【完結】女好きプロゲーマーが恋愛ごっこを卒業するまで

ソラ太郎

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『長らく続けてきたこの戦いの決戦。この試合を以って、ここで最強の勝者が決まります。
 両者、セットポジションをお願いしまーぁす』


 席につくといつものように鼓動が高鳴る。
 軽い緊張感が心地いい。

 会場の空気が変わった。
 全員が俺たちのプレイに目を見張り、どんな戦いが見られるのかとワクワクして唾を飲み込むほど集中したのが伝わってくる。


『勝負は2ポイント先取。最大3回戦となります』


 家庭用ゲーム機のものではなく、ゲームセンターに置かれている実機と同じ型のコントローラーを握る。
 このレバーとボタン操作を楽しむために家庭用も販売されているが、格闘ゲームを愛する層には楽しむより練習するために需要がある。

 お互いにキャラを選択すれば、いよいよ始まりの合図だ。

 負ける気がしない。
 サクッと2ポイント連取して、優勝は決まりだ。

 と思ったのだが。


『開始直後からいきなりシロサイの猛攻!ムジンフリーリィは防戦一方で技を出させてもらえない! 
 スキルポイントが溜まった瞬間から発動までの速度は神レベル!これはすごいぞシロサイ!
 連続のスキル発動でハメ技が決まっている!
 ムジンフリーリィは逃れることができるか? いや、できない! このハメ技にハマって抜け出せた例はないぞ! このキャラが持つ習性を最大限に活かした戦法を我が物にしている!
 ああっ…………ついに!
 シロサイ、ムジンフリーリィを撃破!』


 初手からいきなり仕掛けてきたのは想定内ではあったものの、こちらが狙った技の発動を見切られたのは想定外。

 ハメ技にハマらない方法を知っていたのに、その一瞬の動揺で回避が遅れたのが敗因だ。
 シロサイをナメすぎた。


『1ポイント先取したのはシロサイだ。
 ムジンフリーリィを手玉に取ったこの一戦は本物。
 前回優勝者の紅のタブーを倒したのも、もはや偶然でもなく実力であると証明されたぞ!』


「っくそが」

 マイクがないのを良いことに、小さく呟いた。

 ハメ技から抜け出す方法は、実はある。だが重量系キャラにのみ許された特殊な方法であり、今の俺のキャラでは使えない。

 お互いにキャラクター変更はできないので、次にさっきのハメ技にハマれば再度敗訴が濃厚となる。

 そうはさせない。そう簡単に何度も同じ手を使わせてたまるか。プロゲーマーの実力を見せつけてやろう。


『第2回戦、ファイ!』


 先ほどと同じようにいきなり猛攻を仕掛けてきたが、俺が技を出した直後のコンマ数秒のタイミングを狙っていることは間違いない。

 シロサイはここぞのタイミングだけを狙ってくると分かっているので乱れさせる、それが俺の作戦である。


『技やスキルが展開されない少し地味な攻防のようだ。 ムジンフリーリィは先程の展開に慎重になっているようだが、シロサイも焦ることなく立ち回っている!

 ……おっと? ここでムジンフリーリィ動くか? 距離を取り……今度は一気に近づいた! ……いや、また離れた。
 距離が詰まった瞬間、繰り出すシロサイの技をまるごと回避している。

 体力は地味な小競り合いでお互いに消耗しているが、どちらからも決定打が打たれない! 牽制しあっているが全く派手じゃない。お客さんもいつ何が起こるか分からない状況に息を止めているようだ。

 ああーーっと!? 今、何が起こった?
 シロサイの体力が一気に減った! シロサイのスキル発動を阻止して上書きしたのはムジンフリーリィのスキルだ!
 空中に投げ出されたシロサイは身動きが取れない!それを見逃さないのがムジンフリーリィだ!
 一気に攻めて……シロサイを撃破!』


 2戦目はシロサイの動きを観察することから始めた。
 明らかに〝狙った動き〟をしているのだから、それをさせずにこちらのペースに巻き込んだ。
 今回の勝因はたったそれだけ。

 これで1ポイントずつ。
 振り出しに戻った。

 正直言うとこれまで戦ってきた中でも指折りに上手い。ゲームの世界では男も女も関係ないが、俺が知る女プレイヤーにしてはかなりの上級者である。プロでも普通に通用すると思う。


『泣いても笑っても、この勝負で全てが決まる。
 縦横無尽のムジンフリーリィか。
 新星ルーキーシロサイか。
 最後の戦いが、今、始まる!』


 まあ、相手が俺じゃなければね。


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