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行為のはじまりはギギからの提案だった。
なにもベルナールはギギを家に連れ帰ってからすぐに彼女と関係を持ったわけではない。
今の、二日と置かず致している状況からするとまったく真実味はないかもしれないが。
とかく、ベルナールにとって、ギギは不具になっても「相棒」のままだった。
「相棒」が困っているなら助ける。それはひととして、騎士として当然のことだと思って、ベルナールは行き場のないギギを家に連れ帰ったわけである。
間違っても、二日と置かずに致すために連れ帰ったわけでは、断じてない。
しかしギギからの提案ですべてが変わった。
ベルナールは健康で健全な成人男性。思春期ほどの狂ったような性欲は鳴りを潜めたものの、やはり平均と比べれば旺盛ではあった。
そして特定の恋人がいないとなれば、性欲を発散させる方法は、己で慰めるか、街頭に立つ娼婦を買うか、娼館に行って娼婦を買うか、のだいたい三択である。
ギギを連れ帰ってから数週間。はじめは自慰でどうにか己のものをなだめていたベルナールだったが、この歳になって、女を知らない身ではない。じき、どうにも我慢が利かなくなってきた。
だが家にはギギがいるので、娼婦を連れ込むわけには行かない。
それくらいの配慮ができるだけの社会性を、ベルナールはそなえていたので、娼婦を買って自宅で致すという選択肢は消えた。
どこぞの宿にしけこむ選択肢もあったが、それならはじめからそういう部屋が備わっている娼館に行くほうが便利だと考えた。
ベルナールはギギには「出かける」とだけ言って夕暮れ時に家を出ると、賑やかな街の一角にある娼館で夜半まで致してから帰宅する、ということをしばらく続けた。
それがギギにバレた。
どうやら通いの女中がギギに言ったらしい。
ギギは戦うこと意外の、たとえば世情には非常に疎く、ベルナールがなにをしに外へ出て、どうして帰りが遅いのかについての真相には、まったく気づいていなかった。
にぶいギギは、ベルナールが外でなにをしていようと気にはしていない様子だったが、しかし繰り返し帰りが遅いとさすがに気にかかったのだろう。
ギギは女中に問うた。
恰幅のよい中年の女中は、もちろんおぼこではないので、ベルナールが外でなにをしているのかなんて知っている。
それを素直にギギに伝えたのだろう。
ベルナールはこの豪快な女中のことは気に入っていたが、今回は余計なことをしてくれたとちょっとだけ恨んだ。
ギギは、娼館へ行こうとするベルナールを呼び止めて、「娼婦を買うにはいくらくらい必要なのか」と問うた。
ベルナールは別に娼館へ行くことに恥ずかしさを覚えているわけではない。
性欲はだれにだってあるもので、きちんと金を払って娼婦を買っているし、誓って買った娼婦に無体を働いたことだってない。
けれどもギギに娼館通いを知られたことに、ベルナールは正体のわからない後ろめたさを覚えた。
だからギギの問いに、混乱も手伝って素直に金額を言った。
ベルナールが買う娼婦の価格帯は、ちょうど真ん中ぐらいだ。安すぎるとどんな病気を持っているのかわからないというのもある。逆に高すぎる娼婦に手を出さないのは、単純にベルナールの稼ぎと性欲では、あっという間に破産してしまうからだ。
しかしギギは、先に述べたとおり世情に疎い。
娼館通いにかかる金額をベルナールが言っても、ぴんとはきていない様子だった。
「わたしで出せば実質タダだ」
だが、しばらく考え込んでいた様子だったギギは、そんなことを言い出した。
ベルナールは仰天した。
「あ、相棒に……?!」
ベルナールはギギが女であることは、当然知っている。
けれどもギギに手を出そうとか、手篭めにしてやろうとかいう考えを持ったことは、一度としてなかった。
「相棒」は「相棒」。ベルナールの中では、そういうことをする対象ではない。
けれどもギギは、目を見開いておどろくベルナールを前に、力強くうなずいた。
