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後宮妃・三の妃編
26.三の妃と宝玉の裁き
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皇帝・王炫は「“三の妃”に合わせて欲しい」と願い出た宝玉の意を諾する。
「炫様……三の妃様の処遇を私に任せてもらっても良いですか?」
「宝玉様自らがお裁きになるのですか?! さすがは未来の皇后様は仰ることが違いますねー!」
近衛の李暁明が感嘆する。
「……皇后様? 誰が? いったい何のお話ですか、暁明様?」
「宝玉様……時に暁明はおかしな事を口走る癖がありますので、どうか本気になさいませんようにお願いいたします。暁明、良いですか? 余計なことを口走れば、その口を縫い合わせますよ?」
淡々と告げる近臣の張武偉は、部下の李暁明の耳を引っ張り上げ、彼の耳元へと小声で言い放つ。
「宝玉様は……まだご自分が皇后候補だとは全く知りません。宝玉様が萎縮してしまうような発言は控えなさい」
慌てて口を手で覆う近衛の李暁明。不思議顔でこちらを見る宝玉からそっと視線を外す。
「相変わらずだな、暁明は……」
微かに口角を緩ませ、そこへと割って入る皇帝・王炫は静かに告げる。
「宝玉の好きにすれば良い。ただ、無罪とすることはできない。これを許せば増長する輩も出てくる可能性がある。小馬鹿にされたままでは帝家の名折れ。何かしらの償いはさせるべきだ」
「炫様……もちろんです」
うなずく宝玉も無かったことには、するつもりはない。
食べ物を粗末に扱われたことは許せない。それに皇帝・王炫へと真心込めて作った棗の蒸し菓子でもある。その全てが台無しに。
人の好意を踏みにじられたのだ。
「炫様へと差し上げようとした棗の蒸し菓子を台無しにされたのです。その仇を討って参ります」
「それは頼もしい。是非ともそうして欲しい。宝玉が余のために作ってくれた物を無駄にされたことには余も腹立たしい」
「炫様、またお作りします。宝玉は炫様に食べて欲しいのです」
「そうか……それは楽しみだ」
嬉しそうに告げる皇帝・王炫。
彼がこのような柔らかな表情をするのは宝玉だからだろう。
ただ、宝玉は皇帝・王炫へと好意は抱くものの、今の時点では少し好意の意味合いが違う。
ーー炫様がここへと連れてきてくれたおかげで今の私がいる。恩には恩を返さないとね。
恩ゆえの棗の蒸し菓子。
まだまだ、恋情には疎い宝玉がいる。
◇
後日。
後宮妃・麗香は宝玉を〈冷宮〉へと案内する。
〈皇后宮〉からは離れた辺鄙な場所にある〈冷宮〉は、過去において皇帝の寵愛を失った者や、あるいは罪を犯した妃や皇族の姫たちが隔離される寂しい場所。
おかげで人の目にはつきにくい。
事前に宝玉がお願いしていたように、庭先の御座の上に座らされている“三の妃”がいる。彼女の前方には墨入りの樽が置かれている。
歩み寄る宝玉。
おもむろに樽を持ち上げ、そのまま“三の妃”にぶちまける。
「きゃあっー……何をするのよ! 顔中墨だらけになったわ! まさか?! 松脂を入れてはいないでしょうね!」
怒りを露わにする“三の妃”。
「安心してください、ただの墨です。どうですか? ただの墨だけでも嫌でしょう? 三の妃様がなさったことですよ。 あなたの顔は洗えば落ちる。けれど、墨を被った食べ物は元には戻りません。貴女様の生い立ちには同情いたします。ですが、食べ物を粗末にすることは許せません」
「なによ! たかが菓子でしょう!」
刹那、「その発言は許せません!」と宝玉の手刀が“三の妃”の頭部を直撃する。
「“三の妃”様……貴女様は恵まれているからわからないでしょうけど……貧しい田舎の村には、今日のご飯にさえありつけないこともあるのです。それこそ何日も食べられない日もあるのですよ。良いですか? 物のありがたみのわからない人は、そのうち必ず痛い目をみますよ。この際です。二、三日の間……飲まず食わずで過ごしますか?」
