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離宮編
16.愛する人との逢瀬に泣く王妃
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愛するディランに抱かれながら彼の首元へと手を回し、必死に縋りつく王妃アリーヤ。
ひたすら激しく咽び泣く。
これまで蓄積された感情が一気に解放され、普段の物静かな王妃アリーヤからは想像もできないほどに泣きじゃくる。
どうにも感情が抑えられない。
王妃アリーヤは愛するディランの胸の中へと顔を埋め、今度は嗚咽を始める始末。
「俺のアリーヤは泣き虫さんだね?」
王妃アリーヤの背を幾度も優しく撫で付けるディラン。
「アリーヤ……もう大丈夫だから……」
王妃アリーヤを包み込むように抱き、その美しい濡羽色の髪へと口付けを落とすディラン。加え、彼女の左耳に嵌まる〈水宝玉〉の耳輪を認めれば、自然と柔らかな笑みさえ零す。
「俺のアリーヤ……君を心から愛している。逢いたかったよ、俺の唯一のつがい」
王妃アリーヤに嵌る〈水宝玉〉の耳輪にそっと触れるディラン。呪いのかけられた耳輪は、王妃アリーヤの耳からは絶対に外れることはない。
その刹那、リィーンっ……と微かな音が響くも、その微音を聞き分けられるのは、耳輪の正統な持ち主であるディランだけ。
王妃アリーヤは知らないが、この〈水宝玉〉の耳輪は互いに共鳴し合う。もう片輪はディランの右耳にも嵌り、共鳴し合うおかげで互いの居所を明らかにし、そして引き合う。
だからこそ、王妃アリーヤへと授けたディラン。
何処へ行こうとも愛する者の痕跡を辿れるようにとの思いから、王妃アリーヤへと授けたディラン。
「アリーヤは俺の唯一無二の存在だ。俺はこの清らかな花が愛おしくてたまらない」
ディランは一層の笑みを湛える。
◇
「ディラン、貴方は亡くなったとジェームスが……だから私は……」
愛するディランの元へと行く為に、自らの命を断とうとした王妃アリーヤ。胸が詰まる。
ーーー信じられない……。
ディランの頬へと手を遣る王妃アリーヤは、目の前の人物が幻ではないことを確かめる。
「温かい……本当にディランなのね?」
確かに感じる生身の人間の体温。
王妃アリーヤの手の平にはディランの肌の温もりが伝わる。
ーーー夢ではなく現実なのね?
「嗚呼っー……!!」
王妃アリーヤが再び声を上げて涙を溢れさせる。一度箍が外れてしまえば、堰を切ったように泣きじゃくる。
「アリーヤ……言っただろう? 俺は脆弱な人間とは違い、そう容易くは死なないと……俺は確かにここにいる。アリーヤの側いる。俺たちはこれからもずっと一緒だ。愛しいアリーヤ……だから、共に生きよう」
こくりっと頷く王妃アリーヤ。
「……もう離しはしない」
王妃アリーヤをきつく抱き締めるディラン。
しばらくの逢瀬を堪能する2人。
これ以上の言葉はいらない。
◇
しばらくしたのち、ディランへと言葉を掛ける者がいる。
「我が主……全ての準備は整いました。急ぎ此の場を離れましょう」
気配すら感じさせずに控える侍女マイラはディランへと進言する。
「マイラ、貴女はいったい……」
何故マイラが……と不思議に思う王妃アリーヤへと笑みを湛えるディランは告げる。
「愛しいアリーヤ……今は眠っておいで……」
王妃アリーヤの顔に手を翳すディラン。それにより紫水晶の瞳が強引に閉じられる王妃アリーヤは意識を保てなくなり、すぐに深い眠りへと落ちる。
「マイラ……アリーヤと共に帰国する」
「はっ!」
王妃アリーヤを外衣で包み、しっかりと抱きかかえるディランは、侍女マイラと共に颯爽と此の場を後にする。
その後。
すぐさま放たれた日により燃え盛る〈離宮〉。寝台の上には、王妃アリーヤ当人そっくりに造られた形代が燃え盛る業火に包まれ、誰とも判別出来ない。
