The Eternity of Realms: Causal Nexus （永遠の領域: 因果の結節）

序章

第5話 - 初めての試練

序章: 第5話 - 初めての試練

運命の鎖を手に入れたライナスは、再び現実の世界へと足を踏み入れた。だが、その瞬間から彼の周囲に何かが変わり始めていることに気づいた。学校の友人たちや教師たちが彼に向ける視線は、これまでと変わらぬものだったが、ライナスには何か違和感を感じる。

まるで、自分の存在がこの世界から浮いてしまったような、孤立感とともに何かが迫ってくるような不安感が彼を襲っていた。

放課後、ライナスは自然といつもとは違う道を歩いていた。学校から家へと帰る道筋ではない、街外れの小さな森へと続く道だ。何かに引き寄せられるように、彼の足はその方向へ向かっていた。

「どうして……こんなところに……」

ライナスは自分に問いかけながらも、森の入り口に立っていた。木々が密集する薄暗い場所だが、不思議と怖さを感じなかった。むしろ、彼を呼んでいるような感覚があった。

運命の鎖がその手の中で軽く光り始め、ライナスはそれを握りしめながら、森の中へと一歩踏み入れた。木々の間を進むと、彼の耳にかすかな音が届いた。何かがこの森の奥で動いているのだ。

音に導かれるように、彼は足を進めていく。やがて、開けた空間に出ると、そこには古びた石造りの祠があった。祠の前には、大きな岩が据えられており、その上に一匹の獣がうずくまっていた。

「なんだ、あれは……」

獣は、ライナスが近づくとゆっくりと頭を上げた。その目は赤く光り、まるで彼を見透かすかのような鋭い眼差しをしている。大きな身体はまるで石のように固そうで、背中には鋭い棘が並んでいた。

ライナスの心は瞬時に警戒を強めた。今まで見たこともないようなその生物が、自分に何をしようとしているのか全く分からない。ただ、運命の鎖がその存在に反応し、彼の手の中で再び光を放ち始めた。

「試練……か……」

ライナスの心の中に、その言葉が浮かんだ。影から運命の鎖を託された時から、こうなることは予感していたのかもしれない。これは、運命を受け入れるための最初の試練なのだと。

獣はゆっくりと立ち上がり、唸り声を上げた。その音は低く重く、地面が震えるほどの力強さがあった。ライナスは後ずさりしたが、心の中で決意を固めた。

「逃げるわけにはいかない……」

彼は運命の鎖を強く握りしめた。その瞬間、鎖の光が一層強くなり、ライナスの体を包み込むように輝き始めた。その光は彼の中に眠る力を呼び覚まし、彼に新たな力を授けるかのようだった。

「僕は……戦わなければならないんだ！」

ライナスは叫び、前に進み出た。彼の体は軽く、運命の鎖が彼の動きを導いているかのようだった。獣は再び唸り声を上げ、ライナスに襲いかかってきた。

ライナスは咄嗟に身体を反らし、獣の攻撃をかわした。彼の動きはこれまでとはまるで別人のように素早く、力強かった。それは、運命の鎖がもたらした新たな力だった。

「これが……僕の力……？」

彼は驚きつつも、その力を感じ取り、戦う決意を新たにした。獣が再び襲いかかってくる。ライナスはその攻撃を巧みに避け、反撃のチャンスをうかがった。

そして、獣の隙をついて、ライナスは手にした運命の鎖を振り下ろした。鎖は光を放ち、獣を捉えた。その瞬間、獣は吠え声を上げながら倒れ込み、地面に崩れ落ちた。

ライナスはその場に立ち尽くし、深い息をついた。彼の中には勝利の喜びと、これからの道に対する不安が交錯していた。しかし、一つだけ確かなことがあった。彼は運命の鎖を手にし、その力を受け入れたのだ。

「これが……僕の運命……」

ライナスは静かに呟き、祠の前で佇む。彼の中で何かが変わり始めていた。そして、それはまだ始まったばかりだった。