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後宮妃・一の妃編
45.一の妃の事情・前
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「宝玉様……実は貴女様に聞いていただきたいことがあり、この度はお伺いいたしました。何より、宝玉様は皇帝陛下の初めてとなる寵妃となられたお方……貴女様の言動は皇帝陛下をも動かしましょう」
そう言って“一の妃”は美しい笑みを湛える。
おそらく後宮内では誰よりも優雅。
“一の妃”の優雅な所作は匂い立つほどに美しいのだ。高雅で男まさりな姉御肌の後宮妃・麗香とは、まさに対照的。
楚々として美しいのが後宮妃・“一の妃”。
--なら、私は?
『おまえは天真爛漫の田舎娘、余の可愛い後宮妃だ。そして誰よりも美しい余の寵妃だ』
そう言って、共寝をする宝玉を抱き締める皇帝・王炫はうっとりと囁き、宝玉の唇へと甘い口付けを落とすのだ。
あわわっ……余計なことを思い出した~!
宝玉は脳裏から、皇帝・王炫という煩悩を追い出す。
それを楽しげに見つめる“一の妃”は思う。
--皇帝陛下はようやく“珠玉の宝”を手にしたのですね。聡いお方だとお聞きするし……この方ならきっと変えてくださる。
“一の妃”は切に願う。
◇
「やっぱり、“一の妃”様は見惚れるほどお綺麗ですね。誰がどう見てもお美しい貴婦人にしか見えません。そうですね、とても男の方だとはっ……あわわっ!」
やってしまった! と慌てて口を閉じる宝玉。
だが、すでに言ってしまっているあたり、後の祭り。
申し訳なさそうに、上目遣いでチラリと“一の妃”を見る宝玉。いたずらっ子のような、幼子のような様子が“一の妃”の笑いを誘う。
「誠に愛らしいお方ですこと。美しいのは貴女様です、宝玉様」
そして、ふふふっ……と楽しそうに笑う“一の妃”は、宝玉の失言を気にする様子もなく聞く。
「宝玉様……遠慮なさらなくても良いのです。貴女様の言ったことは正しいのですから、疑いもしない他の後宮妃の方々の方が不思議なくらいです。どうかお気になさらないで……私は正真正銘の男なのですから……ふふっ」
--わぁ~……言っちゃったよ、この人言っちゃったよ。
あっけらかんとして、事もなげに告げる“一の妃”に驚嘆する宝玉だが、好感も持てる。
「宝玉様……私が男の人だと、よくお気づきになられました。素晴らしい観察力ですこと」
“一の妃”はニッコリと微笑む。そして宝玉が気付いた理由を尋ねる。
「ふふっ、気になりますもの……」
「うーん、なんと言いましょうか? “一の妃”様は全ての所作が完璧なまでに美しいのです。指の一本一本に至るまで、神経が行き届いていると言いましょうか……どの貴婦人よりも貴婦人らしいのが目につきました。生まれながらの女性であれば、そこまで所作に気を配りません。必ずとは言いませんが、女性に生まれたことに甘んじ、どこかに隙が出るものなのではないでしょうか?」
「まぁっ、さすがです! 聡いお方は視点が違いますのね? 仰る通りでございます。生まれが男ゆえに必要以上に気を配っております」
“一の妃”はさらりと答える。
どうやら隠すつもりもないようだ、と。
--なら聞いても良いのだろうか?
不躾だと思っても、やはり興味は湧いてしまう宝玉。その表情から察した“一の妃”が先に言葉を放つ。
「何故……女の振りをしているかとお思いでしょう?」
もちろんです! とはさすがに言えない宝玉。
--好奇心丸出しだと思われてしまうのも恥ずかしい。
「はい……」とだけ、小さくうなずく。
「私は姉の代わりです。貴女様も知っているでしょう? 先の戦乱を……そして先の皇帝陛下のせいで国も荒れたのです。名前を口に出すのもおぞましいほど、先の皇帝陛下は横暴で色欲なお方でした。私の姉を後宮妃として無理に入宮させ、手篭にしようとまでしたのです。それを救って下さったのが今代の皇帝陛下の炫様です。その姉として入宮したのが私なのです、宝玉様……私は進んで姉の身代わりを引き受けたのです。大好きな姉ですから……」
これには驚く宝玉。
ただ、“一の妃”の憂いに満ちた表情を見れば、すぐに姿勢を正し、先に続くであろう話に耳を傾ける宝玉。
--事情を抱えている相手に無礼があってはならない。
宝玉は皇帝・王炫が見初めただけあり、徐々に「皇后への器」を見せ始めているとかいないとか。ただ、本人には至ってその気がないのが、皇帝・王炫には「困ったものだ」と悩ましいところ。
それはさておき。
後宮妃・“一の妃”は、事のあらましを静かな声音で語って聞かせる。先の皇帝・昭耀の後宮妃であった姉の身代わりを引き受けた自分自身のことも。その事情の全てを告げたのだ。
そう言って“一の妃”は美しい笑みを湛える。
おそらく後宮内では誰よりも優雅。
“一の妃”の優雅な所作は匂い立つほどに美しいのだ。高雅で男まさりな姉御肌の後宮妃・麗香とは、まさに対照的。
楚々として美しいのが後宮妃・“一の妃”。
--なら、私は?
