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リリーの恋人

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今私がいるのはリリー様のお邸よ。

そして、1時間ほどグリーと恋の馴れ初めを聞かされているの。

「この髪飾りもグリーがくれたんです!」
「ふふ、好きな男性から贈り物。羨ましいわ。」

何故リリーの所なのか。
『リリーの方がボロを出しやすい。適当に煽てておけば勝手に話し出す。リズは羨ましいという演技をしていろ。』
という事で、ここにいるのだけど…。
これ何時間続くのかしら。仲良くもない人の恋の話ほどくだらない話はないわ。

「グリーは『どんな事をしても捕まらない』と言っていたんだろう?俺でも出来ない、グリーは凄い男だな。」
「はいっ!」
「ふふ、私でも出来ませんわ。1度捕まりそうになったもの。勘違いとわかって何とかなりましたけど、『グリーのお友達だ』といえば良かったわ。」
「エリザベス様でも何ともならないのですか?やっぱりグリーのお父様は凄いのね!」
「お父様?」
「ええ、グリーのお父様は警察のとお友達なの。」

セドリックと私の視線があった。

「偉い人…とは?」
「そこまでは教えてくれませんでした。」

グリーはリリー様には話しているのね。多分この子を甘く見てるわね。頼めば何でもしてくれる…とか。
けど、甘いんじゃないかしら。この手の恋愛脳の女の口は塞げないのよ。たちが悪いの。

偉い人ね…。
警察上層部と繋がりはあると解ったけど、いまいち掴めないわね。

「そうだ!エリザベス様、フリナっていうお花を知ってますか?」

フリナ…何故リリー様の口から。

「ええ、知っているわ。」
「お花屋さんにもおいてないし、図鑑を見ても載ってなくて。可愛い花ですか?」

毒草オタクである私が持ってる図鑑の1冊にしかフリナは載っていないのに、街の本屋に置いている図鑑に載っているわけがないわ。

「…興味深いわね。その話、詳しく聞かせてくれるかしら。」
「エリザベス様が誘拐されそうになった日のパーティーで『見つかった』『フリナを研究所に持っていかれた』『まだ種はある』とか言ってた人がいたんです。種って事はお花なのかと思ったんです。」
「誰が言っていたの?売ってくれたりしないかしら。」
「見た事のない人だったわ。『セドリック様は来てない』と言っていたので、お知り合いかもしれません。」
「…そう。」

リリー様の邸でとてつもない情報が手に入ったわ。種は回収すればなんとかなるけど、咲いてるものはどうにも出来ないもの。誰かを殺したいのかもしれない。

チャーリーに探ってもらおう。

「リリー様、今日は楽しかったわ。今度は私の家にも招待しますね。」

そう言って、私達は家に帰る。

。長官であれば伯爵を問いただせるだろうけど…。」

私が何故これ程まで必死なのか、お父様に何があったのか、セドリックは詳しくは聞いてこない。

「…フリナとは、あの裏庭にあった毒花の事か?」
「そう。あれは無敵の殺人花よ。そして、狙われてるのは多分貴方だわ。」




家についてから、すぐにラッドさんが城に遣いを送った。私が馬車で『狙われているのは多分セドリックだ』と言ったから。


はぁ…ややこしい事が増えただけで、結局時間がたつばかり。後3日か…。

「リズ…?どうした?」
「別に何も、何故ですか?」
「顔色が良くないから。」

…確かにしんどいわ。けど、これは精神的な物。胃が痛い、吐きそうだわ。雑草メンタルでも踏み潰され過ぎるとへしゃげるのね。

「そうね…、少し疲れたから部屋へ行くわ。ラッドさん、フリナの載った図鑑を渡すからついてきて。」

返事を待たずに私は部屋を出た。

「ラッドさん、明日は長官が何処にいるかわかるかしら?」
「…明日は署にいると聞いています。」
「では、私は彼に話したい事があるから、セドリック様は付いて来ないよう手を打ってください。」
「畏まりました。」

