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後宮妃・二の妃と林家編①
31.墨事件の真相と三の妃の想い
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皇帝・王炫へと宝玉が願い出たのは、後宮妃である“三の妃”の〈後宮〉からの引き揚げ。それこそ退宮願。
ぶっちゃけ。いわゆる、引越し願いだ。
冗談ではなく本気。これが意外と切実だったりする。それも全ては、“三の妃”が宝玉へと打ち明けた話に起因している。
◇
ある時、後宮妃・美玉こと“三の妃”は宝玉へとこう告げている。
「宝玉様……今の私は後宮妃としてあるよりも、それこそ宮女にでもなって宝玉様にお仕えしたいと思っております。あのまま〈後宮〉に居続けることになれば、“二の妃”と謳われる義姉から何をされるかわかりません。身内の恥を晒すようですが、実は……」
先を続ける“三の妃”が宝玉へと打ち明けたのは、例の「墨事件」に至った経緯。
そもそも“三の妃”は宝玉の存在は知らなかったそう。
「今にして思えば……全てはお義姉様に踊らされていたような気がします。もちろん、当時の私がわがままな女であったことも理解しております」
申し訳なさそうに苦笑する“三の妃”。
「……過去は過去だよ、美玉ちゃん」
「宝玉様にそう言っていただけると、不思議と心が軽くなります」
ありがとうございます……と柔らかな表情を向ける“三の妃”。
「いえいえ……それに自分の行いを恥じている今の美玉ちゃんなら大丈夫だと思います。それにね、悪いことは悪いと気づくことができたのなら、もう一度やり直せばいいんです。誤った道に逸れたなら正しい道に戻ればいいのです。それに気づけたことが大事なんだと思います。そう思うと……気づけない人は悲しい人かもしれませんね」
そう言い放つ宝玉。
「やはり、宝玉様はお優しい方ですね。このような私にも優しく接してくださる。私は宝玉様が大好きです。ふふっ……皇帝陛下が宝玉様を見初めた理由がわかったような気がします」
「うん? ここで皇帝陛下は関係ないですよ? それに後宮妃には、自分から立候補したので見初められたわけではありません」
事もなげに告げる宝玉。
ーーこれでは皇帝陛下も前途多難でしょうね。
内心では苦笑する“三の妃”。
宝玉に感謝しながらも少し躊躇がちに言葉を続ける。
「宝玉様……どうか、お気をつけください。義妹の私から見ても義姉は容赦のない性格をしております。なにしろ、幼い小鈴を盾に侍女の青鈴を利用し、皇帝陛下が目を掛けている宝玉様のことを聞き出したのは、他でもない私の義姉なのです」
これには首をかしげる宝玉。
「……どうしてでしょう? 今の私は麗香お姉様の侍女でしかありません。“二の妃”様に目の敵にされる理由も意味も分かりません」
「宝玉様はお気付きではないでしょうが、公主様に優遇されている新参の侍女のことは、後宮内では密かに噂されておりました。〈皇后宮〉の禁域とされている書庫へと入ることも許されているのです。一介の侍女でありながら厚遇される者は、これまで誰一人としておりませんでした」
ああっ、なるほど……とポンと手を打つ宝玉。
◇
〈皇后宮〉の書庫は〈帝宮〉の書庫と同じく禁域とされている。貴重な書物が多く存在するからだ。
毎日のように入り浸っていれば誰かは気づく。
ましてや、それを良しとしている皇帝・王炫もいるのだ。暗に、宝玉の存在が『特別』だということを告げているようなものだ。
宝玉が知らないだけで、皇帝・王炫は「己の唯一」と定めた宝玉を攻撃するような輩がいれば、おいおい叩く心づもりでいる。そうなれば不要な後宮妃を処分できるからだ。
皇帝・王炫の意図はさておき。
◇
「公主様に憧れを抱く私の気持ちを利用し、煽り、あのような行為へと……公主様に仕えている青鈴への嫉妬心もありましたが、元々の発端は義姉であるということを、どうしても宝玉様にお伝えしたかったのでございます。それに義姉の後ろには生家の林家も控えております。どうかお気をつけください」
これ以上の義姉との争いを望まない“三の妃”。
だからこそ〈後宮〉から退宮し、〈冷宮〉へと住まいを移したいのだ。さらには。
「たとえ今の身分を捨ててでも、私は私を必要としてくれる場所でやり直したいのです。私は宝玉様に必要とされるような人であり続けたいと思います」
そう切に望んでいる。
叶えてあげたい……と思う宝玉。
実は、あることにも気づいたのだ。
“三の妃”の言葉から、“二の妃“である義姉への恐れも感じ取った宝玉は、あえて生家の名を挙げたことにも憂慮する。
――うーん、林家かぁ。なんだか嫌な予感?
