67 / 78
Lv.22-3
しおりを挟むシロサイが俺の家を出ていくことになった。
「お世話になりました」
「本当に行くの? 行くなよ、俺、悪いところがあったら直すから……! 行かないでくれよ」
去っていこうとするシロサイに抱きついて、離れたくないと懇願した。
「……でもね、もうここには居られない」
「行かないでくれよシロサイ!」
「ごめんねっ……」
「はいはい、2人とも、そろそろいいかしら?」
和葉が呆れ顔で俺たちを見守ってくれていた。
松葉杖が取れてからも俺の家に無理やりシロサイを居座らせていたのだが、怪我が完治したのを機にいよいよ自宅に戻ることになったのだ。
シロサイのPCを再度自宅まで運び込むのも俺がやったのだけれど、実際に帰ろうとする姿を見ると寂しくて仕方なかった。
付き合う前からそれなりに長い時間、ずっと一緒に居たから離れるなんてことが信じがたい。
「近いし、すぐ会えるし大丈夫だよ」
「うん……」
「ね? 我慢して? 高山くん」
「うん……分かった……」
「泣きべそかかないでよ! 達也、女々しい!」
甘える俺にとことん優しいシロサイに対し、和葉は心ないほどに冷たい。
ということで。
俺はまたこの広い家に1人になった。
両親が亡くなって1人になって、叔父さんが俺を養子にして親子になって、叔父さんが結婚して家族が増えて、みんなして海外に行って1人になって。
そんでシロサイがうちに居候して、彼女になって、でもまた1人になった。
1人になるのは慣れていたはずだが、両親と姉夫婦が出ていった時とは、気持ちの面で違っていた。
「あ、寂しいかも」
寂しいなんて感情はずっと分からなくなってた。
それは多分、叔父さんだったり、麻央だったり、例えば和葉もそうだ。
誰かしらが俺のそばにいてくれて、孤独になる時間を与えないでくれたからだ。
今までそれに気づかなかったのは、当たり前のように提供してくれた人たちが居たからだった。
だけど俺自身が選んで手に入れた〝居場所〟であるシロサイが急に居なくなると、部屋が広くなった気がした。急に寒さも感じるほど、心細くなった。
「あれー、俺、なんでこんな寂しいんだろ」
時計の針はもう日を跨ごうとしている。
今からシロサイに会いに行ったら迷惑になるよなって考えて、寝てしまえば朝になるとも思った。
「でもすげー会いたい」
出て行った直後なのに、もう会いたい。
ベッドから飛び起きて上着を羽織った。
寝てたら謝ろう。
そう思って階段を降りているとき、携帯が鳴った。着信はシロサイからで、まずはまだ起きててよかったと思った。
「もしもし」
『高山くん? 起きてた?』
「あのさシロサイ、今から会いに行っていい?」
『ぇ……ぁ、今』
何かまずかったかな、と玄関で立ち止まる。
よく考えたらこの時間にいきなりって、どうかしてると思われるか。
付き合い始めてシロサイが彼女になってから俺、シロサイに執着しすぎてね?
『実は……』
「ごめ、無理言ったよな」
『ううん、あの、今、会いに来たの』
「え?」
それを聞いて、まさかと思いながらも勢いよく扉を開けた。
そこにはシロサイが立っていた。
「あ……ごめん。久しぶりに家に帰ったら、誰も居ない部屋が寒いっていうか、ちょっと寂しくて」
帰ったばっかりで戻ってきたことにバツが悪そうな顔をしているけれど、俺と同じ気持ちだったことが無性に嬉しかった。
無意識にぎゅっと抱きしめてた。
「俺の方が会いたくてたまんなかった」
「う、嬉しい。そんな風に思ってくれたの?」
家の中に再度招き入れると、どちらからともなくキスをした。抱きしめあって、求めて、何度も何度もたくさんキスをした。
2階へ上がるのも面倒で、すぐ横のリビングに入ると訳もわからずお互いを求め合った。
0
あなたにおすすめの小説
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
憧れの彼は一途で優しくて時々イジワル
RIKA
恋愛
営業課長・永瀬綋司は、その容姿や優秀ぶりから多くの女性社員にとって憧れの的。
久遠香澄もその一人だが、過去の恋愛で負ったトラウマから自分に自信がもてず恋愛を封印して過ごしていた。
ある日、香澄は会社帰りに偶然永瀬と駅で遭遇する。
永瀬に誘われて二人で食事に行くことになり緊張する香澄だが、話しているうちに少しずつ緊張もほぐれてゆく。
話題が恋愛の話になったとき、彼は香澄に向かって突然驚くべき言葉を口にした。
「好き。――俺の彼女になってくれない?」
夫婦戦争勃発5秒前! ~借金返済の代わりに女嫌いなオネエと政略結婚させられました!~
麻竹
恋愛
※タイトル変更しました。
夫「おブスは消えなさい。」
妻「ああそうですか、ならば戦争ですわね!!」
借金返済の肩代わりをする代わりに政略結婚の条件を出してきた侯爵家。いざ嫁いでみると夫になる人から「おブスは消えなさい!」と言われたので、夫婦戦争勃発させてみました。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる