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Lv.9-5
しおりを挟む普段から基本的に上から目線なので、和葉をこの角度から見た覚えは何度もある。
だけど体勢的にも、感情的にもこの状況は初めてである。
「……やだ」
「何が?」
乗っかったまま訴えてくるその言葉の意味は、多分俺にも分かってる。
かと言って優しくごめんねなんて言えない。
和葉は俺の彼女じゃないし、和葉の彼氏になるつもりもない。
だったらわざわざ望む言葉を選んでやる必要はない。つけあがらせるだけだ。
「他の子とえっちしないで」
「俺の勝手だって」
「そんなにしたいなら、私が相手するから」
ちょっと目が潤んで居て、泣かれるのは嫌だなとか思ってる自分の冷たさに引く。
「私ずっと前から達也のこと好きなのに」
「……知ってるけど」
「知っててなんで白井さんと2人で?」
「それも俺の勝手じゃん……ヤキモチとか妬くなよ」
直接好きとか言われたわけじゃないけど、そうだろうなと思っていた。
だから俺は和葉の恋愛話に耳を傾けて来なかった。少しでも興味を持ったと思われたら、すぐにでも体当たりで突進してきそうだったからだ。
ここまでよく耐えて来た方だと思う。
どうやらシロサイの存在で爆発したか。
今までは知らないところで何をしてるか分からないくらいの距離だったものが、突然他の女と居る場面を目のあたりにして現実味を帯びさせたらしい。
こうなる可能性を考えて今日は居留守を使いたかたったのだが。
「私にしなよ……私がするから」
俺が微動だにしないで居ると、和葉の手が俺のベルトに手をかけ、外し始めた。
動作はぎこちなく慣れてないのは明らか。
少し震えているようにも見える。
無理する場面じゃないと思うんだが、頑固な和葉はこの流れを途中で止める術を持っているんだろうか?
「本当に何してんの」
一応は我に返るチャンスを与えてみる。
だが聞いてないのか聞こえてないのか、続けてズボンのファスナーを下ろし、中のボクサーパンツと一緒に一気にずり下ろした。
そんなぁ!
防壁がいきなりなくなったら、俺のマグナムソードが飛び出しちゃう!
───そんなことはなく。
俺の息子は全く反応していなかった。
女好きプロゲーマーとして名の知れた俺ではあるが、誰でもいい、いつでもいい、何でもいいなんてことはない。
まだまだ小さなマグナムソードに手を添え、恐る恐る握るとゆっくり上下に動かし始めた。
多分だけど、和葉は慣れていないとかじゃない。
男のそれを見るのも初めてなんだと思う。
目を逸らしたいのを我慢して、潤んだ目で凝視している。お世辞にもうまいと言えないそのしごきは、握り込みすぎないように注意を払っているのだけは分かった。
だがこの状況、なんか逆に俺が恥ずかしい。
「どうしたいわけ?」
「私がしてあげるの」
「……無理しなくていんじゃない?」
「おっきくなってきた……すごい……」
何反応しちゃってるんだよ俺のマグナム。
誰でも、いつでも、何でもいいのかよ。
いやいや感情関係なく、ただ単純に刺激を与えられたから反応するのは当たり前で、これは和葉相手に萌えているわけじゃ決してない。
ただの反射に流されたくない、と思った時だ。
やはり救世主は現れるのだ。
「たっちゃん。和葉ちゃん来てるの?」
シロサイを見送りに行ってから開けっぱなしだった部屋のドアから顔を覗かせたのは、デートから帰ってきた麻央だった。隣には圭人さんの姿もある。
「あらっ……」
「おや……」
俺の上に馬乗りになった和葉。
じゃれあいとかの範疇では済まされない、尋常じゃない雰囲気が部屋の中に漂っている。
その構図を2人に目撃されてしまったわけだ。
「あ、2人ともおかえり」
俺と和葉の視線は2人に向けられているが、2人の視線はどうやら和葉の握った操縦桿に向けられているようだ。
「ごめんなさい。ドア、閉めとくわね」
「帰ってきた時、ただいまをもうちょっと大きい声で言えば良かったね」
「え、閉めなくていいよ別に」
パタン。
何か気を遣うんだよな。
「あ……あ……わた……わたし」
「正気に戻った?」
「何させるのよ! いやぁぁぁ」
掴んでいたものを雑に放し、飛び退いてドアを激しく開くと階段を駆け降りて行った。
玄関の閉まる音まで聞こえたから、迷わず帰って行ったんだと思われる。
「俺の放置していくなよ……」
パンツを上げてズボンの前面も元通りに直すと、少し待って息子の落ち着きを取り戻させた。
リビングでは麻央と圭人さんが一緒に料理を始めていて、俺の姿を認めると麻央が目を輝かせた。
「和葉ちゃんと付き合い始めたのっ?」
「付き合ってないし付き合わない」
「えーっ? こんなこと初めてで私、ドキドキしちゃった。和葉ちゃんご飯も食べずに帰っちゃったの、悪いことしたかなぁ」
和葉がここに入り浸るようになって何年か、とにかく長い。俺よりも麻央と仲良かった割に、和葉は麻央にも話してなかったのだろうか。
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