王妃アリーヤは、間違いなく〈離宮〉の火災により命を落としたのである。
ひたすら激しく咽び泣く。
これまで蓄積された感情が一気に解放され、普段の物静かな王妃アリーヤからは想像もできないほどに泣きじゃくる。
どうにも感情が抑えられない。
王妃アリーヤは愛するディランの胸の中へと顔を埋め、今度は嗚咽を始める始末。
「俺のアリーヤは泣き虫さんだね?」
王妃アリーヤの背を幾度も優しく撫で付けるディラン。
「アリーヤ……もう大丈夫だから……」
王妃アリーヤを包み込むように抱き、その美しい濡羽色の髪へと口付けを落とすディラン。加え、彼女の左耳に嵌まる〈水宝玉〉の耳輪を認めれば、自然と柔らかな笑みさえ零す。
「俺のアリーヤ……君を心から愛している。逢いたかったよ、俺の唯一のつがい」
王妃アリーヤに嵌る〈水宝玉〉の耳輪にそっと触れるディラン。呪いのかけられた耳輪は、王妃アリーヤの耳からは絶対に外れることはない。
その刹那、リィーンっ……と微かな音が響くも、その微音を聞き分けられるのは、耳輪の正統な持ち主であるディランだけ。
王妃アリーヤは知らないが、この〈水宝玉〉の耳輪は互いに共鳴し合う。もう片輪はディランの右耳にも嵌り、共鳴し合うおかげで互いの居所を明らかにし、そして引き合う。
だからこそ、王妃アリーヤへと授けたディラン。
何処へ行こうとも愛する者の痕跡を辿れるようにとの思いから、王妃アリーヤへと授けたディラン。
「アリーヤは俺の唯一無二の存在だ。俺はこの清らかな花が愛おしくてたまらない」
ディランは一層の笑みを湛える。
◇
「ディラン、貴方は亡くなったとジェームスが……だから私は……」
愛するディランの元へと行く為に、自らの命を断とうとした王妃アリーヤ。胸が詰まる。
ーーー信じられない……。
ディランの頬へと手を遣る王妃アリーヤは、目の前の人物が幻ではないことを確かめる。
「温かい……本当にディランなのね?」
確かに感じる生身の人間の体温。
王妃アリーヤの手の平にはディランの肌の温もりが伝わる。
ーーー夢ではなく現実なのね?
「嗚呼っー……!!」
王妃アリーヤが再び声を上げて涙を溢れさせる。一度箍が外れてしまえば、堰を切ったように泣きじゃくる。
「アリーヤ……言っただろう? 俺は脆弱な人間とは違い、そう容易くは死なないと……俺は確かにここにいる。アリーヤの側いる。俺たちはこれからもずっと一緒だ。愛しいアリーヤ……だから、共に生きよう」
こくりっと頷く王妃アリーヤ。
「……もう離しはしない」
王妃アリーヤをきつく抱き締めるディラン。
しばらくの逢瀬を堪能する2人。
これ以上の言葉はいらない。
◇
しばらくしたのち、ディランへと言葉を掛ける者がいる。
「我が主……全ての準備は整いました。急ぎ此の場を離れましょう」
気配すら感じさせずに控える侍女マイラはディランへと進言する。
「マイラ、貴女はいったい……」
何故マイラが……と不思議に思う王妃アリーヤへと笑みを湛えるディランは告げる。
「愛しいアリーヤ……今は眠っておいで……」
王妃アリーヤの顔に手を翳すディラン。それにより紫水晶の瞳が強引に閉じられる王妃アリーヤは意識を保てなくなり、すぐに深い眠りへと落ちる。
「マイラ……アリーヤと共に帰国する」
「はっ!」
王妃アリーヤを外衣で包み、しっかりと抱きかかえるディランは、侍女マイラと共に颯爽と此の場を後にする。
その後。
すぐさま放たれた日により燃え盛る〈離宮〉。寝台の上には、王妃アリーヤ当人そっくりに造られた形代が燃え盛る業火に包まれ、誰とも判別出来ない。
王妃アリーヤは、間違いなく〈離宮〉の火災により命を落としたのである。
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