声優(おしごと)の時間です! 〜意地悪マネージャーと秘密のレッスン?!〜

つむぎみか

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なんでなのか知りたいんです!

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 気付けばいつの間にか、三日に一度は練習をするのが当たり前。それどころか歩夢のスケジュールがオフの時には、泊まり込んで二日続けて致す事すらあった。大抵は一方的に歩夢が翻弄されて射精して終わる。今ではあんなに頑なだった尻の孔も、小田原の指を三本も咥え込めるようになってしまっていた。

(練習……とはいえ、なんで俺たちこんな爛れた関係になっちゃったんだろ……)

 恋人でもない相手と、まるでセックスみたいな疑似行為をしていることの異常性は分かっていた。それでも、小田原に「練習するか?」と聞かれると、歩夢は悪態をつきながらも最後には頷いてしまうのだ。

 小田原は今、監督と話したいことがあると席を外している。歩夢は、はぁ……とため息をこぼして頬杖をついた。
 すぐそばには控室を出ていく前に小田原が淹れてくれたコーヒーが置いてあった。ブラックは苦くて飲めない歩夢のために、ミルクと砂糖が多めに入った甘いやつ。直接そうお願いしたことなんて一度もないのに、小田原は知らぬ間に歩夢の好みを覚えていた。

(ほんと、そういうところは素直にすごいって、思えるんだけどな)

 まだ暖かいカップを指先で弄りながらぼんやりとしていると、驚くほど近くから永瀬の声がした。

「おーおー、色気垂れ流して。ついに処女喪失しちゃったかな?」
「……っ永瀬さん! し、してませんし、何言ってるんですかっ」

 永瀬が部屋に入ってきたことにも気付かないくらい考えに没頭していたのか、耳元を擽るように吹き込まれた美声に、身体が大きく跳ねてしまった。その様子を面白そうに眺めていた永瀬は、カラカラと軽快に笑いながら歩夢の隣にあった椅子に座る。

「えーー、まじか。意外と奥手なんだなあのオニーサン」

(お、奥手か? あんだけのことしておいて……)

 歩夢の知る限り、挿入以外のほとんどはされているような気がする。練習の最中はどんなにやめてとお願いしても、気付いた時にはなんやかんやと言いくるめられて続行される。何かと手慣れているし、きっとこれまで散々遊んできたに違いない。そんなことを想像していたら、なんだか腹の奥がムカムカしてきたような気がする。

(って、俺には関係ないことだけど!)

「はーぁ……仕事したくなーい……」

 そんなことを言いながら机に突っ伏した永瀬を見て、歩夢は前から不思議に思っていたことを聞いてみることにした。

「永瀬さんは、なんで声優になったんですか?」

 歩夢が過去に雑誌のインタビュー記事を読んだ時には、それはそれは高尚な内容が書かれていた。こんなにも声優という仕事について、真剣に、深く考えている人がいるのかととても感動したものだった。しかしこうして永瀬と直接対面した後では、きっとあれは事務所が用意した模範解答なのだろうな、ということを理解している。

「んー? そりゃあ楽して稼げると思ったからだけど~?」
「な、なるほど……」
「モデルとか、ゲーノージンにスカウトされたこともあったんだけどさぁ。色々面倒そうじゃん? 声優だったら決められたこと喋るだけだし簡単っしょ~って思ってたんだよねー。やってみたら全然楽じゃねーし」

 歩夢は以前の自分が聞いたらショックを受けそうな内容だなぁ、なんて思いながらも、永瀬らしい理由だなと変に納得してしまう。こんな理由を聞いても何故か永瀬が嫌いになれないのは、今となっては口ではそんなこと言いつつも、しっかりと仕事はやり切っている、ということを知っているからかもしれない。

「ふふ。それは残念でしたね」
「もうめちゃくちゃ残念! 辞めたいって言っても社長に泣いて縋られるしさぁ~」

 嘘か本当か、そんな風に冗談めかして話す永瀬に、歩夢も自然と笑みがこぼれる。

「歩夢ちゃんはなんで声優になったの?」
「え? えっと、俺は……」

 質問を返されて、歩夢は自分の過去に少しだけ思いを馳せた。



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