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〈閑話〉翻弄される林家の女たち 二の妃side
33.林家の義姉妹と正妻と側女
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“後宮の三妃“と謳われる後宮妃の一人。
後宮妃・“二の妃”。名前は氷翠。
代々高官を務める林家。その当主の正妻の子である“二の妃”は生粋の名家の姫君。
しっとりと重みのある黒髪は、常に高く結い上げ、自分の立ち位置を物語っているかのよう。他の後宮妃と比べて遥かに上。
髪の乱れ一つさえない完璧な装い。
黒髪を彩るのは艶やかな簪と髪飾り。手に持つ扇子と衣装は若葉のような瑞々しい翠緑。彼女の纏う装飾品全てが上物だと分かる。
『我が娘こそ皇后に相応しい』
林家の当主の意気込みと欲望が見え隠れする。
“二の妃”の面長のシャープな顔立ちには、湾曲の眉毛が美しく描かれ、黒い瞳は切れ長で鋭い。
まさに彼女の性格を表している。
愛らしく丸みのある顔立ちの義妹・“三の妃”が可憐な美しさなら、義姉・“二の妃”は華美な美しさといえる。
林家の義理の姉妹だが、二人とも最初から性格が難ありだったわけではない。それに義姉・氷翠に至っては、義妹・美玉の誕生を心待ちにし、喜んでいた時期もあったのだ。
だが、「……それは許されない」
そう思うようになった“二の妃”・氷翠。
それは氷翠の母、正妻である林家当主夫人の影響が大きい。
◇
裕福な家に生まれようが、貧しい家に生まれようが、代々一家の長を務めるのは、その家の嫡子であり、そのまた息子。
そうして家督は引き継がれていく。
完全な男社会。
いくら名家の生まれでも、嫁ぎ先での立場が正妻であっても、家督を継ぐ嫡子を産めなければ、当主夫人とはいえ、林家当主から無言の責めを負う。
家長の当主の立場は絶対的なもの。その意に添えないのであれば、「不出来な妻」という無言の烙印を押される。
何をもってしても家長が一番偉いからだ。
――おまえは正妻でありながら跡継ぎさえ産めないのか?
そこに美しい下女の存在。義妹・美玉の母だった者だ。
林家当主の心には浮気心がはたらく。
美しい下女を無理強い召し上げた林家当主は、彼女を側女として居室まで与え、しかも子まで孕ませ、嫡子の誕生さえ望むのだ。
正妻の心は荒み、だんだんと黒く染まる。
当主である“旦那様”を愛しているだけに、若く美しい側女の存在は害にしかならない。
それでも林家の正妻である以上、「側女の存在も許容できない心の狭い女」とも思われたくない。
――旦那様の心が余計に離れてしまう。
時に、自尊心は自分を苦しめる。
表向きは側女の存在を受け入れながらも内心では「おまえなど居なくなればいい!」と毒を吐く正妻。
◇
やがて産月を迎えた側女は女の赤ん坊を産み落とす。
あからさまに落胆する林家の当主。
「何のために下女のおまえを側女に召し上げてやったと思っているのだ? 我が家の女どもは役立たずばかりか……!」
美しい側女だったが、期待外れの女の赤ん坊を産み落としたことで当主の反感を買い、そのまま赤ん坊と共に放置される。
やがて側女は病気がちになり、最後は衰弱し、幼い我が子の行く末を憂いながら、泣く泣くこの世を去っている。
後宮妃・“二の妃”。名前は氷翠。
代々高官を務める林家。その当主の正妻の子である“二の妃”は生粋の名家の姫君。
しっとりと重みのある黒髪は、常に高く結い上げ、自分の立ち位置を物語っているかのよう。他の後宮妃と比べて遥かに上。
髪の乱れ一つさえない完璧な装い。
黒髪を彩るのは艶やかな簪と髪飾り。手に持つ扇子と衣装は若葉のような瑞々しい翠緑。彼女の纏う装飾品全てが上物だと分かる。
『我が娘こそ皇后に相応しい』
林家の当主の意気込みと欲望が見え隠れする。
“二の妃”の面長のシャープな顔立ちには、湾曲の眉毛が美しく描かれ、黒い瞳は切れ長で鋭い。
まさに彼女の性格を表している。
愛らしく丸みのある顔立ちの義妹・“三の妃”が可憐な美しさなら、義姉・“二の妃”は華美な美しさといえる。
林家の義理の姉妹だが、二人とも最初から性格が難ありだったわけではない。それに義姉・氷翠に至っては、義妹・美玉の誕生を心待ちにし、喜んでいた時期もあったのだ。
だが、「……それは許されない」
そう思うようになった“二の妃”・氷翠。
それは氷翠の母、正妻である林家当主夫人の影響が大きい。
◇
裕福な家に生まれようが、貧しい家に生まれようが、代々一家の長を務めるのは、その家の嫡子であり、そのまた息子。
そうして家督は引き継がれていく。
完全な男社会。
いくら名家の生まれでも、嫁ぎ先での立場が正妻であっても、家督を継ぐ嫡子を産めなければ、当主夫人とはいえ、林家当主から無言の責めを負う。
家長の当主の立場は絶対的なもの。その意に添えないのであれば、「不出来な妻」という無言の烙印を押される。
何をもってしても家長が一番偉いからだ。
――おまえは正妻でありながら跡継ぎさえ産めないのか?
そこに美しい下女の存在。義妹・美玉の母だった者だ。
林家当主の心には浮気心がはたらく。
美しい下女を無理強い召し上げた林家当主は、彼女を側女として居室まで与え、しかも子まで孕ませ、嫡子の誕生さえ望むのだ。
正妻の心は荒み、だんだんと黒く染まる。
当主である“旦那様”を愛しているだけに、若く美しい側女の存在は害にしかならない。
それでも林家の正妻である以上、「側女の存在も許容できない心の狭い女」とも思われたくない。
――旦那様の心が余計に離れてしまう。
時に、自尊心は自分を苦しめる。
表向きは側女の存在を受け入れながらも内心では「おまえなど居なくなればいい!」と毒を吐く正妻。
◇
やがて産月を迎えた側女は女の赤ん坊を産み落とす。
あからさまに落胆する林家の当主。
「何のために下女のおまえを側女に召し上げてやったと思っているのだ? 我が家の女どもは役立たずばかりか……!」
美しい側女だったが、期待外れの女の赤ん坊を産み落としたことで当主の反感を買い、そのまま赤ん坊と共に放置される。
やがて側女は病気がちになり、最後は衰弱し、幼い我が子の行く末を憂いながら、泣く泣くこの世を去っている。
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