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市川浩平という男1

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「美鳥さん。美鳥さん……寝ちゃったんですか?」


 俺は普段しないような猫なで声を出して、自分がシャワーに行っている間にベッドの中へ潜り込み、狸寝入りを始めてしまった恋人へ甘えるように背後から擦り寄った。

 演技と丸わかりな肩の動き。これで騙せると思っているなんて、浅はかで、意外と単純お馬鹿な美鳥さんが可愛くて仕方がない。

「ねぇ美鳥さん。寝ちゃったなら……俺、勝手に悪戯しちゃいますよ……?」

 丸みを帯びた臀部をするりと撫でながら、美鳥さんの耳元で低く囁く。びくんっ、と震える肩に笑いそうになってしまうが、必死でそれを噛み殺すと少しずつ撫でる手を前の方へと回していく。

「……なぁんて、美鳥さんは寝てるから何言っても分からないか」

 俺の手が美鳥さんのペニスへと辿り着き、指先に力を入れかけた瞬間。ガシッ!と美鳥さんが俺の手首を掴んで制止する。

「あれ? おはようございます、美鳥さん」
「……っ、お前……、相っ変わらず性格悪いな!」
「美鳥さんは相変わらず、演技が下手くそですね♡」

 顔を真っ赤にしてこちらを振り返った美鳥さんは、苦々しげな表情をして俺のことを見ている。その姿はまるで人馴れしていない猫が、必死に毛を逆立てながら威嚇をしている様子を彷彿とさせて、何を言っても愛らしく感じるばかりだ。

「……はぁ。今日はしない! 明日の朝、会議があるから早いんだ」
「へぇ、珍しいですね?」

 そっぽを向いてフンと鼻を鳴らす美鳥さんの可愛い仕草に頬を緩めながら、俺はその身体をひっくり返して仰向けにすると上へ跨るように覆い被さった。Tシャツの上からでもわかる胸元の突起を、少しだけ力を込めて親指の腹で押し込んでみる。

「ちょっと! しないってば……っ」
「美鳥さんは寝ているだけでも良いですよ。俺が勝手に美鳥さんで気持ち良くなるんで。少し身体は触らせてもらいますけど」
「あっ、こら、やめろ……!」

 ぴんと勃ち上がった可愛らしい乳首を直接弄りたくなって、俺はサイズが合わずにだぼっとしたTシャツの裾から手を差し込むと、二本の指でシコった先っぽをくにくにと揉みしだく。「ひゃぁっ♡」と色っぽい鳴き声を漏らす唇へ噛み付くように口付けを落とし、その咥内に満たされた甘い唾液を堪能する。最初は奥に引っ込んで恥ずかしがっていた美鳥さんの舌も、誘うようにツンツンしたり、上顎をざらりと舐めてみたり、喉まで犯すようにじゅぽじゅぽしたら、最終的には自分から絡みついてくるようになるんだよなぁ。

「ん、ァ、ァ……んぅ……っ♡」
「ふふ、キスだけなのに、そんな可愛い顔しちゃうんですか? えっちだなぁ♡」

 満足するまで美鳥さんの唇を味わった後、ようやく俺が身体を離すと、美鳥さんは胸を喘がせてうっすら涙を浮かべた焦点の合わない瞳で俺の方を見つめる。いっぱい吸って噛んでを繰り返したら美鳥さんの唇がぽってり艶々になってしまった。けしからんエロさだ。思わずその表情の素晴らしさを口に出して賞賛すると、美鳥さんは恥ずかしそうに目を伏せてしまう。

「……手も、動かしてるだろ……っ」
「ちょっとおっぱい撫でただけですよ? 最近前よりも敏感になってきたんじゃないすか」
「……っ」

 その言葉の通り、美鳥さんの魅惑の肢体は日に日に敏感になっていた。元々美鳥さんは童貞食いを生業(笑)にしていたのだが、基本的にタチのちんこを勃たせてベッド転がすと、それに跨がり自らの好きなように動くプレイを好んでいたようだ。結果として多くのチェリーボーイ達の初めてを美味しくいただいてはきたものの、後孔も含めたありとあらゆる性感帯が全然開発されていなかった。自分で気持ち良いに制限かけて、他人のちんこでぬるーいオナニーを楽しんでただけってことね。

