新しい家族は保護犬きーちゃん

ゆきむらさり

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保護犬きーちゃん・日常編①

25話 感情豊かなきーちゃん

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食べる事が大好きなきーちゃん。食欲はワンコの本能でもあるとすれば、それが制限されたとなれば……そりぁね、ワンコちゃんだって怒るよね。

当然、食いしん坊のきーちゃんも怒る。

勿論、激オコきーちゃんの自傷行為はやるせない。ただね、その前にちょいと「きーちゃんの感情の芽生え」のお話。

以前は、人間不信でビビりだったきーちゃん。

これがまた、びっくりするぐらい怒るの。怒り方が半端ない。ただね、以前に居たチワワのピースちゃんは大人しい子だったから、きーちゃんの感情の豊かさには、実は嬉しかったりもするんだよ。

勿論、それは自傷行為の方ではなくて、物に当たり散らすきーちゃんの堂々とした怒りっぷり。

クッションや毛布、それに自分のぬいぐるみまでも爪で引っ掻いたり、噛みついては振り回し、挙句の果てにはボロボロに噛みちぎってしまう威勢の良いきーちゃん。特に、自分の寝床である犬用ベッドは容姿なく噛みちぎって、中の綿まで出しちゃう始末。幾つも犬用ベッドは買い直したよ。その暴れっぷりに腹が立つどころか笑いが込み上げる始末。

怒りっぷりが半端なくて可愛いの。

旦那様も笑いながら赤ちゃん言葉。まるであやす様に言う。

「こらっ、きーちゃん。駄目でちゅよ。悪戯したのは誰だ? きーちゃんでちゅか?」

言い方が甘い甘い。

きーちゃんには皆んなが甘い。誰も怒らない。もう、ここまで来ると痘痕あばたえくぼ状態。

そう、不思議とね。きーちゃんがおイタをしても全く怒りが湧かないの。それすらも愛おしい。それも全ては保護犬ちゃんだったことも大きいのかもしれない。

人間不信だったきーちゃんが、我が家で大暴れする程になったのだから、むしろ喜ばしい。

「……それだけ、きーちゃんが我が家に馴染んでいる証拠だよね」

そう、私には喜ぶべきことなんだよ。

もし、もしもよ? 

此処できーちゃんを怒鳴ったり、叩いたりしたら、きーちゃんは再び人間を怖がり、恐らくは一生人間を信じなくなってしまう。その想いが根底にあるんだろうね。だからなのか、自然と怒りも湧かない。

其れに付随して、常に思い出す事がある。

今や天国に旅立った先住犬チワワのピースちゃんのこと。ピースちゃんがおイタをすると叱ったこともあった私。当時の私は大人気ない、不出来な人間だったと今更ながらに自己嫌悪。

「ピースちゃん……ごめんね……」

それは今でも反省と後悔はしている。やり直せるなら同じ過ちは繰り返さない。

今は真逆の反応の私と我が家の家族。

「凄っーい! こんなに感情が豊かなんだね、ワンコちゃんは?! ねぇ、見て見て……きーちゃんがめっちゃ怒って暴れているよ!」

見事な怒りっぷりに感心する私。だが、食事制限をされたきーちゃんにしてみれば、それどころではない。

「ご飯くれよーーー!」

そんなお顔で此方をガン見するきーちゃん。

やっぱり可愛い。
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