39 / 55
なんでなのか知りたいんです!
しおりを挟む気付けばいつの間にか、三日に一度は練習をするのが当たり前。それどころか歩夢のスケジュールがオフの時には、泊まり込んで二日続けて致す事すらあった。大抵は一方的に歩夢が翻弄されて射精して終わる。今ではあんなに頑なだった尻の孔も、小田原の指を三本も咥え込めるようになってしまっていた。
(練習……とはいえ、なんで俺たちこんな爛れた関係になっちゃったんだろ……)
恋人でもない相手と、まるでセックスみたいな疑似行為をしていることの異常性は分かっていた。それでも、小田原に「練習するか?」と聞かれると、歩夢は悪態をつきながらも最後には頷いてしまうのだ。
小田原は今、監督と話したいことがあると席を外している。歩夢は、はぁ……とため息をこぼして頬杖をついた。
すぐそばには控室を出ていく前に小田原が淹れてくれたコーヒーが置いてあった。ブラックは苦くて飲めない歩夢のために、ミルクと砂糖が多めに入った甘いやつ。直接そうお願いしたことなんて一度もないのに、小田原は知らぬ間に歩夢の好みを覚えていた。
(ほんと、そういうところは素直にすごいって、思えるんだけどな)
まだ暖かいカップを指先で弄りながらぼんやりとしていると、驚くほど近くから永瀬の声がした。
「おーおー、色気垂れ流して。ついに処女喪失しちゃったかな?」
「……っ永瀬さん! し、してませんし、何言ってるんですかっ」
永瀬が部屋に入ってきたことにも気付かないくらい考えに没頭していたのか、耳元を擽るように吹き込まれた美声に、身体が大きく跳ねてしまった。その様子を面白そうに眺めていた永瀬は、カラカラと軽快に笑いながら歩夢の隣にあった椅子に座る。
「えーー、まじか。意外と奥手なんだなあのオニーサン」
(お、奥手か? あんだけのことしておいて……)
歩夢の知る限り、挿入以外のほとんどはされているような気がする。練習の最中はどんなにやめてとお願いしても、気付いた時にはなんやかんやと言いくるめられて続行される。何かと手慣れているし、きっとこれまで散々遊んできたに違いない。そんなことを想像していたら、なんだか腹の奥がムカムカしてきたような気がする。
(って、俺には関係ないことだけど!)
「はーぁ……仕事したくなーい……」
そんなことを言いながら机に突っ伏した永瀬を見て、歩夢は前から不思議に思っていたことを聞いてみることにした。
「永瀬さんは、なんで声優になったんですか?」
歩夢が過去に雑誌のインタビュー記事を読んだ時には、それはそれは高尚な内容が書かれていた。こんなにも声優という仕事について、真剣に、深く考えている人がいるのかととても感動したものだった。しかしこうして永瀬と直接対面した後では、きっとあれは事務所が用意した模範解答なのだろうな、ということを理解している。
「んー? そりゃあ楽して稼げると思ったからだけど~?」
「な、なるほど……」
「モデルとか、ゲーノージンにスカウトされたこともあったんだけどさぁ。色々面倒そうじゃん? 声優だったら決められたこと喋るだけだし簡単っしょ~って思ってたんだよねー。やってみたら全然楽じゃねーし」
歩夢は以前の自分が聞いたらショックを受けそうな内容だなぁ、なんて思いながらも、永瀬らしい理由だなと変に納得してしまう。こんな理由を聞いても何故か永瀬が嫌いになれないのは、今となっては口ではそんなこと言いつつも、しっかりと仕事はやり切っている、ということを知っているからかもしれない。
「ふふ。それは残念でしたね」
「もうめちゃくちゃ残念! 辞めたいって言っても社長に泣いて縋られるしさぁ~」
嘘か本当か、そんな風に冗談めかして話す永瀬に、歩夢も自然と笑みがこぼれる。
「歩夢ちゃんはなんで声優になったの?」
「え? えっと、俺は……」
質問を返されて、歩夢は自分の過去に少しだけ思いを馳せた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる