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卑怯者と婚約者3
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「クックさん、貴方は無理して付き合う事はないのよ。」
「嫌なら付いてきてねぇさ。サナス二等兵。」
「…死ぬかもしれないわよ。」
「俺の仕事は死と隣り合わせだ。それに、あんたの言う通りだと思ったからだ。ここが勝負どころってやつだ。」
「そう、それが今なの。」
「…もしかしてお前が『ニナ・スミス』か?」
「…ええ」
「なるほど、ハハッ、いいだろう。とことん付き合ってやる。俺の仲間が王子を追ってるだろうしな。」
…何故知っているの?そして何故笑われたの…。聞きたかったけれど兵の数が多くなってきてる。話すのも気を付けないと。
前から来た兵士が私達とすれ違う時にボソッと呟いた。
『ハリソン公爵の城の地下』…と。
どちらも立ち止まらないから、本当にすれちがっただけ。まわりは全く気がついてないわ。
「同業者、俺1人って訳じゃないさ。けど、事態は悪くなった。」
「なぜ?邸じゃなく城になっただけだわ。」
「ん~、まず距離が遠退いた。そして城の地下ってのは、拷問部屋だったり用具が置いてある場合がある。昔使っていた…とかな。」
「っ!?」
「今は城なんて不便で住んでないし、持っていても放置してる者が多い。公爵もその1人だ。だからこそ、いらない物は詰め込んである。拷問具なんてそれこそ必要ない。まぁ、持ってないと思うけど。」
「…ここからそこまでの距離は?」
「馬で15分ほどだが、俺達は夜目がきかないからな。そこまで速度はあげられない。30分くらいかかる。それに…」
クックさんが私を見た。
「私の馬術じゃ無理だとでも?あの軍馬2頭、あれで行きましょう。今日は月が明るいし、20分で着いてみせるわ。」
「その自信は何処から…」
「私の中よ。」
「………」
「クックさん、並走するわ。方向は手で示して。」
「了解、行くぞ。」
私達は出来る限り速度を上げて馬を走らせた。
この馬…普通より夜道に馴れているし、ここはでこぼこ道でもない。20分で行けるわ。
城がみえる。もう少しで着けるわね。
「クックさん、城に堀や城壁はあるの?」
「ないない、建物こそ城だが、王城や砦みたいな物とは全く違う。ただ庭があるだけ。門も何もない。突っ切るか?」
「そうします。けれど、ここで馬から1度降りましょう。話があります。」
「何か手があるのか?」
「ええ。」
私はクックさんに方法を話して、また城へむかった。
エドワードの様子を見に行くなんて、全て私の我が儘よ。軽率な行動。
『自分で動かない人を、誰も助けてはくれない』。それはそう。けれど、人を助けられる時と、国を助けてくれる時は同じにはならない。
誰かは死ぬ。
『今』じゃないと駄目なのよ。
けど、アルデーテの国民の皆様。残念な事に、私は自己犠牲なんて精神は持ち合わせてません!
