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学園要塞ー後編ー
4.幸せ、それは君を見つけたこと
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体は石のように横たわり、言葉は砂のように散っていく。日々どこかが摩耗し、風化していくように感じられていたというのに。
君はそんな私を磨き上げて、昔と変わらず美しいと称賛すら口にした。
「笑って駆け回る子どもを見る、微笑ましげな横顔。寒い日に暖炉の前で君と籠った毛布、ブランデー入りのミルクの温かさ。枯れた庭を一心に手入れした君の指先で、ある春に咲いた小さな芽」
岩に囲まれただけの死刑地で。
五感など疾うの昔に失った私の手を引いては一つ、一つ。
世界のすべてが愛おしいのだといわんばかりの君が、言祝ぐのだ。
「こんなにも鮮やかに私の感覚を蘇らせた君が、私の元を離れて……どこへ行こうというのだね」
逃がしてやることなどできようもない。みっともなくとも追いすがり、君を怯えさせようともその身を腕の中に捕らえていたい。
「君を閉じ込めておきたい。こんなにも優秀で、美しい生き物は収蔵庫にしまい込んでおかなければ盗られてしまうだろう……?」
「おや、まるでおもちゃを取られた子どものようだね」
「君は玩具ではない」と憮然として言うと、レイケネスはそうかいと小さく笑う。
「君が私を慕ってくれていることはよく知っている」
「それはそうさ。この世にあなた以上に素敵な人などいないからね」
そっと目を伏せるレイケネスの手を握る。
どれだけ大きくなろうとも、人間の身で私の体躯を越えることはない。いつまでも膝の上にのせ、抱いて散歩に行くことだってできる。私ならば。
「私に向ける視線の熱さ、胸の高鳴り。夜半にしとどに濡れたところを指で慰めているのもだ」
「……待ってくれ。寝室を盗み見られていたということかい」
「無論。君の愛らしい声が聞こえてきたので、気になってな」
赤らんでいく頬や耳に口づけ、綻んでくれないかと期待して唇にもしようとすると手で塞がれる。
「ネージュさん、それはあんまりじゃないかい!?」
「確かに不公平だ」と頷くと丸く息を吐き出し、表情を和らげるのがまた愛らしい。
「気に入らないのであれば、今度私のも見せよう」
「そういうことじゃなくてだね。その、普通は勝手に見たりしないし、自ら見せることもしないんだ。見せ合いも恋人や夫婦でない限りはしない」
「私は可愛らしい君を見るのが好きなのだがね」
「本当にやめてくれ! 俺のプライバシーを守ってくれないかな!?」
どこまで見ているんだと憤って胸ぐらを掴んでくる彼に全てだと答えると、小さな悲鳴を上げて顔を隠されてしまった。
「レイケネス……」
名前を呼ぶと、なんだいと答えてくれるようだったので顔を見せてくれと頼み込む。彼の気を引けるように、声色を調整するのも忘れずに。
「理由は? どうして見たがるんだい」
「恥じらう君は愛らしい」
「絶対に嫌だね」
見せてやるものかと頑なになってしまったレイケネスのこめかみや頭頂部にキスをし、肩や背中を撫でてなんとか見せてもらおうと画策した。
「ネージュさんは俺が嫌がることをしたいのかい」の一言に断念しなければならなかった。
「ならばそのままでいていい。聞きなさい、レイケネス」
むずがるように頭を振るレイケネスに、いけない子だと囁くと頷かれる。
「あなたの期待を裏切るようなことを仕出かして、領民も危険に晒して……俺が、自由に外を歩くあなたを見たいと思ったばかりに」
欲を掻いたせいだと、途絶えそうな声で言うレイケネスの掌の間から零れ落ちるものに眉を寄せた。
「泣かないでおくれ、レイケネス」
君も私との未来を思い描いていてくれた――そのことが知れただけで私の心は震える。
「心の底から君への愛が迸ってくる。私は今、喜んでいるのだ」
「けれど、あなたは俺といて……この世に絶望していたと」
手が離れて、レイケネスの宝石のような青い瞳が現れる。
濡れた眦に唇を触れさせて涙を受け止めると、首に腕が回ってきた。
「そのようなこと、誰に聞いたんだね」
「王子と話していただろう。ドーリーの伝達間違えかい? 可哀想に、泣いていたんだからな」
「ああ……君が寿命で亡くなったら、自動的に私も追随できるような魔法を研究しようかと思っていたのだよ」
君がいない世界など面白くもなんともないからねと言うと、レイケネスの長い睫で囲われた目が瞬く。
「禁書など幾ら奪われようと、失くそうと構わない。それで悪事を働く者がいたとて、君を害さなければそれでいいのだ」
「それでは俺がほう助罪か、共謀罪になってしまうんじゃないか」
「私は君が世界を滅ぼしても許せるが」
真面目くさって言うと、体を離したレイケネスは「俺が嫌だよ」と小さく笑った。その顔の、なんと可愛いらしいことか。
「それで、返事を聞かせてくれないだろうか」
彼の顔の前で手を包み込み、祈るように唇を寄せると瞳が揺れる。
「同じ時を生きると誓うので、君にも同じ気持ちを返してもらいたいのだが」
ほんのりと肌を染めたレイケネスが小さく頷く。白い瞼を伏せて、口が開かれる。
「あなたに見初められるだなんて、こんな幸福があっていいのか……率直に言うと恐れ多くて逃げ出してしまいたいところなんだが」
「それは困る」
「だろうね。あなたの泣きそうな顔には弱いんだ」
