新しい家族は保護犬きーちゃん

ゆきむらさり

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保護犬きーちゃん・日常編①

24話 きーちゃんの食欲と病の発症

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月日が経てば慣れるもの。

あれ程に怯え、犬用ゲージから出ることのなかったきーちゃん。今や、びびりちゃんだった頃はどこ吹く風。我が家にもすっかり慣れたきーちゃん。食べる事と娘っ子が大好き。

さて、最近のきーちゃんだが、どうやら主食のドックフードに飽きてきた様子。あまり食べない。しまいには断固として拒否をし、お皿に入るドックフードをそこら中に撒き散らす。

ある日、獣医さんが教えてくれた。

「ワンちゃんは意外と風味にめざといんですよ。特に小型犬になればなるほど風味が落ちると飽きやすかったり、味が落ちた物は好まない傾向にあったりします。困った小型犬ちゃんですね。大型犬はそうでもないのですが……」

笑いながら告げる獣医さん。

なるほど……な私。

全く其の通りで、きーちゃんは保護団体のお姉さんから頂いたドックフードに飽きてきたらしい。その為、獣医さんが勧めるワンコ用のご飯を手作りすることにした。それは実家の保護犬ちゃん達も食しているもので、母に作り方を教えてもらい、それをきーちゃんにもあげることにしたよ。

此処で、ワンコ用の手作りご飯の補足。

それは炊いたご飯に、蒸したさつま芋と茹でた鶏のササミを細切れにして軽く混ぜ合わせ物。さつま芋の甘みが美味しいらしく、良く食べるきーちゃん。それを見せると喜んで走ってくる。

手作りご飯を乗せたドックフードも「しょうがないなぁ……食べてやるよ」とでも言いたげな顔で、食べてくれるようにはなったよ。

元気に食べる姿。それを見られる幸せ。

ただね、皮肉なもので、食べる事が大好きなきーちゃんが、原因不明の胃腸障害を患い、食事制限をされることになったの。まだ2歳。食べたい盛り。それなのに胃腸の病気を患うとは何の因果か。



* * * * * * * *


突然のことだったよ。

きーちゃんは1日に何度も下痢を繰り返す。お腹を下しながら「キューン……」と鳴くんだよね。目が離せない程に何度も何度も下痢を繰り返す。

次の日も下痢を繰り返す。やっぱり「キューン……」と鳴くんだよね。多分、辛いんだろうね。常にオシッコシートを手元に置き、1人にはさせないように気を配る。側に付いていないと家中が大変な事になり、きーちゃんも下痢塗れ。

さすがに2日も続くと此方も焦る。

早速、動物病院で色々と検査を受けたけど、結局のところ、原因は分からない。原因が分からないと治療方も分からない。とりあえず対処療法で色々と薬を試し、その中で唯一抗生物質薬だけが効いたの。それを飲まないと直ぐに下痢を起こす。だから、今でも抗生物質薬は欠かせず毎日飲み、一生病院通い。

犬用の手作りご飯は禁止にされ、しかも獣医さんに言われた消化器サポート(低脂肪)のドックフードが主食。あまり食べたがらないきーちゃん。

どうしたものか……と獣医さんに聞けば、必ず答えを返してくれる。此方の疑問には、常に親切丁寧に応えてくれる獣医さんには感謝。

「低脂肪のドックフードというのは旨みをギュッと搾りに搾って、美味しさを省いてあるんです。全てを省いて作られているので美味しさのカケラもありません。むしろ不味い。不味いので……食べたがらないのは当然ですね」

あっけらかんと告げる獣医さん。

「なるほど……だからなんですね?」

納得の私。

きーちゃんは食べが悪い。むしろ食べない。色々と試行錯誤の結果、無添加でワンコの体に負担のない犬用お肉を買い、それを少しだけドックフードに乗せることにしたよ。ようやく食べてくれたきーちゃん。



* * * * * * * *


保護犬のきーちゃんが、完治しない胃腸の病気に罹ったのは、我が家へと来て、ちょうど1年ぐらい経った頃。食べる事が大好きなきーちゃんには思ってもみない不運。

保護されるまではひもじい思いをしていたきーちゃんだからこそ、これからは思う存分食べれるかと思いきや、食事制限という皮肉。

本来、ワンコちゃんの主食はドックフード。色々な物を食べる必要はないのかもしれない。ただ、「自分で食べない」のと「食べさせてもらえない」とでは意味合いが違う。

食べたくて食べたくて……仕方がないきーちゃん。とうとう怒ったね。おかげで自分の尻尾を噛んだりと自傷行為に走ったよ。

要は、あれだ。激オコなきーちゃん。

これには参った。





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