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7 発端③〈ジョルジュside〉
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その時はレティーの行く末に心配がなくなって良かったと思った私だったが、同時に愛するレティーをニコラスが抱くのかと思うと、嫉妬する気持ちも湧いてきた。
しばらくは、そのことを考える度に気分が悪くなっていたように思う。
そんなある日、夢でレティーとニコラスが交わっているのを見てから、別の感情に悩まされるようになる。
私はおかしくなったのか?
なぜかニコラスに抱かれるレティーの姿に、異常なまでの興奮を味わったのだ。
事故のあと、全く動かなくなった下半身。
その、常時痺れて感覚のなかったアノ一部分が、熱を持ったように熱くなったのだ。
そんな日は、看護してくれるレティーにイタズラしてしまったり、時には堂々と胸を愛撫してしまったり、レティーを昼間から困らせたこともある。
そして認めざるを得なくなった。
私はレティーがニコラスに寝盗られると想像しただけで興奮してしまう、特殊性癖の持ち主だったのだということを……。
* * * * *
「兄上、お呼びですか?」
「あぁ、座ってくれ」
とうとう誤魔化せなくなった私は、跡取りが必要だとか、生きている内にこの家の行く末を見定めたいとか、最もらしい事を並べ立ててレティーを懐柔し、準備を整えてからニコラスを呼び出した。
「色々考えたんだけどね……。ニコラスがレティーを娶るのは、気が変わったりしてないか?」
「……はい」
「そうか」
「ですが、それはもっとあとのことで、今ではありませんよ?」
誤解されていると感じたのか、ニコラスが慌てて弁明してきたことで、私の緊張が解れた。
「ニコラスが私を裏切るような男ではないと、分かっているから大丈夫だよ」
「良かった……」
「そうじゃなくて。私はお前に頼みたいことがあるんだ」
「良いですよ? 何でも言ってください」
「アハハ。即答だね。ちゃんと内容を聞かなくてはダメだろう」
「兄上の言うことなら、私に否やはありませんから」
まったくニコラスの『兄上至上主義』には驚かされる。
でもそれを聞いて、私の心は決まってしまった。
「ニコラス。お前がレティーを孕ませてくれないか?」
「は?」
ニコラスは怪訝な顔で瞬きを繰り返した。
「それは……。将来的な話……ですよね?」
「いや。今日明日の話だ」
「え? 兄上!? 何を言って……」
「レティーにはもう相談してある。公爵家の跡取りはレティーに産んで欲しいと……」
「それはこの間の話で理解しました。私も、いずれはそうするつもりでいます。レティシアのためにもそれが良いということも……分かっています」
「うん。ニコラスが私とレティーのためと同時に、お前の幸せのためにも、それが良いと判明して良かった。でもね、今言っているのは、別のことだ」
「別……ですか?」
「あぁ。私はね、まだ生きているうちに、レティーが孕んでいるのを見て、できれば子が生まれるまでは生きていたい」
「兄上……それはどういう?」
「だから言ったろう? ニコラスがレティーを孕ませるんだよ」
「兄上。……本気なのですか?」
「もちろんだ。それにレティーは承諾してくれたよ」
「それをレティシアに話したと?」
「最初は驚いて、冗談かと聞かれたが……。全部話たらちゃんと理解してくれた」
衝撃的な話で頭を抱えていたニコラスだが、自分なりに私の言ったことを受け入れようとしている。
そして躊躇いがちにこちらを見て、私に質問してきた。
「兄上。それはレティシアが私と……その……そういうことをしても良いと……そうお考えになったのですか?」
「そうだよ。ほかに子を作る方法などないだろう?」
「それはそうですが……」
「レティーは私が望むのなら、ニコラスに身を任せても良いと言ってくれたよ」
「そんな……信じられない……」
「嫌かい?」