なにせ惚れこんでいるからねと、音もなく微笑んだレイケネスが背伸びをして頬に唇を押し当ててきた。
「共に生きよう、ネージュさん」
が目の前でこの節だった手でとろとろと蜜の溢れるところを撫でているの自慰だおておき。怖がって中には指を入れられないのがまたのだんあbくる
君はそんな私を磨き上げて、昔と変わらず美しいと称賛すら口にした。
「笑って駆け回る子どもを見る、微笑ましげな横顔。寒い日に暖炉の前で君と籠った毛布、ブランデー入りのミルクの温かさ。枯れた庭を一心に手入れした君の指先で、ある春に咲いた小さな芽」
岩に囲まれただけの死刑地で。
五感など疾うの昔に失った私の手を引いては一つ、一つ。
世界のすべてが愛おしいのだといわんばかりの君が、言祝ぐのだ。
「こんなにも鮮やかに私の感覚を蘇らせた君が、私の元を離れて……どこへ行こうというのだね」
逃がしてやることなどできようもない。みっともなくとも追いすがり、君を怯えさせようともその身を腕の中に捕らえていたい。
「君を閉じ込めておきたい。こんなにも優秀で、美しい生き物は収蔵庫にしまい込んでおかなければ盗られてしまうだろう……?」
「おや、まるでおもちゃを取られた子どものようだね」
「君は玩具ではない」と憮然として言うと、レイケネスはそうかいと小さく笑う。
「君が私を慕ってくれていることはよく知っている」
「それはそうさ。この世にあなた以上に素敵な人などいないからね」
そっと目を伏せるレイケネスの手を握る。
どれだけ大きくなろうとも、人間の身で私の体躯を越えることはない。いつまでも膝の上にのせ、抱いて散歩に行くことだってできる。私ならば。
「私に向ける視線の熱さ、胸の高鳴り。夜半にしとどに濡れたところを指で慰めているのもだ」
「……待ってくれ。寝室を盗み見られていたということかい」
「無論。君の愛らしい声が聞こえてきたので、気になってな」
赤らんでいく頬や耳に口づけ、綻んでくれないかと期待して唇にもしようとすると手で塞がれる。
「ネージュさん、それはあんまりじゃないかい!?」
「確かに不公平だ」と頷くと丸く息を吐き出し、表情を和らげるのがまた愛らしい。
「気に入らないのであれば、今度私のも見せよう」
「そういうことじゃなくてだね。その、普通は勝手に見たりしないし、自ら見せることもしないんだ。見せ合いも恋人や夫婦でない限りはしない」
「私は可愛らしい君を見るのが好きなのだがね」
「本当にやめてくれ! 俺のプライバシーを守ってくれないかな!?」
どこまで見ているんだと憤って胸ぐらを掴んでくる彼に全てだと答えると、小さな悲鳴を上げて顔を隠されてしまった。
「レイケネス……」
名前を呼ぶと、なんだいと答えてくれるようだったので顔を見せてくれと頼み込む。彼の気を引けるように、声色を調整するのも忘れずに。
「理由は? どうして見たがるんだい」
「恥じらう君は愛らしい」
「絶対に嫌だね」
見せてやるものかと頑なになってしまったレイケネスのこめかみや頭頂部にキスをし、肩や背中を撫でてなんとか見せてもらおうと画策した。
「ネージュさんは俺が嫌がることをしたいのかい」の一言に断念しなければならなかった。
「ならばそのままでいていい。聞きなさい、レイケネス」
むずがるように頭を振るレイケネスに、いけない子だと囁くと頷かれる。
「あなたの期待を裏切るようなことを仕出かして、領民も危険に晒して……俺が、自由に外を歩くあなたを見たいと思ったばかりに」
欲を掻いたせいだと、途絶えそうな声で言うレイケネスの掌の間から零れ落ちるものに眉を寄せた。
「泣かないでおくれ、レイケネス」
君も私との未来を思い描いていてくれた――そのことが知れただけで私の心は震える。
「心の底から君への愛が迸ってくる。私は今、喜んでいるのだ」
「けれど、あなたは俺といて……この世に絶望していたと」
手が離れて、レイケネスの宝石のような青い瞳が現れる。
濡れた眦に唇を触れさせて涙を受け止めると、首に腕が回ってきた。
「そのようなこと、誰に聞いたんだね」
「王子と話していただろう。ドーリーの伝達間違えかい? 可哀想に、泣いていたんだからな」
「ああ……君が寿命で亡くなったら、自動的に私も追随できるような魔法を研究しようかと思っていたのだよ」
君がいない世界など面白くもなんともないからねと言うと、レイケネスの長い睫で囲われた目が瞬く。
「禁書など幾ら奪われようと、失くそうと構わない。それで悪事を働く者がいたとて、君を害さなければそれでいいのだ」
「それでは俺がほう助罪か、共謀罪になってしまうんじゃないか」
「私は君が世界を滅ぼしても許せるが」
真面目くさって言うと、体を離したレイケネスは「俺が嫌だよ」と小さく笑った。その顔の、なんと可愛いらしいことか。
「それで、返事を聞かせてくれないだろうか」
彼の顔の前で手を包み込み、祈るように唇を寄せると瞳が揺れる。
「同じ時を生きると誓うので、君にも同じ気持ちを返してもらいたいのだが」
ほんのりと肌を染めたレイケネスが小さく頷く。白い瞼を伏せて、口が開かれる。
「あなたに見初められるだなんて、こんな幸福があっていいのか……率直に言うと恐れ多くて逃げ出してしまいたいところなんだが」
「それは困る」
「だろうね。あなたの泣きそうな顔には弱いんだ」
なにせ惚れこんでいるからねと、音もなく微笑んだレイケネスが背伸びをして頬に唇を押し当ててきた。
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