明日はついてこられると困るの…。

「では、これを。研究所にだって置いていないくらい貴重な図鑑だから、ぜっったい汚さないでねっ!では、おやすみなさい。」



次の日、私は朝食もとらずに家を出た。

「ミリオン様、おはようございます。今日は随分早いですね。」
「ええ、長官に呼ばれているの。」

嘘だけど…。

「そうですか。今朝はかなり機嫌が悪そうだったので気をつけてくださいね。」

本当に怖いのか、ひっそり私に注意をしてくれた。

「ふふ、ありがとう。」

違和感なく署内を歩ける。この場所で働く狙いはそれもある。客扱いなら、勝手に長官に会いに行くなんて不自然で出来ないもの。

コンコン
「誰だ。」
「エリザベス・ミリオンです。お話したい事があります。」
「……はいれ。」
「失礼致します。」
「……」

葉巻を加えて新聞を読んで、視線を会わせてくれない。確かにご機嫌はよくないだろうけど、部屋に入れてくれたという事は話は聞くつもりがあると受けとるわ。

「犯人から、もう聞き出せましたか?」
「何も話すつもりはない。」
「私にはあります。長官、貴方を信じてお話したい事があります。必ず何らかの役に立ちます。」
「何だ?」
「私の出自の事です。」
「出自…?養女だと聞いている。そんな事は特に問題はないだろう。」

もう彼を信じるしかない。この人の命令であれば、事件を担当する人を直接決めてもらえる。内々に事を運べるし犯人を捕まえられる。

お父様の側に寄ってくるのが誰か…多分来るのは下っ端ばかりじゃない。それを捕まえれば誘拐に繋がるかもしれないし、そうでなくてもお父様が気にやむ事はなくなる。

何をしても夫妻を助ける。私に残された道がこれしかないなら、信じるしかない。
陛下には伝わるかもしれない。お父様は嘘をついた事になるわ。私の事をコチ出身だと申請していないんだもの。その話がそこから何か大きな事に発展する可能性は十分にあるのよ。だから避けてた。でも、賭けてみるしかないわ。



「…私は、……私は。」

気分が悪い、ここまで来て迷うなんて…。
言わないと…これが最善よ。これ以上なんてない。
…クラクラする。
「エリザベス?どうしたんだ?」
「いえ、ハァ…ハァ…ハァハァ!?」

何…?苦しい……っ!

私の様子をみて、長官が勢いよく駆け寄ってきて、背をさすってくれた。

「エリザベス、大丈夫だ…、息を10秒ほどはきなさい。」
「フゥーー」
「ゆっくり、吸うのは少し減らしなさい。大丈夫だ…」

暫く苦しかったけれど、何とか落ち着いてきた。

「…ハァ…ハァ…すみません」

「もう大丈夫。過呼吸だ。これから起こった時は息をはくのを意識して呼吸してみなさい。」

「…はい。こんな事になった事は無いんですが…。迷惑をおかけしました。」

「恐らく酷いストレスや不安のせいだ。いつも強気で、『自分が何とかする』…と、気を張りすぎてる。この短期間に色々ありすぎて自分が思っている以上に弱ってるんだ。何を言いに来たのかは知らんが、拒否してるんだ。ここにも来たくはなかったが、セドリック様の命が狙われるとなれば、捜査が手薄になる。そう思って不本意ながら来たんだろう。」

その通りよ。

「…助けてくれませんか。お父様が…脅されているんです。もしかしたら、誘拐にも繋がるかもしれません。」
「何故狙われる?侯爵は恨みを買うような事はしていないのに。」
「…私が人を殺したからかもしれない。」
「侯爵に事情を聞いても?」
「詳しく内容は聞かないで頂けるのであれば…。お父様はコチに呼ばれてるんです。ここから侯爵邸まで2日かかります。本当はここでスパイを見つけて、誰よりも先に情報を聞き出したかったのですが。」


『何故侯爵がそんな輩に狙われているのか?』…と聞かれれば、『わからない』という答えは出来ない。わからないのであればコチに呼び出されてもいく必要がないもの。

「わかった。今はここで休みなさい。お昼から話を聞く。」
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