17 / 37
保護犬ちゃん・トライアル編
17話 それだけでも嬉しい
しおりを挟む
一筋縄ではいかない保護犬のきーちゃん。初日から信用されるとは思ってはいないが、水も飲まないのはマズい。同時に、きーちゃんがそこまで怯えることに胸が痛む。
保護以前、繁殖犬として悪徳業者の元に居たきーちゃん。過去に悲惨な目に遭ったからこそ、人間を恐れ、怖がるのだ。心底怖いのだ。しかも、手を差し出すだけで体を震わせるのは、虐待を受けていた可能性もある。もしかしたら、ただ従わせる為だけに日常的に叩かれていたのかもしれない。そうでなければ、この怖がりようは説明がつかない。あくまでも私の憶測だが……。
きーちゃんにとっての人間の手は、「自分を叩く為にある」と思っているのかもしれない。
現に、体を震わせ、威嚇したまま仁王立ち。
「これ以上は怖がらせるだけだよね……」
再び、犬用ゲージを布で覆い。そっとしておくことにする。手付かずのドックフードとお水は、そのまま置いておく。
「せめて……お水だけでも飲んで欲しいね」
半ば祈るように待つ。ひたすら待つ。そしてようやくだ。流石に喉が渇いたのか、犬用ゲージの中からはぴちゃぴちゃと水を飲む音が聞こえる。
「今の聞いた? きーちゃんがお水飲んでくれているよね? しかも自分から……!」
嬉しくて声が震える。頷く旦那様。
「うん、飲んでいるね。良かったね」
「だよね? 良かったぁ! きーちゃんがお水を飲んでくれたよ! 本当に良かった……」
たったそれだけの事なのに、嬉しくて嬉しくて堪らない私。
きーちゃんにとっては見ず知らずの家。それでも少しぐらいは安心してくれたのかもしれない。
お水飲むのもご飯を食べるのも、生きる為には普通のこと。食欲は犬の本能だとも聞く。抗えない欲求であるはずの食欲にすら抵抗するきーちゃんには、新しい里親宅が安穏の地かはわからない。もしかしたら怒られる可能性もある。
そんな想いでいたのかもしれない……そう思うと居た堪れない。
当たり前のことが当たり前に出来ない今のきーちゃんだからこそ、たった僅かな水でも飲んでくれたことが嬉しい。涙が出る。
些細な事だけど一歩前進。しかも、ほんのちょっとだけだがご飯も食べている。それが、泣ける程に嬉しかったことを今でも鮮明に覚えている。忘れない。
きーちゃんとの信頼を作る日々は、まだまだ始まったばかり。これからだ。
頑張るぞ……!
そうした中、私は子供ときーちゃんを連れて実家へと帰省する。
保護以前、繁殖犬として悪徳業者の元に居たきーちゃん。過去に悲惨な目に遭ったからこそ、人間を恐れ、怖がるのだ。心底怖いのだ。しかも、手を差し出すだけで体を震わせるのは、虐待を受けていた可能性もある。もしかしたら、ただ従わせる為だけに日常的に叩かれていたのかもしれない。そうでなければ、この怖がりようは説明がつかない。あくまでも私の憶測だが……。
きーちゃんにとっての人間の手は、「自分を叩く為にある」と思っているのかもしれない。
現に、体を震わせ、威嚇したまま仁王立ち。
「これ以上は怖がらせるだけだよね……」
再び、犬用ゲージを布で覆い。そっとしておくことにする。手付かずのドックフードとお水は、そのまま置いておく。
「せめて……お水だけでも飲んで欲しいね」
半ば祈るように待つ。ひたすら待つ。そしてようやくだ。流石に喉が渇いたのか、犬用ゲージの中からはぴちゃぴちゃと水を飲む音が聞こえる。
「今の聞いた? きーちゃんがお水飲んでくれているよね? しかも自分から……!」
嬉しくて声が震える。頷く旦那様。
「うん、飲んでいるね。良かったね」
「だよね? 良かったぁ! きーちゃんがお水を飲んでくれたよ! 本当に良かった……」
たったそれだけの事なのに、嬉しくて嬉しくて堪らない私。
きーちゃんにとっては見ず知らずの家。それでも少しぐらいは安心してくれたのかもしれない。
お水飲むのもご飯を食べるのも、生きる為には普通のこと。食欲は犬の本能だとも聞く。抗えない欲求であるはずの食欲にすら抵抗するきーちゃんには、新しい里親宅が安穏の地かはわからない。もしかしたら怒られる可能性もある。
そんな想いでいたのかもしれない……そう思うと居た堪れない。
当たり前のことが当たり前に出来ない今のきーちゃんだからこそ、たった僅かな水でも飲んでくれたことが嬉しい。涙が出る。
些細な事だけど一歩前進。しかも、ほんのちょっとだけだがご飯も食べている。それが、泣ける程に嬉しかったことを今でも鮮明に覚えている。忘れない。
きーちゃんとの信頼を作る日々は、まだまだ始まったばかり。これからだ。
頑張るぞ……!
そうした中、私は子供ときーちゃんを連れて実家へと帰省する。
51
あなたにおすすめの小説
Web小説のあれやこれ
水無月礼人
エッセイ・ノンフィクション
沢山の小説投稿サイトが存在しますが、作品をバズらせるには自分と相性が良いサイトへ投稿する必要が有ります。
筆者目線ではありますが、いくつかのサイトで活動して感じた良い所・悪い所をまとめてみました。サイト選びの参考になることができたら幸いです。
※【エブリスタ】でも公開しています。
100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて
ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】初めてアルファポリスのHOTランキング1位になって起きた事
天田れおぽん
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスのHOTランキング一位になった記念のエッセイです。
なかなか経験できないことだろうし、初めてのことなので新鮮な気持ちを書き残しておこうと思って投稿します。
「イケオジ辺境伯に嫁げた私の素敵な婚約破棄」がHOTランキング一位になった2022/12/16の前日からの気持ちをつらつらと書き残してみます。
情報弱者の物書きの駄文─24ptやインセンティブ、小説の書き方からGeminiくんの活用なんかについて─
河野彰
エッセイ・ノンフィクション
日々小説を書いていないと生きていられない物書きです。
目指すは小説でおやつが買えるくらいになること。
あと最近Gemini君と仲良しなのでその話をつらつらしていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる