公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり

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公爵家・過去編

9.歌姫と嫡子の婚姻と厳格な公爵家

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 ※一部、軽めのR表現があります。苦手な方はご注意下さい。


 ◇


 グラント公爵家の嫡子ダリウスと稀代の歌姫キャロラインとの二人だけの婚儀。参列する者は誰もいない。それでも幸せな2人。

 嫡子ダリウスには、父である厳格なグラント公爵家当主ダグラスが反対することは目に見えている。だからこそ、敢えては打ち明けずに、まずは先に歌姫キャロラインとの婚姻を終えることにした。

「愛するキャロラインを妻にしてしまえば、父上もとやかく言うことは難しいはずだ」

 だが、嫡子ダリウスの其の考えこそが盲点。

 嫡子ダリウスが思う以上に、現グラント公爵当主ダグラスは貴族然とした御仁。高貴な血統を重んじる。ましてや平民などは論外。

 巷で流行る馬鹿げたお伽話などには耳も貸さず、「くだらない」と一笑に伏すぐらいの御仁だ。

 一方の嫡子ダリウスは、親であれば当然、最後は我が子の婚姻を認めてくれる事を期待し、初めて愛した歌姫キャロラインとの婚姻を敢行。


 ◇


 参列者もいない教会。

 祈りを捧げるのを目的に建造された街の小さな教会は静かすぎるほど。

 静寂に包まれる中、嫡子ダリウスと歌姫キャロラインの姿だけが在る。華やかな婚姻の衣装も派手な演出も婚約指輪もない。

「それでも構いません。私たちの想いは1つだから……」

 柔らかに微笑む歌姫キャロライン。

 平民出身の歌姫キャロラインが、嫡子ダリウスから唯一贈られたのは美しい首飾り。彼が密かに職人作らせた特注品。その先端には互いの細密な肖像画が入り、グラント公爵家の家紋さえも刻印されている。

「私達がいつも共にいられるように……」

 願いを込めて作らせた特注品の首飾りを妻となる愛するキャロラインの首へと掛ける嫡子ダリウス。互いに愛を誓い、嫡子ダリウスが事前に用意した〈婚姻の誓約書〉に互いの真名を記し、そっと口付けを交わす。

「愛しいキャロライン……私の奥様。君だけを愛している。永遠の愛を君に捧げよう」

「ありがとうございます、ダリウス様。私も貴方様だけを愛しております。私の愛は貴方様のものです」

 嬉しい……美しい花笑みを浮かべる妻キャロライン。

 無邪気に喜ぶさまが「可愛い……」と思える嫡子ダリウス。これまでの感情に乏しかった彼から比べれたら驚くべき変わりよう。

 愛が人を変える……良い手本のような嫡子ダリウス。

「ダリウス様……大切に致します。この首飾りは愛するダリウス様と共にある事を教えてくれる大切な宝物。肌身離さず、必ず大切に致します。ダリウス様……ありがとうございます」

 美しい花笑みを浮かべる歌姫キャロライン。夫となったダリウスの胸へと縋り付く。次には歓喜の涙を溢れさせ、夫ダリウスを見つめる眼差しは美しい。

 愛しい……と、ダリウスは妻キャロラインを固く抱き締める。

 どちらからともなく合わさる互いの唇は温かい。やがて深い接吻へと変わる

 今や嫡子ダリウスの奥方となったキャロライン。愛してやまないキャロラインと出逢えたことに深く感謝する嫡子ダリウス。

「ダリウス様……私は貴方様といられる幸せがあるなら多くを望みません。ただ、こうして共にいられることが私の幸せ……とてもとても幸せです」


 ◇


 小さな街の教会。神の身前で互いに愛を誓い、小さな宿で深く深く愛を交わし、結ばれた二人。

 蕩ける程の濃密な初夜に歓喜する2人。

 妻キャロラインは溺れるほどの愛情の中、幾度も夫ダリウスと睦み合う。

「……幸せです、ダリウス様」

「私も幸せだよ……愛しいキャロライン。君への愛しさが尽きない。私の美しい歌姫……どうか私の為だけに愛を奏でて……その甘い艶声で啼いてみせて……」

 そして甘く啼く妻キャロライン。

 可愛い……と余計に妻キャロラインを啼かす夫ダリウス。感極まり、美しい涙を溢れさせる妻キャロラインを優しく抱き締める。

 幾夜も快美の極みを迎えれば果てる二人。

 くすくすと笑みを零し、共にいられる至福を味わう。最後はただただ抱き締め合い、そのまま眠りに就く。離れ難い二人は、気付けば7日程も充実した蜜夜を過ごす。

 めくるめく蜜月を味わった後は、嫡子ダリウスは妻となった愛するキャロラインを伴い、生家であるグラント公爵家への帰途へと着く。

 2人の未来は明るいものと信じて……。
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