新しい家族は保護犬きーちゃん

ゆきむらさり

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保護犬ちゃん・譲渡編

8話 簡単にはいかない

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保護団体の方は若い女性の人で、見るからに感じが良い。この先は「保護団体のお姉さん」と呼ぶことにする。彼女との面談を交えたご対面の場。

(……可愛いなぁ。この子がうちの子になるんだね)

白と薄茶色のチワワちゃん。背中には左右に同じような模様のぶちがある。両翼の模様に「まるで天使の羽根のようだ」と思わずほっこり。

(やっぱり……この子だ。この子が良いよ)

“うちの子になるチワワちゃん”

途中まではそう信じて疑わない私。

旦那様と2人で顔が綻ぶ。保護犬ちゃんを見ては「可愛い、可愛い……」と連呼のオンパレード。対し、「何だ……この人間は?」みたいな不安気な表情の保護犬ちゃん。目をチラチラと泳がせては落ち着かない。

可愛い保護犬ちゃんを嬉しそうに見る私達夫婦。だけど、対照的な様子の保護犬ちゃん。ずっとオドオドと怯えた様子のまま。おかげで触れることはしないで、近くで見つめるだけ。それだけでも今は充分。

「本当に可愛い子だよね? 私ね、やっぱり此の子が良いなぁ」

旦那様にも同意を求める。犬好きの彼も「そうだね」と頷く。

改めて、私はこの子を引き取れるものだと信じて疑わない。だが、想いとは裏腹に今の現実を突き付けられる。

保護犬団体のお姉さんがさらりと告げる。

「実は〇〇様の前になりますが、既に2組のご夫婦にもお越し頂いているんですよ」

えっ?! 私達夫婦だけではない?

正直、その言葉に驚いた私。私達夫婦以外にも引き取りたいと望む家族がいることを、全く念頭に入れていなかったのだ。

ご対面=譲渡だとばかり勘違いしていた私。

「あの……それはつまり……」

「今の段階では……何処の御家族に譲渡するとかしないとか、そういう段階ではありません。あくまでも面談と対面のみです。まだ何も決まっておりません。どうか先走らないようにお願い致します」

ガーッン……そんな擬音が頭に響く。

更にはダメ押しの言葉さえ言ってくれる保護団体のお姉さん。

「今日は……他にも何組か面談に見えているんです。私は皆様の様子を見させて頂きましたので、その中のどなたか家族の皆様に、という形でお願いすることになります」

マジかっ! うちだけではないんだ!

まさに晴天の霹靂。対面イコール引き取りだと思っていた私。他にも面談を申し込んでいる家族がいるとは、全く思っていなかった。短絡的過ぎたようだ。

絶対にうちの子になる……とは限らないとは云う現実に直面。その事実にかなりショックな私。

(こんなに、こんなに可愛いのに……私の一目惚れだったのに……うちの子にはならない?!)

どうしよう? 諦められるのか?

それが問題だ。想いは複雑。








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