 ど淫乱に違いはないかもしれないけれど、大好きな相手がそんな裏腹な身体を持て余していると知ったら、そりゃあ男としては全力で開発するしかないでしょう?
 俺は初めて抱いた日から今日までのセックスで、少しずつ、時には激しく、嬉々として美鳥さんの身体を作り替えていった。

「今日は激しくしないって約束します。美鳥さんの好きなところ、ゆっくり優しく擦ってあげるから、だから少しだけここに入れて欲しいなぁ」
「ひぅ……っ♡」

 まだ完全とは言い難いが、すでに挿入するには充分なほどに成長した自分の陰茎を美鳥さんの後孔に擦り付けるようにしながらお願いをする。まだ準備をしていないのでその窄まりは硬く閉じたままだったが、連日のセックスで俺のちんこを覚えてくれているらしい。ぐりっと押し当てた俺の亀頭に美鳥さんのアナルがくぱくぱと誘うようにわずかに開閉していた。

「ね? お願いします♡」

 身体は既に陥落寸前だが、ここでちゃんと美鳥さんの許可を取らないと後に引いてしまうのだ。この前同じようなパターンで無理やり抱いたら、怒った美鳥さんが一週間のお預けを言い渡す事態になってしまったから、それだけは避けたい。まぁ結局我慢できなくなってたのは美鳥さんも同じだったけど。

「一回、だけだからな……っ」

「よっしゃ! あーもう、美鳥さん大好きっ♡」

 本当に、浅はかで、単純お馬鹿な美鳥さん。

 確かに俺がイったのは一回きりだったが、その一回の射精へと至るまでに美鳥さんのお尻の孔がぐずっぐずになるまで舌で解して、唾液と潤滑油でどろどろになった後孔で死ぬほどゆっくり抽送を繰り返し、ガチガチのちんこで前立腺やら結腸やらその他肉壁を延々と弄り倒していたら、いつの間にか美鳥さんのちんこからは何も出なくなっちゃって。少し赤くなったお尻の孔をぴくぴく痙攣させながら、ずーーっと甘イキする美鳥さんが可愛すぎて、更にちんこを硬くしてズコズコ突っ込んでいたら、翌朝美鳥さんにめちゃくちゃ叱られた。

 ちゃんと約束は守ったし、目覚ましのセットもして寝坊しないように起こしてあげたのに、何でそんなに怒るかなぁ?
 さっさとイけ。しつこい。巨根。性欲魔人……って、美鳥さんもしかして褒めてくれてる?俺ってばまだまだ若いから、好きな人とのセックスだったら一晩中でもちんこ勃てていられる自信があるわ。そんな俺にほぼ週3以上のペースで付き合ってるんだから、美鳥さんも全然若いよね♡

 当の美鳥さんは最近自分の年齢を気にし出しているようなのだが、ぷりぷりと怒りながら準備をしている姿は可愛いとしか言いようがない。肌もすべすべピチピチで、ちょっとだけ柔らかいお腹はむしろ抱き心地がいいのでこれ以上痩せたり筋肉つけたりしないで欲しいなぁ。俺と付き合うようになってから、美鳥さんはあのジムには通っていないようだし、とてもいい傾向だ。

「美鳥さん、ネクタイここだよ」
「……ありがと」

 むすっとした顔で俺の手からクリーニング出したてのネクタイを受け取ると、美鳥さんは目を逸らしながらでもちゃんとお礼を言ってくれる。あー、もう、唇尖らせるの反則。ほんっと、可愛すぎて食べちゃいたい。

「じゃ、行ってきます」
「はい♡ お仕事頑張ってくださいね!」

 こくんと頷いて玄関の鍵を開けると、美鳥さんはそのまま会社へ向かってしまった。俺は扉が閉まり切る瞬間まで、美鳥さんが消えた先をじっと見つめる。

 ――― バタン

「っ、はぁ~~~。なんなのあの人。マジで可愛さ殺人級」

 今日も美鳥さんがエロ可愛くて世界が平和だ。
 昨晩から今朝にかけてのあれやこれを思い出して盛大に顔面崩壊させながら、俺は二限目にある授業に参加するための準備と、部屋の片付けをし始めるのだった。



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