「いえ、そうでは……。ですが、レティシアは兄上の妻で……彼女は兄上を愛しているのに……それでも、私とだなんて……耐えられるのでしょうか?」
「それは大丈夫だよ。最初は私が死んだあと、何としてでもニコラスの子を孕んでくれるように頼んでいたんだ」
「そんな……」
「レティーの立場を確立させるために決まっている。もっとも、それは頷いてもらえなかった。だから、私の子としてニコラスの子を産んで欲しいと頼んだんだ」
「兄上、それはどちらでも同じことでは? どこが違うのか私には分かりません」
困惑するニコラスは困ったように眉尻を下げている。
それは子どものころと同じ表情で私の心は和んだ。
「私がいなくなったあとニコラスに、レティーが自分自身のためにそんなことを頼めないというのは、容易に想像できるだろう? むしろそのほうがレティーらしい言い分だ」
「まぁ、レティシアらしいと言えばそうですが……」
「だから、私が生きている今だからこそ、私の望みを叶えて悩みを無くせば、寿命も少し伸びると思わせたのさ」
「……それをレティシアは、信じたのですか?」
「そうらしいね」
「レティシアが、兄上の言葉を疑ったりしないのは、ご本人が一番よくご存知でしょうに……」
ニコラスは「かわいそうに」と付け加え、手のひらで目を覆った。
「もちろん、私を忘れろという意味ではないと言ってある。それで……お前は本当に、それでも良いのか?」
「はい。むしろレティシアが私を受け入れている時も、兄上の名を呼んで欲しい」
ニコラスが真剣にそういうので、私は苦笑してしまった。
「本当に……レティシアと私が。そのぉ……シテも良いのですか? 兄上がお辛いのでは?」
「いや。ニコラス、実はお前の話を聞いたあと、私は気がついてしまった。どうやら私も特殊な性癖があったようだ」
「兄上が? 一体どういう……」
私が詳しく自分の気持ちを伝え、だからニコラスにレティーを寝盗って欲しいと打ち明けると、彼はとても驚いたようだった。
しかしすぐに嬉しそうに笑うと「やはり私たちは兄弟ですね」と言った。
正直喜んで良いのかは微妙だったが、今回に限ってはお互いの性癖の相性は抜群だろう。
私たちはこの場ですぐ、気持ちが変わらない内に実行するための計画を立てたのだった。
しばらくは、そのことを考える度に気分が悪くなっていたように思う。
そんなある日、夢でレティーとニコラスが交わっているのを見てから、別の感情に悩まされるようになる。
私はおかしくなったのか?
なぜかニコラスに抱かれるレティーの姿に、異常なまでの興奮を味わったのだ。
事故のあと、全く動かなくなった下半身。
その、常時痺れて感覚のなかったアノ一部分が、熱を持ったように熱くなったのだ。
そんな日は、看護してくれるレティーにイタズラしてしまったり、時には堂々と胸を愛撫してしまったり、レティーを昼間から困らせたこともある。
そして認めざるを得なくなった。
私はレティーがニコラスに寝盗られると想像しただけで興奮してしまう、特殊性癖の持ち主だったのだということを……。
* * * * *
「兄上、お呼びですか?」
「あぁ、座ってくれ」
とうとう誤魔化せなくなった私は、跡取りが必要だとか、生きている内にこの家の行く末を見定めたいとか、最もらしい事を並べ立ててレティーを懐柔し、準備を整えてからニコラスを呼び出した。
「色々考えたんだけどね……。ニコラスがレティーを娶るのは、気が変わったりしてないか?」
「……はい」
「そうか」
「ですが、それはもっとあとのことで、今ではありませんよ?」
誤解されていると感じたのか、ニコラスが慌てて弁明してきたことで、私の緊張が解れた。
「ニコラスが私を裏切るような男ではないと、分かっているから大丈夫だよ」
「良かった……」
「そうじゃなくて。私はお前に頼みたいことがあるんだ」
「良いですよ? 何でも言ってください」
「アハハ。即答だね。ちゃんと内容を聞かなくてはダメだろう」
「兄上の言うことなら、私に否やはありませんから」
まったくニコラスの『兄上至上主義』には驚かされる。