『エドワードが生きてたら、私は死んでもいい…』だなんて全く思ってません!だって死にたくないもの。出来るとこまでやって、危なければ撤収よ!さっきはクリフに偉そうに言ったけど、所詮私はただの18…19才の異国の女よ。
馬で城まで駆けて行く。案の定、見張りがいる。思っていたよりは多くない。
扉に2人、後は城の角に1人ずつくらいだわ。
私達は馬を降りた。
「少し力を借りるぞ。」
クックさんが2匹の馬のおしりをおもいっきりひっぱたいた。馬は驚いて城の方へ駆けて行く。
「うわぁ!暴れ馬だ!」
「こっちもだっ!」
見張りが定位置にいなくなったのを見て、私達は城に飛び込んだ。
こんなに上手くいくなんて…罠かもしれないわ。私は最近疑り深いのよ。
城中は明るいとはいえない。真っ暗闇ではないからよかったけどね。
…こんなに大きな場所、想定外よ。
持ってきたマッチに火をつけても、遠いところまでは見えないわ。
けれど地下だと言っていたし、何処かに階段があるよね。
「嫌なら付いてきてねぇさ。サナス二等兵。」
「…死ぬかもしれないわよ。」
「俺の仕事は死と隣り合わせだ。それに、あんたの言う通りだと思ったからだ。ここが勝負どころってやつだ。」
「そう、それが今なの。」
「…もしかしてお前が『ニナ・スミス』か?」
「…ええ」
「なるほど、ハハッ、いいだろう。とことん付き合ってやる。俺の仲間が王子を追ってるだろうしな。」
…何故知っているの?そして何故笑われたの…。聞きたかったけれど兵の数が多くなってきてる。話すのも気を付けないと。
前から来た兵士が私達とすれ違う時にボソッと呟いた。
『ハリソン公爵の城の地下』…と。
どちらも立ち止まらないから、本当にすれちがっただけ。まわりは全く気がついてないわ。
「同業者、俺1人って訳じゃないさ。けど、事態は悪くなった。」
「なぜ?邸じゃなく城になっただけだわ。」
「ん~、まず距離が遠退いた。そして城の地下ってのは、拷問部屋だったり用具が置いてある場合がある。昔使っていた…とかな。」
「っ!?」
「今は城なんて不便で住んでないし、持っていても放置してる者が多い。公爵もその1人だ。だからこそ、いらない物は詰め込んである。拷問具なんてそれこそ必要ない。まぁ、持ってないと思うけど。」
「…ここからそこまでの距離は?」
「馬で15分ほどだが、俺達は夜目がきかないからな。そこまで速度はあげられない。30分くらいかかる。それに…」
クックさんが私を見た。
「私の馬術じゃ無理だとでも?あの軍馬2頭、あれで行きましょう。今日は月が明るいし、20分で着いてみせるわ。」
「その自信は何処から…」
「私の中よ。」
「………」
「クックさん、並走するわ。方向は手で示して。」
「了解、行くぞ。」
私達は出来る限り速度を上げて馬を走らせた。
この馬…普通より夜道に馴れているし、ここはでこぼこ道でもない。20分で行けるわ。
城がみえる。もう少しで着けるわね。
「クックさん、城に堀や城壁はあるの?」
「ないない、建物こそ城だが、王城や砦みたいな物とは全く違う。ただ庭があるだけ。門も何もない。突っ切るか?」
「そうします。けれど、ここで馬から1度降りましょう。話があります。」
「何か手があるのか?」
「ええ。」
私はクックさんに方法を話して、また城へむかった。
エドワードの様子を見に行くなんて、全て私の我が儘よ。軽率な行動。
『自分で動かない人を、誰も助けてはくれない』。それはそう。けれど、人を助けられる時と、国を助けてくれる時は同じにはならない。
誰かは死ぬ。
『今』じゃないと駄目なのよ。
けど、アルデーテの国民の皆様。残念な事に、私は自己犠牲なんて精神は持ち合わせてません!
『エドワードが生きてたら、私は死んでもいい…』だなんて全く思ってません!だって死にたくないもの。出来るとこまでやって、危なければ撤収よ!さっきはクリフに偉そうに言ったけど、所詮私はただの18…19才の異国の女よ。
馬で城まで駆けて行く。案の定、見張りがいる。思っていたよりは多くない。
扉に2人、後は城の角に1人ずつくらいだわ。
私達は馬を降りた。
「少し力を借りるぞ。」
クックさんが2匹の馬のおしりをおもいっきりひっぱたいた。馬は驚いて城の方へ駆けて行く。
「うわぁ!暴れ馬だ!」
「こっちもだっ!」
見張りが定位置にいなくなったのを見て、私達は城に飛び込んだ。
こんなに上手くいくなんて…罠かもしれないわ。私は最近疑り深いのよ。
城中は明るいとはいえない。真っ暗闇ではないからよかったけどね。
…こんなに大きな場所、想定外よ。
持ってきたマッチに火をつけても、遠いところまでは見えないわ。
けれど地下だと言っていたし、何処かに階段があるよね。
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