不遇の王妃アリーヤの物語

ゆきむらさり

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本編

2.両国の政略結婚

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 国と国同士の政略結婚はよくある話。


 クラウン王国とアメジスト王国の両大国が婚姻により、より強固な同盟関係を結び、互いの領土を侵さないとの合意に至る。よって、クラウン王国の国王カルロスの元へとアメジスト王国の嫡女アリーヤが輿入れすることが決まる。


 先に政略結婚を持ち掛けたのはアメジスト王国の厳格な国王イーサン。

 実は「或る事情」により、嫡女である王女アリーヤの婚姻を急ぐ必要に迫られ、クラウン王国へと政略結婚を持ち掛ける。

 最初こそは渋る国王カルロスだが、利害関係の一致から婚姻を承諾。

 アメジスト王国は潤沢な貴石が採れる鉱山を持つことで有名。それを踏まえ、国王イーサンは王女アリーヤの持参金に破格の額を提示する。

 重鎮達も王国間での同盟を結ぶこと賛成の意を唱える。

 嘗ては争ったこともある両大国だからこそ、政略結婚を機に不可侵条約を結び、この先は無用な争いを回避し、「自国の発展と平和にこそ心血を注ぐべき」との意見。

 だが、それが上手くいくかどうかは誰にも予測はつかない。


 ◇


 クラウン王国の国王カルロスには、将来を約束した幼馴染の美姫ベリンダがいる。すでに彼女は王宮へと住まいを移し、国王カルロスと内々婚も結び、〈初夜の儀〉までも済ませている。

 一方のアメジスト王国の王女アリーヤの心中は穏やかとは程遠く複雑。婚姻そのものを嫌がり、逃亡まで企てる。

 非情な父王イーサンの怒りを買い、クラウン王国への輿入れまでの間は〈貴族牢〉へと監禁までされる王女アリーヤがいる。

 それでも逃げようとした王女アリーヤ。

 手段を選ばない国王イーサンは、一国の王女として生まれた「立場」と「義務」と「矜持」をわからせる意味でも王女アリーヤを追い込む。

 無情な罰を与える。

 一国の王としての非情な国王イーサンの取った行動はあまりにも無慈悲で、純真無垢な王女アリーヤを打ちのめすには充分。

 この時、王女アリーヤの心はすでに崩壊。


 その後、泣く泣く輿入れする王女アリーヤを国王カルロスは知らない。

 知らないからこそ、消え入りそうなほどに儚げな王女アリーヤを目にした途端、一瞬にして心を奪われる国王カルロスがいる。

 誰も知らない国王カルロスの恋情。


 人の想いは複雑。


 ままならないからこそ焦がれるのかもしれない。






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