「わたしを養っているだけでも金が出て行くのに、娼婦を買えばもっと金が出て行く」
「ま、まあ、そうだが……」
「わたしとすれば、娼婦に使う金が浮く」
ギギは無表情で、無感情的にそう言い放った。
まるでコストカットを提案する主計係のようだとベルナールは思った。
「あ、相棒……」
「なんだ」
「……もし俺に養われていることに後ろめたさを感じているのだったら、体でとか、そんな風に気を遣わなくていい!」
渾身のセリフはしかし、ほかでもない「相棒」であるギギにすぐさま打ち落とされた。
「別に気は遣っていない。ただ金はあるに越したことはないし、節約できるならしたほうがいいと思っただけだ」
ベルナールは公爵に仕える騎士で、そこらの木っ端騎士と比べれば給金は貰っているほうではある。
それでも豪遊し続けられるほどに余裕があるかと問われれば、もちろんそんなことはない。
ギギはずっとベルナールの家にいるので、そのあたりのことを肌感覚として理解しているのだろう。
ベルナールはなにも言えなくなった。
「出せればいいんじゃないのか。それとも娼館にお目当ての女でもいるのか」
「いや……特定の娼婦ばかり選んでいるわけじゃないが……」
ベルナール自身は、己の旺盛すぎる性欲を少し持て余していた。
だから娼館へ行っても出せるものを出すだけ、というある種淡白と言える行為をしている自覚はあった。
女を抱くことを楽しんでいるわけでもない。目当ての女が娼館にいるとか、そういうこともない。
「わたしは不具だが、穴は使えるぞ」
「あ、相棒……その言い方は……」
あんまりにもあんまりなギギの言い方に、聞かされたベルナールのほうが冷や汗をかいて狼狽してしまう。
そもそもの話として、ギギを不具にしたのはベルナールなのだ。
戦場でのことだからと、ベルナールとてあるていど割り切ってはいたものの、それでも「相棒」とまで呼んだ相手を不具にしたことについて、一応思うところはあった。
一方ギギはそんなことはお構いなしとばかりに、ベルナールに畳みかける。
「病気も持っていないし、処女だから締まりはいいと思う」
「あ、相棒……!」
「……それとも、わたしでは不足か」
急にギギの声に弱弱しさが加わったので、ベルナールのほうが取り乱しそうになる。
「そんなことはない!」
「そうか。じゃあ今からやるか」
「え?!」
「これから娼館に行くところだったんだろう。いつまでも待たせるほどわたしは甲斐性なしじゃない」
「え?!」
「出せればいいんじゃないのか」
「あ、相棒に……?!」
「なにごとも試してみなければわからない」
「相棒に……」
結果から言うと、ベルナールはギギで普通に射精した。
ギギに力強く迫られて、半ば強引に流されての行為だったが、普通にその気になって挿入したし、射精した。
それどころかひと晩で一度ならず四度も射精した。
ここのところ仕事が立て込んでおり、娼館へ足を運ぶ暇がなかったから……というのがベルナールの言い訳である。
しかし普通にギギの裸体や痴態に興奮したし、その証拠に四度も射精してベッドシーツとギギの体を精液でおおいに汚した。
はじめは「俺より小さくてロクに抵抗できない相棒とするなんて……!」とか「相棒で射精するなんて……!」などと思っていたベルナールだったが、今では二日と置かずにギギと致している。
ベルナールは普通にギギに夢中になっていた。
ギギの肢体はハッキリ言って貧相だった。
これまでベルナールが抱いてきた女の中で、間違いなく一番貧相だ。
けれどもギギと致しているとき、ベルナールはこれまでの人生で間違いなく一番の快楽を得た。
ベルナールは思った。
――相棒とするのってこんなに気持ちいいのか……! と。
ギギも感覚がにぶいなりにベルナールと致すのを楽しんでいるらしく、それどころか普段は見せない甘えた様子すら見せてくる。
これはベルナールにはてき面だった。
具体的にはちんちんにキた。
そして……二日と置かずに致す現在に至る。