『おまえは天真爛漫の田舎娘、余の可愛い後宮妃だ。そして誰よりも美しい余の寵妃だ』
そう言って、共寝をする宝玉を抱き締める皇帝・王炫はうっとりと囁き、宝玉の唇へと甘い口付けを落とすのだ。
あわわっ……余計なことを思い出した~!
宝玉は脳裏から、皇帝・王炫という煩悩を追い出す。
それを楽しげに見つめる“一の妃”は思う。
--皇帝陛下はようやく“珠玉の宝”を手にしたのですね。聡いお方だとお聞きするし……この方ならきっと変えてくださる。
“一の妃”は切に願う。
◇
「やっぱり、“一の妃”様は見惚れるほどお綺麗ですね。誰がどう見てもお美しい貴婦人にしか見えません。そうですね、とても男の方だとはっ……あわわっ!」
やってしまった! と慌てて口を閉じる宝玉。
だが、すでに言ってしまっているあたり、後の祭り。
申し訳なさそうに、上目遣いでチラリと“一の妃”を見る宝玉。いたずらっ子のような、幼子のような様子が“一の妃”の笑いを誘う。
「誠に愛らしいお方ですこと。美しいのは貴女様です、宝玉様」
そして、ふふふっ……と楽しそうに笑う“一の妃”は、宝玉の失言を気にする様子もなく聞く。
「宝玉様……遠慮なさらなくても良いのです。貴女様の言ったことは正しいのですから、疑いもしない他の後宮妃の方々の方が不思議なくらいです。どうかお気になさらないで……私は正真正銘の男なのですから……ふふっ」
--わぁ~……言っちゃったよ、この人言っちゃったよ。
あっけらかんとして、事もなげに告げる“一の妃”に驚嘆する宝玉だが、好感も持てる。
「宝玉様……私が男の人だと、よくお気づきになられました。素晴らしい観察力ですこと」
“一の妃”はニッコリと微笑む。そして宝玉が気付いた理由を尋ねる。
「ふふっ、気になりますもの……」
「うーん、なんと言いましょうか? “一の妃”様は全ての所作が完璧なまでに美しいのです。指の一本一本に至るまで、神経が行き届いていると言いましょうか……どの貴婦人よりも貴婦人らしいのが目につきました。生まれながらの女性であれば、そこまで所作に気を配りません。必ずとは言いませんが、女性に生まれたことに甘んじ、どこかに隙が出るものなのではないでしょうか?」
「まぁっ、さすがです! 聡いお方は視点が違いますのね? 仰る通りでございます。生まれが男ゆえに必要以上に気を配っております」
“一の妃”はさらりと答える。
どうやら隠すつもりもないようだ、と。
--なら聞いても良いのだろうか?
不躾だと思っても、やはり興味は湧いてしまう宝玉。その表情から察した“一の妃”が先に言葉を放つ。
「何故……女の振りをしているかとお思いでしょう?」
もちろんです! とはさすがに言えない宝玉。
--好奇心丸出しだと思われてしまうのも恥ずかしい。
「はい……」とだけ、小さくうなずく。
「私は姉の代わりです。貴女様も知っているでしょう? 先の戦乱を……そして先の皇帝陛下のせいで国も荒れたのです。名前を口に出すのもおぞましいほど、先の皇帝陛下は横暴で色欲なお方でした。私の姉を後宮妃として無理に入宮させ、手篭にしようとまでしたのです。それを救って下さったのが今代の皇帝陛下の炫様です。その姉として入宮したのが私なのです、宝玉様……私は進んで姉の身代わりを引き受けたのです。大好きな姉ですから……」
これには驚く宝玉。
ただ、“一の妃”の憂いに満ちた表情を見れば、すぐに姿勢を正し、先に続くであろう話に耳を傾ける宝玉。
--事情を抱えている相手に無礼があってはならない。
宝玉は皇帝・王炫が見初めただけあり、徐々に「皇后への器」を見せ始めているとかいないとか。ただ、本人には至ってその気がないのが、皇帝・王炫には「困ったものだ」と悩ましいところ。
それはさておき。
後宮妃・“一の妃”は、事のあらましを静かな声音で語って聞かせる。先の皇帝・昭耀の後宮妃であった姉の身代わりを引き受けた自分自身のことも。その事情の全てを告げたのだ。
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