田舎娘は後宮妃になりました。

ゆきむらさり

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後宮妃・三の妃編

24.公主と“三の妃”の意外な言い分

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 ずるい……と呟く“三の妃”。

「……何がずるいと言うのかしら?」

 後宮妃・麗香が聞き返す。

「公主様っ、あの娘は元は奴婢なのよ! それを下働きとして雇い、しかも侍女として後宮にまで連れてきたのは私よ!」

「元は奴婢とはいえ、今は大切な私の侍女の一人よ」

「それでも卑しい奴婢には変わりがないわ! 生きる価値もない奴婢なのよ! だって、そうでしょう? どれだけ努力しても私が側女の娘でしかないように……役立たずの娘でしかないように……所詮は、あの娘も卑しい奴婢でしかないのよ!」

 鉄格子の向こうから喚く“三の妃”は、しまいには帝家姉弟の方へと詰め寄る。

「……不敬だ」

 間に割って入ろうとする近臣の張武偉を「問題ない」と手で制する皇帝・王炫。

 愚かなことを……と溜め息をつく後宮妃・麗香。

 それをじっと聞いている皇帝・王炫も「愚かだな……ゆえに後宮も後宮妃も面倒なのだ」と嘲笑する。

「よくお聞きなさい。奴婢として生まれたことは青鈴のせいではないわ。生まれは選べない。あの娘も好きで奴婢に生まれたわけではないのよ。それに今は懸命に生きているわ。それを貶めるあなたこそ卑しいとは思わないの? そうね、あなたも自分を貶めるのは良しなさい」

「……っ?!」

 気のせいでなければ“三の妃”の顔が苦痛に歪む。

「どうして! どうして卑しい娘が主人の私より公主様から目をかけられるの?」

「どうして? それはあなたが一番よく理解しているのではなくて? 私は見てしまった以上は見て見ぬ振りはできない。何の落ち度もない侍女が、皆から貶められるのを黙って見過ごすことなどできないわ。だから、私の侍女として召し上げたのよ」

「それがずるいのよ! 私も公主様のお側にお仕えしたいのに……そうすれば少しぐらいは義姉を見返すことができるのに……全てが不公平だわ!」

「……」

「公主様っ、貴女様は覚えておられないかもしれないけれど、貴女様だけが私を小馬鹿にせず、優しい言葉をかけてくださった。義姉も……父さえも、女として生まれた私を役立たずだと罵るのに!」

 うん? 何の話だ? と皇帝・王炫が姉である後宮妃・麗香へと視線を移す。

「姉上……話が少々ずれているように感じるのは、余の気のせいでしょうか?」

 近臣の張武偉は平静を装ったままだが、微かに視線を背けるあたり、何事かを知っているようだ。

 皇帝・王炫は知らないが、女ばかりの〈後宮〉において最高位の存在としてある後宮妃・麗香は、本人の気さくな性格もあり、実は人気が高い。

 皇帝・王炫と同じく美しい容貌に加え、誰にでも分け隔てなく接する面倒見の良さ、時には武闘さえも披露する男勝りな秀麗な身姿は、他の後宮妃を圧倒し、魅了する。

 彼女は、後宮妃から密かに慕われている。

 そう、モテるのだ。

 その事を知っている近臣の張武偉。

 内心では「少々、妬けます」と思っているとかいないとか。

 皇帝・王炫も承知しているように、後宮妃・麗香と近臣の張武偉は、今でも昔のように互いに文のやりとりをしている。

 元が許婚同士なだけに、友愛は途切れない二人。


 ◇


 それはさておき。

 どうやら“三の妃”にも言い分がある様子。

 そう、“三の妃”は誕生を望まれていながら、家督を継ぐ嫡男でなかったことに、高官である実父から落胆されたのだ。

「何の為に側女に赤子を生ませたと思っているのだ? 役に立たない食い扶持を増やす為ではない」

 挙句。

「今度こそは当家の役に立ってみせろ。皇帝陛下の寵愛を授かることができたなら、その時こそ私の子として認めてやろう」

 冷酷で狡猾な実父に、今代の皇帝・王炫の後宮妃として入宮することを言い渡されたのだ。

 それというのも、先に入宮した姉の“二の妃”が寵愛を得れなかったことが起因している。

 望まれないとして誕生した“三の妃”。その彼女と側女の母とを正妻である母娘は無下に扱ったのだ。

 そのせいで“三の妃”の心は荒んだ。

 彼女が不敬行為に及んだのも全ては腹いせ。だが、突き詰めれば、全ての元凶は“三の妃”の実父と義理の母と姉。


 ◇


 今回、後宮妃の義理の姉妹の生家のゴタゴタに巻き込まれた形の宝玉。その宝玉だが、〈地牢〉の出来事など知る由もなく、侍女・青鈴の妹である小鈴の世話を焼いていたりする。

「小鈴ちゃん、可愛い~~~」

 純粋で愛らしい小鈴にメロメロな宝玉。

 でも、棗の蒸し菓子を粗末にされたことは忘れていない。

 後日、皇帝・王炫から不敬行為を犯した後宮妃・“三の妃”の処分を問われると「会わせてください」と願い出る宝玉。

「食べ物を粗末したことは許せません。謝っていただきます」

 拳を震わせ、憤然と言い切る宝玉。

 可愛いやつ……と痘痕あばたえくぼな皇帝・王炫がいる。

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