なにもベルナールはギギを家に連れ帰ってからすぐに彼女と関係を持ったわけではない。
今の、二日と置かず致している状況からするとまったく真実味はないかもしれないが。
とかく、ベルナールにとって、ギギは不具になっても「相棒」のままだった。
「相棒」が困っているなら助ける。それはひととして、騎士として当然のことだと思って、ベルナールは行き場のないギギを家に連れ帰ったわけである。
間違っても、二日と置かずに致すために連れ帰ったわけでは、断じてない。
しかしギギからの提案ですべてが変わった。
ベルナールは健康で健全な成人男性。思春期ほどの狂ったような性欲は鳴りを潜めたものの、やはり平均と比べれば旺盛ではあった。
そして特定の恋人がいないとなれば、性欲を発散させる方法は、己で慰めるか、街頭に立つ娼婦を買うか、娼館に行って娼婦を買うか、のだいたい三択である。
ギギを連れ帰ってから数週間。はじめは自慰でどうにか己のものをなだめていたベルナールだったが、この歳になって、女を知らない身ではない。じき、どうにも我慢が利かなくなってきた。
だが家にはギギがいるので、娼婦を連れ込むわけには行かない。
それくらいの配慮ができるだけの社会性を、ベルナールはそなえていたので、娼婦を買って自宅で致すという選択肢は消えた。
どこぞの宿にしけこむ選択肢もあったが、それならはじめからそういう部屋が備わっている娼館に行くほうが便利だと考えた。
ベルナールはギギには「出かける」とだけ言って夕暮れ時に家を出ると、賑やかな街の一角にある娼館で夜半まで致してから帰宅する、ということをしばらく続けた。
それがギギにバレた。
どうやら通いの女中がギギに言ったらしい。
ギギは戦うこと意外の、たとえば世情には非常に疎く、ベルナールがなにをしに外へ出て、どうして帰りが遅いのかについての真相には、まったく気づいていなかった。
にぶいギギは、ベルナールが外でなにをしていようと気にはしていない様子だったが、しかし繰り返し帰りが遅いとさすがに気にかかったのだろう。
ギギは女中に問うた。
恰幅のよい中年の女中は、もちろんおぼこではないので、ベルナールが外でなにをしているのかなんて知っている。
それを素直にギギに伝えたのだろう。
ベルナールはこの豪快な女中のことは気に入っていたが、今回は余計なことをしてくれたとちょっとだけ恨んだ。
ギギは、娼館へ行こうとするベルナールを呼び止めて、「娼婦を買うにはいくらくらい必要なのか」と問うた。
ベルナールは別に娼館へ行くことに恥ずかしさを覚えているわけではない。
性欲はだれにだってあるもので、きちんと金を払って娼婦を買っているし、誓って買った娼婦に無体を働いたことだってない。
けれどもギギに娼館通いを知られたことに、ベルナールは正体のわからない後ろめたさを覚えた。
だからギギの問いに、混乱も手伝って素直に金額を言った。
ベルナールが買う娼婦の価格帯は、ちょうど真ん中ぐらいだ。安すぎるとどんな病気を持っているのかわからないというのもある。逆に高すぎる娼婦に手を出さないのは、単純にベルナールの稼ぎと性欲では、あっという間に破産してしまうからだ。
しかしギギは、先に述べたとおり世情に疎い。
娼館通いにかかる金額をベルナールが言っても、ぴんとはきていない様子だった。
「わたしで出せば実質タダだ」
だが、しばらく考え込んでいた様子だったギギは、そんなことを言い出した。
ベルナールは仰天した。
「あ、相棒に……?!」
ベルナールはギギが女であることは、当然知っている。
けれどもギギに手を出そうとか、手篭めにしてやろうとかいう考えを持ったことは、一度としてなかった。
「相棒」は「相棒」。ベルナールの中では、そういうことをする対象ではない。
けれどもギギは、目を見開いておどろくベルナールを前に、力強くうなずいた。
「わたしを養っているだけでも金が出て行くのに、娼婦を買えばもっと金が出て行く」
「ま、まあ、そうだが……」
