さわさわと腿の付け根の敏感な鼠径部を羽のタッチで擽られ、思わず腰が跳ねた。
 短パンなんてパンティと一緒だ。ちょっと指を伸ばせば、簡単に淫部に触れる。それをこいつ──

 さっきから際どい所ばっかり、強弱つけて指の腹で弄びやがって! 絶対ワザとだ。ワザと焦らして楽しんでやがる!

 俺はグイッと力任せにアゼルの胸を押しやると、ベッドに寝転んだまま屈伸して、素早く自ら短パンもろともパンティを取り払った。こういう時、アゼルは絶対に邪魔をしない。ただ面白そうに、ニヤニヤと笑って見ているだけだ。

「すっかりビチョビチョじゃねぇか」

「うっせえよ!!」

 こうなったら仕方がない。セックスするぞ。ああ、とことんやってやる!

 俺はアゼルの頬を両手で挟み、ぶちゅっと唇に唇を押し付けた。チュチュと小鳥キスを贈って、そのままアゼルの厚めの下唇を舌先でくすぐるように舐める。舐めては甘噛みし、舐めては甘噛み……次に少しきつめに噛み付くと、円弧を描いていた唇に仕返しされた。

 俺は片足をアゼルの尻部分に乗せて引き寄せるように抱いていたので、ヤツにしたらもはや触り放題だ。

「はは、ちょっと指で可愛がってやっただけで、後から後から溢れてくるじゃねえか」

「ふぅぅううん」

 いいから。もうそういうの。言葉責めなんて要らねぇ。

「お前、すっかり女になっちまったな」

「誰の所為だよっ!?」

 人のヴァギナを触りながらしみじみと言うアゼルに俺はキレた。

「俺は、男に、なりたかったんだ!」

 それをお前が、毎日毎日、懲りもせずに未熟な膣を弄るから、今じゃすっかりこの有様だ。俺の半泣きの様子に、アゼルは呆れたように乱れて落ちてきた前髪をかき上げて首を傾げた。

「そう言ったって……オヤジのところにいた頃だって、お前の『ちんこもどき』、俺の小指ほどの大きさしかなかったじゃん」

「うるせぇ! お前の指基準に考えるんじゃねぇ。お前は、あの頃から図体がデカかったじゃないか。俺、俺のは、この世じゃ平均よりちょっと下ぐらいだ!」

 言っていて情けなくなってきた。そう、自分でも分かっている。自分の息子ちゃんが、どうやら世間でいうところの短小──ぐふん、ぐふん。小柄だったってことは。だが俺は愛していたのだ。その幼き息子を。いつか大きくなることを夢見ていた。なのに──

「まだ一度も、活躍したことなかったのにぃー」

 わーん。俺の可愛い息子ちゃんは、こいつに女の穴を弄られすぎてついに跡形もなく消滅した。

 恨みがましくアゼルを睨みつける俺に、男は苦笑して俺の目尻に溜まった涙を優しく吸った。

「いいじゃねぇか。お前、前で一度も射精しいけたことないのに。俺がこうやって、優しーくヴァギナを可愛がってやったから、ようやくイクこと覚えただろう……?」

「ふあ」

 言葉と共に、再び割れ目の上の部分をそっと撫でられて腰がくねる。そこはぁ、昔、俺の息子ちゃんがいたところ──

「ほら、クリトリス。気持ちいいな」

「駄目駄目駄目、ちょ、と、やめぇーー!」

 目の前がチカチカとスパークする。とても敏感なところを人差し指の爪でやや乱暴気味に引っ掻かれ、親指の腹でやわやわと転がされて押し潰される。アゼルの腰を抱え込んでいた足が痙攣するほど気持ちが良かった。