でもそれを聞いて、私の心は決まってしまった。
「ニコラス。お前がレティーを孕ませてくれないか?」
「は?」
ニコラスは怪訝な顔で瞬きを繰り返した。
「それは……。将来的な話……ですよね?」
「いや。今日明日の話だ」
「え? 兄上!? 何を言って……」
「レティーにはもう相談してある。公爵家の跡取りはレティーに産んで欲しいと……」
「それはこの間の話で理解しました。私も、いずれはそうするつもりでいます。レティシアのためにもそれが良いということも……分かっています」
「うん。ニコラスが私とレティーのためと同時に、お前の幸せのためにも、それが良いと判明して良かった。でもね、今言っているのは、別のことだ」
「別……ですか?」
「あぁ。私はね、まだ生きているうちに、レティーが孕んでいるのを見て、できれば子が生まれるまでは生きていたい」
「兄上……それはどういう?」
「だから言ったろう? ニコラスがレティーを孕ませるんだよ」
「兄上。……本気なのですか?」
「もちろんだ。それにレティーは承諾してくれたよ」
「それをレティシアに話したと?」
「最初は驚いて、冗談かと聞かれたが……。全部話たらちゃんと理解してくれた」
衝撃的な話で頭を抱えていたニコラスだが、自分なりに私の言ったことを受け入れようとしている。
そして躊躇いがちにこちらを見て、私に質問してきた。
「兄上。それはレティシアが私と……その……そういうことをしても良いと……そうお考えになったのですか?」
「そうだよ。ほかに子を作る方法などないだろう?」
「それはそうですが……」
「レティーは私が望むのなら、ニコラスに身を任せても良いと言ってくれたよ」
「そんな……信じられない……」
「嫌かい?」
「いえ、そうでは……。ですが、レティシアは兄上の妻で……彼女は兄上を愛しているのに……それでも、私とだなんて……耐えられるのでしょうか?」
「それは大丈夫だよ。最初は私が死んだあと、何としてでもニコラスの子を孕んでくれるように頼んでいたんだ」
「そんな……」
「レティーの立場を確立させるために決まっている。もっとも、それは頷いてもらえなかった。だから、私の子としてニコラスの子を産んで欲しいと頼んだんだ」
「兄上、それはどちらでも同じことでは? どこが違うのか私には分かりません」
困惑するニコラスは困ったように眉尻を下げている。
それは子どものころと同じ表情で私の心は和んだ。
「私がいなくなったあとニコラスに、レティーが自分自身のためにそんなことを頼めないというのは、容易に想像できるだろう? むしろそのほうがレティーらしい言い分だ」
「まぁ、レティシアらしいと言えばそうですが……」
「だから、私が生きている今だからこそ、私の望みを叶えて悩みを無くせば、寿命も少し伸びると思わせたのさ」
「……それをレティシアは、信じたのですか?」
「そうらしいね」
「レティシアが、兄上の言葉を疑ったりしないのは、ご本人が一番よくご存知でしょうに……」
ニコラスは「かわいそうに」と付け加え、手のひらで目を覆った。
「もちろん、私を忘れろという意味ではないと言ってある。それで……お前は本当に、それでも良いのか?」
「はい。むしろレティシアが私を受け入れている時も、兄上の名を呼んで欲しい」
ニコラスが真剣にそういうので、私は苦笑してしまった。
「本当に……レティシアと私が。そのぉ……シテも良いのですか? 兄上がお辛いのでは?」
「いや。ニコラス、実はお前の話を聞いたあと、私は気がついてしまった。どうやら私も特殊な性癖があったようだ」
「兄上が? 一体どういう……」
私が詳しく自分の気持ちを伝え、だからニコラスにレティーを寝盗って欲しいと打ち明けると、彼はとても驚いたようだった。
しかしすぐに嬉しそうに笑うと「やはり私たちは兄弟ですね」と言った。
正直喜んで良いのかは微妙だったが、今回に限ってはお互いの性癖の相性は抜群だろう。
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