実際、嫌な予感ほど当たるもの。
それを踏まえて皇帝・王炫への訴状。
「宝玉……つまり、“三の妃”は〈後宮〉ではなく〈冷宮〉に住みたいと自らが申していると言うのだな?」
「……はい。私もそれはいい考えだと思います。あのまま〈後宮〉にいるのは“三の妃”様には良くないような気がします。“三の妃”様のお話を聞く限り、義姉上様である“二の妃”様のことは捨ておけません。真に罰せられるべき人は“三の妃”様ではありません」
ほう……と皇帝・王炫が感心する。
ほどなく、許しが出る。
ぶっちゃけ。いわゆる、引越し願いだ。
冗談ではなく本気。これが意外と切実だったりする。それも全ては、“三の妃”が宝玉へと打ち明けた話に起因している。
◇
ある時、後宮妃・美玉こと“三の妃”は宝玉へとこう告げている。
「宝玉様……今の私は後宮妃としてあるよりも、それこそ宮女にでもなって宝玉様にお仕えしたいと思っております。あのまま〈後宮〉に居続けることになれば、“二の妃”と謳われる義姉から何をされるかわかりません。身内の恥を晒すようですが、実は……」
先を続ける“三の妃”が宝玉へと打ち明けたのは、例の「墨事件」に至った経緯。
そもそも“三の妃”は宝玉の存在は知らなかったそう。
「今にして思えば……全てはお義姉様に踊らされていたような気がします。もちろん、当時の私がわがままな女であったことも理解しております」
申し訳なさそうに苦笑する“三の妃”。
「……過去は過去だよ、美玉ちゃん」
「宝玉様にそう言っていただけると、不思議と心が軽くなります」
ありがとうございます……と柔らかな表情を向ける“三の妃”。
「いえいえ……それに自分の行いを恥じている今の美玉ちゃんなら大丈夫だと思います。それにね、悪いことは悪いと気づくことができたのなら、もう一度やり直せばいいんです。誤った道に逸れたなら正しい道に戻ればいいのです。それに気づけたことが大事なんだと思います。そう思うと……気づけない人は悲しい人かもしれませんね」
そう言い放つ宝玉。
「やはり、宝玉様はお優しい方ですね。このような私にも優しく接してくださる。私は宝玉様が大好きです。ふふっ……皇帝陛下が宝玉様を見初めた理由がわかったような気がします」
「うん? ここで皇帝陛下は関係ないですよ? それに後宮妃には、自分から立候補したので見初められたわけではありません」
事もなげに告げる宝玉。
ーーこれでは皇帝陛下も前途多難でしょうね。
内心では苦笑する“三の妃”。
宝玉に感謝しながらも少し躊躇がちに言葉を続ける。
「宝玉様……どうか、お気をつけください。義妹の私から見ても義姉は容赦のない性格をしております。なにしろ、幼い小鈴を盾に侍女の青鈴を利用し、皇帝陛下が目を掛けている宝玉様のことを聞き出したのは、他でもない私の義姉なのです」
これには首をかしげる宝玉。
「……どうしてでしょう? 今の私は麗香お姉様の侍女でしかありません。“二の妃”様に目の敵にされる理由も意味も分かりません」
「宝玉様はお気付きではないでしょうが、公主様に優遇されている新参の侍女のことは、後宮内では密かに噂されておりました。〈皇后宮〉の禁域とされている書庫へと入ることも許されているのです。一介の侍女でありながら厚遇される者は、これまで誰一人としておりませんでした」
ああっ、なるほど……とポンと手を打つ宝玉。
◇
〈皇后宮〉の書庫は〈帝宮〉の書庫と同じく禁域とされている。貴重な書物が多く存在するからだ。
毎日のように入り浸っていれば誰かは気づく。
ましてや、それを良しとしている皇帝・王炫もいるのだ。暗に、宝玉の存在が『特別』だということを告げているようなものだ。
宝玉が知らないだけで、皇帝・王炫は「己の唯一」と定めた宝玉を攻撃するような輩がいれば、おいおい叩く心づもりでいる。そうなれば不要な後宮妃を処分できるからだ。
皇帝・王炫の意図はさておき。
◇
「公主様に憧れを抱く私の気持ちを利用し、煽り、あのような行為へと……公主様に仕えている青鈴への嫉妬心もありましたが、元々の発端は義姉であるということを、どうしても宝玉様にお伝えしたかったのでございます。それに義姉の後ろには生家の林家も控えております。どうかお気をつけください」
これ以上の義姉との争いを望まない“三の妃”。
だからこそ〈後宮〉から退宮し、〈冷宮〉へと住まいを移したいのだ。さらには。
「たとえ今の身分を捨ててでも、私は私を必要としてくれる場所でやり直したいのです。私は宝玉様に必要とされるような人であり続けたいと思います」
そう切に望んでいる。
叶えてあげたい……と思う宝玉。
実は、あることにも気づいたのだ。
“三の妃”の言葉から、“二の妃“である義姉への恐れも感じ取った宝玉は、あえて生家の名を挙げたことにも憂慮する。
――うーん、林家かぁ。なんだか嫌な予感?
実際、嫌な予感ほど当たるもの。
それを踏まえて皇帝・王炫への訴状。
「宝玉……つまり、“三の妃”は〈後宮〉ではなく〈冷宮〉に住みたいと自らが申していると言うのだな?」
「……はい。私もそれはいい考えだと思います。あのまま〈後宮〉にいるのは“三の妃”様には良くないような気がします。“三の妃”様のお話を聞く限り、義姉上様である“二の妃”様のことは捨ておけません。真に罰せられるべき人は“三の妃”様ではありません」
ほう……と皇帝・王炫が感心する。
ほどなく、許しが出る。
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