「はあはあはあ、もう、そこばっかりぃ」

「ほら、もっと可愛がってやる。お前の下のお口が涎垂らしまくって、うまくおねだり出来たら、俺のデカチン挿れてやるからな」

 アゼルの目が妖しいぐらいに爛々と輝いている。左手でクリトリス、右指で膣の中を存分に抉られ、俺は涙でぐちゃぐちゃになった顔で懇願した。

「もう、もう、頭おかしくなっちゃうぅからっ」

「なれよ。ほら、この辺、お前好きだったよな。小刻みに振動させて押してやると、面白いぐらいに腰が跳ねる……」

「ひい! もう、いい、から! 早く挿れろ!」

 いつもこうやって強引に迫られて、自分から尻を差し出してきた。周りからもコイツの『オンナ』だと見られるようになったのは、いつの頃からだっただろう。

 俺は今回も早々にうつ伏せになって、尻だけを高く持ち上げてアゼルの目に全てを晒した。指で自分のヌルつく入口を広げ、絶対的男を誘惑する。

「アゼル、早くぅ」

 ゆっくりと、まるでストリッパーのようにズボンのジッパーを下げるアゼルに焦れて、俺はその隙間から、ボクサーパンツ越しだけど男の股間を優しく足裏で刺激した。

 ぐり。

「?」

 ふみふみ。ごりっ。

 あれ、なんか凄く大きい? え、こんなに質量あったっけ?

「え? ええ?」

 ボクサーパンツを跳ね除けてギンギンに猛り立ちながら転び出てきたご子息は、それはそれはご立派だった。あれ、俺の記憶にある大きさより、さらに成長してる……? 思わず俺の腰が引けるが、そこはアゼルが逃がさない。

 ヤツの先端が俺の入り口に『こんにちは』したかと思うと、そのまま「ぬぷっ」と狭い門をこじ開けて押し入ってきた。

「ひっ……あああぁん」

 お、おおっきいぃ……お腹がいっぱいになる……

 凄まじい充溢感に眩暈がする。前後にゆったりと抜き差ししながら、それは奥へ奥へと入ってきた。

 え、まだあるの? あ、いや、そこは…… 雁かり首で擦っちゃ駄目なところ……

「あっ、んあっ……!」

 キュンキュンと俺の中が喜んでアゼルのものを締め付ける。途端、アゼルはペチリと俺の尻を平手打ちして、「はあああ、やっぱお前、最高だわ!」と感嘆のため息を吐いた。

「えらく美味そうに咥え込むじゃないか。ん?」

「ち、違……う、んんっ」

「何が違うんだよ。俺のちんぽ、おしゃぶりして離さねえぜ。ほら、こんな風に腰を引くと──」

「んん~~」

「行かないでぇって泣いて絡みついてきて、離してくれねぇの」

「んんんぅ~~~」

「でぇ、吸い込まれるように奥へ行くとぉ、喜んで、いらっしゃいって嬉し涙流すの。可愛いねぇ」

「おまっ……」

 俺はどっちにしろ泣くんかい! もうほんと、黙れよ、お前。

 男の発するAV男優並の台詞と、部屋中に響く粘膜の掻き回される卑猥な音に耳まで犯され、俺は乱れに乱れた。

 ああっ、んあ……そんな早く動かれたら壊れちゃう……奥をそんなに、強く、突くなってぇ……

 とっくに腕に力が入らず、尻だけを高く掲げた状態でパンパンと腰を振られ、俺は半分意識が飛びそうになった。背を反らせて呼吸しようにも、体を突き抜ける快感に上手く喉が開かない。くぷりと愛液が結合部分から溢れ出て、痙攣する俺の太腿を濡らした。

 自分もフィニッシュ間近になってキスしたくなったのか、アゼルはそんな震える俺を軽々とひっくり返した。途端、降ってくるキスに応え、俺も大男の首に縋りついて、ヤツの頭を抱きかかえる。無意識にアゼルの長い髪を掻き乱した。

「もう、もう……」

「ベル……っ」

 男がブルっと体を震わせて俺の中に射精した。
 温かいものが腹一杯に広がる感覚に、満ち足りる充足感。やはりこの男とのセックスは麻薬だ。一度味を知ると抜け出せない。

 けど今は。とにかく疲れた。
 俺はあまりの疲労に、そのまま意識を失った。





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