毅然と言い切る宝玉。愛らしい顔にもかかわらず、瞳は冷めているせいで意外と睨むと怖い。
ひっ! とビビる“三の妃”。
ビビった者の負け。
「炫様……三の妃様の処遇を私に任せてもらっても良いですか?」
「宝玉様自らがお裁きになるのですか?! さすがは未来の皇后様は仰ることが違いますねー!」
近衛の李暁明が感嘆する。
「……皇后様? 誰が? いったい何のお話ですか、暁明様?」
「宝玉様……時に暁明はおかしな事を口走る癖がありますので、どうか本気になさいませんようにお願いいたします。暁明、良いですか? 余計なことを口走れば、その口を縫い合わせますよ?」
淡々と告げる近臣の張武偉は、部下の李暁明の耳を引っ張り上げ、彼の耳元へと小声で言い放つ。
「宝玉様は……まだご自分が皇后候補だとは全く知りません。宝玉様が萎縮してしまうような発言は控えなさい」
慌てて口を手で覆う近衛の李暁明。不思議顔でこちらを見る宝玉からそっと視線を外す。
「相変わらずだな、暁明は……」
微かに口角を緩ませ、そこへと割って入る皇帝・王炫は静かに告げる。
「宝玉の好きにすれば良い。ただ、無罪とすることはできない。これを許せば増長する輩も出てくる可能性がある。小馬鹿にされたままでは帝家の名折れ。何かしらの償いはさせるべきだ」
「炫様……もちろんです」
うなずく宝玉も無かったことには、するつもりはない。
食べ物を粗末に扱われたことは許せない。それに皇帝・王炫へと真心込めて作った棗の蒸し菓子でもある。その全てが台無しに。
人の好意を踏みにじられたのだ。
「炫様へと差し上げようとした棗の蒸し菓子を台無しにされたのです。その仇を討って参ります」
「それは頼もしい。是非ともそうして欲しい。宝玉が余のために作ってくれた物を無駄にされたことには余も腹立たしい」
「炫様、またお作りします。宝玉は炫様に食べて欲しいのです」
「そうか……それは楽しみだ」
嬉しそうに告げる皇帝・王炫。
彼がこのような柔らかな表情をするのは宝玉だからだろう。
ただ、宝玉は皇帝・王炫へと好意は抱くものの、今の時点では少し好意の意味合いが違う。
ーー炫様がここへと連れてきてくれたおかげで今の私がいる。恩には恩を返さないとね。
恩ゆえの棗の蒸し菓子。
まだまだ、恋情には疎い宝玉がいる。
◇
後日。
後宮妃・麗香は宝玉を〈冷宮〉へと案内する。
〈皇后宮〉からは離れた辺鄙な場所にある〈冷宮〉は、過去において皇帝の寵愛を失った者や、あるいは罪を犯した妃や皇族の姫たちが隔離される寂しい場所。
おかげで人の目にはつきにくい。
事前に宝玉がお願いしていたように、庭先の御座の上に座らされている“三の妃”がいる。彼女の前方には墨入りの樽が置かれている。
歩み寄る宝玉。
おもむろに樽を持ち上げ、そのまま“三の妃”にぶちまける。
「きゃあっー……何をするのよ! 顔中墨だらけになったわ! まさか?! 松脂を入れてはいないでしょうね!」
怒りを露わにする“三の妃”。
「安心してください、ただの墨です。どうですか? ただの墨だけでも嫌でしょう? 三の妃様がなさったことですよ。 あなたの顔は洗えば落ちる。けれど、墨を被った食べ物は元には戻りません。貴女様の生い立ちには同情いたします。ですが、食べ物を粗末にすることは許せません」
「なによ! たかが菓子でしょう!」
刹那、「その発言は許せません!」と宝玉の手刀が“三の妃”の頭部を直撃する。
「“三の妃”様……貴女様は恵まれているからわからないでしょうけど……貧しい田舎の村には、今日のご飯にさえありつけないこともあるのです。それこそ何日も食べられない日もあるのですよ。良いですか? 物のありがたみのわからない人は、そのうち必ず痛い目をみますよ。この際です。二、三日の間……飲まず食わずで過ごしますか?」
毅然と言い切る宝玉。愛らしい顔にもかかわらず、瞳は冷めているせいで意外と睨むと怖い。
ひっ! とビビる“三の妃”。
ビビった者の負け。
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