新しい家族は保護犬きーちゃん

ゆきむらさり

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保護犬きーちゃん・帰省編

21話 きーちゃんと大胆な母の得策

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娘っ子には恐れ入るが、大胆な母にも恐れ入る。

帰省先の実家でも、犬用ゲージの中からは一向に出ては来ないきーちゃん。息を潜めている。ただ、我が家の時とは違うのが、帰省先の実家には保護犬ちゃんが2匹いる。

流石はワンコちゃん同士と云うべきか?

2匹の保護犬ちゃん達は遠慮することなく、きーちゃんのゲージの中へと入って行く。ビビりながらも受け入れているきーちゃん。

「おい、おまえ……新入りか? よろしくな」

そんな会話でもしているのだろうか? 

何度も出たり入ったりしている保護犬ちゃん2匹は、きーちゃんへと鼻を付けては臭いのチェック。互いに臭いを嗅ぎ合い、ご挨拶。



* * * * * * * * 


ちょいと此処で余談。

きーちゃんを譲渡してもらった保護団体は、先住犬がいる家には譲渡はしない。保護犬ちゃんだけを可愛がってくれる環境を推奨しているからだ。

里親になる人全てが良い人とは限らない。良い人もいれば悪い人もいる。そのせいで先住犬との折り合いが悪いからと言って「要らない」と保護犬ちゃんを突き返す里親もいれば、捨ててしまう里親までいたらしい。やるせない。

有り難いことに、実家のワンコちゃん達は皆が仲良く、しかもウチのワンコちゃん達をも受け入れてくれている。

優しい人達に囲まれて育つワンコちゃん達は優しいのかもしれない。

そのおかげで、新参者のきーちゃんでも虐められることなく、実家の保護犬ハッサクちゃんとミカンちゃんに受け入れてもらえたよ。良かった。良かった。



* * * * * * * *


話しは戻る。

前にも説明したが、保護団のお姉さんからは、きーちゃんが慣れるまでは犬用ゲージは布で覆い、きーちゃんの平穏を保つように言われている。勿論、そうする私。ただ、これまで多くのワンコちゃんを家族に迎え入れてきた母は違う。豪快で豪胆。思いもよらない行動に打って出る。

「きーちゃんのゲージを布でずっと覆うのは可哀想だよ。いくら慣れていなとは言っても、きーちゃんだってお外が見たいはずだよ。人間だって……ずっと目隠しをされていたら嫌でしょう?」

「まぁ……確かに、そうなんだけど……」

それも一理ある。

そう思いながらも保護団体のお姉さんにも言われているせいで「どうしようか……」と悩む私に悩まない母。

「可哀想だから取っちゃうよ」

そう言って、犬用ゲージを覆う布を取っ払ってしまう母。

「……ええっ?!」

驚く私に、もっとびっくりなきーちゃん。

「あらっ、あらっ、きーちゃん……こんにちは。暗かったよね? どう、コレで良く見えるよね? 我が家は大丈夫だからね。安心してね、きーちゃん」

母はきーちゃんへとご挨拶。少々、心許ない様子のきーちゃん見れば、代わりにかまくら型の犬用ベッドを置く。一目散に入るきーちゃん。当然だよ。

ただね、意外なことも。広いかまくらの寝床で、くつろぐきーちゃんの姿が見れた。体を伸ばしては、ぽてっと倒れるように寝ている姿が可愛い。これは堪らない。

「……ほらね? くつろいでいるでしょう? 寝床も広い方がきーちゃんも楽チンだし、布で覆わない方が視界も明るくて気持ち良いはずだよ」

母、恐るべし。



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