「わたしとすれば、娼婦に使う金が浮く」
ギギは無表情で、無感情的にそう言い放った。
まるでコストカットを提案する主計係のようだとベルナールは思った。
「あ、相棒……」
「なんだ」
「……もし俺に養われていることに後ろめたさを感じているのだったら、体でとか、そんな風に気を遣わなくていい!」
渾身のセリフはしかし、ほかでもない「相棒」であるギギにすぐさま打ち落とされた。
「別に気は遣っていない。ただ金はあるに越したことはないし、節約できるならしたほうがいいと思っただけだ」
ベルナールは公爵に仕える騎士で、そこらの木っ端騎士と比べれば給金は貰っているほうではある。
それでも豪遊し続けられるほどに余裕があるかと問われれば、もちろんそんなことはない。
ギギはずっとベルナールの家にいるので、そのあたりのことを肌感覚として理解しているのだろう。
ベルナールはなにも言えなくなった。
「出せればいいんじゃないのか。それとも娼館にお目当ての女でもいるのか」
「いや……特定の娼婦ばかり選んでいるわけじゃないが……」
ベルナール自身は、己の旺盛すぎる性欲を少し持て余していた。
だから娼館へ行っても出せるものを出すだけ、というある種淡白と言える行為をしている自覚はあった。
女を抱くことを楽しんでいるわけでもない。目当ての女が娼館にいるとか、そういうこともない。
「わたしは不具だが、穴は使えるぞ」
「あ、相棒……その言い方は……」
あんまりにもあんまりなギギの言い方に、聞かされたベルナールのほうが冷や汗をかいて狼狽してしまう。
そもそもの話として、ギギを不具にしたのはベルナールなのだ。
戦場でのことだからと、ベルナールとてあるていど割り切ってはいたものの、それでも「相棒」とまで呼んだ相手を不具にしたことについて、一応思うところはあった。
一方ギギはそんなことはお構いなしとばかりに、ベルナールに畳みかける。
「病気も持っていないし、処女だから締まりはいいと思う」
「あ、相棒……!」
「……それとも、わたしでは不足か」
急にギギの声に弱弱しさが加わったので、ベルナールのほうが取り乱しそうになる。
「そんなことはない!」
「そうか。じゃあ今からやるか」
「え?!」
「これから娼館に行くところだったんだろう。いつまでも待たせるほどわたしは甲斐性なしじゃない」
「え?!」
「出せればいいんじゃないのか」
「あ、相棒に……?!」
「なにごとも試してみなければわからない」
「相棒に……」
結果から言うと、ベルナールはギギで普通に射精した。
ギギに力強く迫られて、半ば強引に流されての行為だったが、普通にその気になって挿入したし、射精した。
それどころかひと晩で一度ならず四度も射精した。
ここのところ仕事が立て込んでおり、娼館へ足を運ぶ暇がなかったから……というのがベルナールの言い訳である。
しかし普通にギギの裸体や痴態に興奮したし、その証拠に四度も射精してベッドシーツとギギの体を精液でおおいに汚した。
はじめは「俺より小さくてロクに抵抗できない相棒とするなんて……!」とか「相棒で射精するなんて……!」などと思っていたベルナールだったが、今では二日と置かずにギギと致している。
ベルナールは普通にギギに夢中になっていた。
ギギの肢体はハッキリ言って貧相だった。
これまでベルナールが抱いてきた女の中で、間違いなく一番貧相だ。
けれどもギギと致しているとき、ベルナールはこれまでの人生で間違いなく一番の快楽を得た。
ベルナールは思った。
――相棒とするのってこんなに気持ちいいのか……! と。
ギギも感覚がにぶいなりにベルナールと致すのを楽しんでいるらしく、それどころか普段は見せない甘えた様子すら見せてくる。
これはベルナールにはてき面だった。
具体的にはちんちんにキた。
そして……二日と置かずに致す現在に至る。
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