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しおりを挟む――― ドンッ
「っわぁ……!」
建物の角を勢いよく曲がったところで、大きな壁にぶつかって盛大に尻もちをついた。
「いっ、たぁ……」
壁と激突した鼻も、地面に強打したお尻も、じんじんとした痛みを訴える。こんなところに壁なんてあったっけ?と思って、涙目で前方を見てみれば、そこには壁ではなく一人の大柄な男性が立ち竦んでいた。
「ぼ、坊ちゃん、すみません……!」
恐らく顔を真っ青にして、僕に手を差し出しているのは、二年ほど前からこの家で庭師をしている男だった。なんで「恐らく」なのかというとこの男、いつもモサっとした髪型をしていて、目元が隠れて表情がよく見えないのだ。その為我が家に勤めてから数年経った今も、僕はこの男の顔をはっきり見たことが一度もなかった。
「大丈夫ですか……? 俺のせいで、怪我とか……」
「……いえ、大丈夫です。僕がいきなり飛び出しちゃったから。こちらこそ、ごめんなさい」
差し出された大きな手を掴んで立ち上がる。
節くれだった指はごつごつしていて、僕のモノとは比べ物にならないくらい太くて男らしかった。思わずコレでお尻を弄ってもらったら気持ちいいだろうなぁ、なんてえっちな妄想をしてしまうほどに魅力的な手だ。
男は毎日力仕事をこなしているだけあって、がっしりしたいい身体をしているのに、いかにもモブって感じの冴えない風貌なのが勿体ない。いくら体型が良くっても、僕はイケメンにしか興味がないから、残念ながらこの男は対象外だ。
しかし、そんなことはおくびにも出さず、僕はアドルフ様からも「本物の天使みたいだ」と言われる極上の笑顔を男に向ける。完璧美少年の僕はモブ男にも優しいんだ。そしてなにより、はやく部屋に帰ってお姉さまから貰った玩具を堪能したい!
……って、あれっ?そういえば紙袋がない⁈
ぶつかった衝撃で手放してしまったようで、僕の手元から紙袋がなくなっていることに、その時はじめて気が付いた。
(あっ、あんなところに……! しかもちょっと中身が飛び出ちゃってる~っ!)
慌てて辺りを見回せば、男のやや後方に転がった紙袋が見えた。その袋の口からアナルパールの蛍光ピンクがわずかに覗いて、異質な存在感を放っている。僕の視線が一点に釘付けになっていることで不審に思ったのか、男も同じようにそちらに視線を向けようとする。
「あっ、見ないでください……っ!」
「っ、えっ⁈」
僕は男がそれを見つけてしまう前に、飛び付くように紙袋を拾うと、後ろ手に隠すように仕舞う。
(み、見られてないかな? 何も言ってこないし、大丈夫かな?)
突然普段は大人しい僕が大きな声を出したので、庭師の男は目を白黒させていたが、隠したものに対して言及するような様子はなかった。強いて言うなら、若干顔が赤くなっているような気がしないでもないが、いかんせん前髪が邪魔で表情が読みにくいのだ。僕はここで変に「見ました?」なんて聞いて墓穴を掘るよりも、さっさとこの場を立ち去る方が賢明だと判断する。
「……えっと、それじゃあ僕、部屋に戻りますね?」
「は、はい……あの、本当に申し訳ありませんでした」
「気にしないでください。いつもお仕事ありがとうございます♡ それではっ」
サービスとばかりに再び天使の微笑みをお見舞いし、惚ける男を残したまま、僕はその場を後にした。
◇◇◇
自室に入り、鍵をかけたことを確認すると、僕はさっそく身体の準備をしてベッドに向かう。
「うふふ♡ まずはこの、アナルパールを使ってみよう……♡」
再び目にした玩具は、相変わらずいやらしい色形をしている。僕はいつものアナニーを嗜む時と同様に、下半身だけ衣服を脱ぎ去ると、後孔を潤滑油で解しながら挿入に備えた。
どうせ一人なのだから全裸になってもいいのだが、下肢のみ丸出しにすることで、言いようもない背徳感に包まれて、より一層えっちな気分になると気付いてからはずっとこのスタイルだ。
「っん……♡」
つぷり、と先端の一番小さな球を後孔に押し込む。指とは違う無機物の感触。今までこっそりマジックを入れてみたりした事もあったけど、コレはつるんとした形ですんなりと中に入り込んできた。
「あっ、すご……っ、どんどん入っちゃう……♡」
膨らんだ部分と括れた部分を交互に通り、その度にお尻の孔が勝手に開閉してしまう。徐々に大きくなる球によって、少しずつ拡げられていく感覚にぞくぞくした。
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