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Lv.20-2
しおりを挟む奴らはゲームの観戦者だ。プレイを見ての感想なら、どんだけ酷いことを言われても全面的に受け止めるが。
「あいつら」
「平気だよ?」
俺が気分を害しているのを察したシロサイに気を遣わせてしまった。
なんか俺、大人気なさすぎない?
───4戦目、5戦目。
シロサイのミスが止まらず連携に乱れが生じた。フォローするために被弾した俺のHPが危うく尽きる直前に敵を撃破できたり、少し卑怯な技で敵を追い込むしかなくなったり。
ギリギリが続きはしたが、なんとか予選を通過し本戦に残ることが決まった。
『撃破、撃破、撃破ー! 明日の本戦への出場チームが続々と決まっていきます!』
「前はもっと上手かったと思ったけどな」
「もう付き合ってるの? 甘えが出てんじゃない」
「整形でも何でもいいけどさ、ミスりすぎ」
「よくあれで本戦決まったよね」
「顔を武器に相手に負けてもらったんじゃない?」
ヘッドホンを外すのをもう少し遅らせれば良かったと思った。
俺に聞こえたのだ。シロサイの耳にも当然、評価ではないただの悪口が聞こえたはずだ。
「ごめんムジンくん。最後までミスった」
「勝ったしモーマンタイ。今日はもう帰ろ」
「最後まで見なくていいの?」
「手首は?」
「痛くはないんだけど……」
手首の痛みはもうだいぶ前に治っているのに、見るとシロサイの手が小刻みに震えていた。
俺はその手を握った。
震えが止まるように力強く握ると、俺を見上げたシロサイの目が潤んでいる。
痛いのは手じゃなく、心の方。
「帰ってご飯でも食べよっか」
「うん」
何を聞いても平然とした顔で「平気」とか、「気にしてない」とか言う。
それは俺を気遣っていたんじゃなくて、そんな強がりを言わなきゃここに立ってられなかったんだ。
会場から出ると喧騒から離れて静かになった。
「なんか疲れたなーっ」
「疲れたねぇ。ほんとごめんね」
「もう謝るなって」
手が震えていたことと言い、おそらくシロサイは周りの声を気にしていたんだろう。
コメント欄や噂話で話題にはなっても、ネットでの書き込みだからと気にならなかった他人の言葉も、あれだけ目の前で言われたら堪えて当然だ。
「あーあ……優秀したらもっかい、高山くんに告白しようと思ってたのにな」
珍しく弱気なシロサイが出てきた。
「優勝諦めんの、早くない?」
「実は朝からずっと手が震えてて。さっき高山くんが握ってくれるまで止まらなかったんだよ」
気づかなかった。
直接的な悪口を聞いて心が折れそうになったというより、もう朝の時点で緊張はMAXだったのか。
あの遠慮のない視線も心無いヤジと同等なのかもしれない。
「俺、ああいうヤジ嫌いなんだよな」
「ああいうヤジ?」
「プレイに関係ないとこ突っ込むやつ」
「ああ……」
「優勝したら全員並べてぶん殴るか」
「あはっ。やめときなよ」
少しだけいつものシロサイの笑顔が戻った。
「私もああいうこと言われるの好きじゃない。
確かに人から言われても仕方ないくらい、高校時代の自分のことは、私も好きじゃなかったけど」
和葉も言ってたが、シロサイは自分を変える努力を続けてきたらしい。
その努力を無視して楽に変わったみたいな整形疑惑を向けられるのって何か、非情すぎないか?
「言われても仕方ないって言うか。
高山くんも見た目とか気にするかなってここまで頑張ったんだけど、まだまた人を黙らせるほどじゃないってことだね。そりゃそうか」
言いながら笑うけど、その笑顔には力がない。
「シロサイは可愛いよ」
「またぁ。すぐそういうことを言うー」
元気付けようとかじゃなく、正直な俺は思ったことを口にするタイプだ。
そんでほら、照れるシロサイが可愛いじゃん。
「何か今、すっごくシロサイ抱きたくなったけど!」
「えぇ……高山くんの性欲はいつも突然すぎるし、強すぎるよ」
「そうじゃなくて、抱きしめる方」
「えぇ? ぇーと?」
返事とか待ってる余裕もない。
人目を憚らずシロサイを抱きしめてみる。
「ねぇ、また誰かに見られたらどうするの?」
「そうだった」
「行動力は尊敬するけど、TPOは弁えてよー」
そんなこと言いながら振り解かないのが、憎らしいではないか。
誰かに見られてまた拡散されたら、ハグくらいいくらでも誰にでもしたるわ! と豪語し開き直る算段がついた。
明日の本戦では優勝してやる。
シロサイが本気を出せる環境を作って、集中させてやればそのプレイに文句など言わせない自信がある。
よーしお前ら、マジでガチでかかってこいや。
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