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常春の国 篇
〈閑話〉極冬の国・思い巡らす極冬王
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常春の国とは対極に存在する遥か極冬の地に彼の王はいる。
常春の王にも引けを取らない極上の美貌を誇る彼の王は、「極冬王」と呼ばれる偉大な君主。
長く美しい紫紺の髪に、瞳は深き蒼。中性的な美貌を湛える極冬王。
冬子をこの世界に呼び寄せた御仁。
異世界の姫を手にする為に、〈召喚〉の儀を執り行った〈王の儀式の間〉へと赴いた極冬王。
儀式の祭壇を前にして佇む極冬王の美しく蒼い瞳は、固く閉じられ、その場から動く気配はない。
目まぐるしい程の想いが、胸中を駆け巡る。
(……確かに、異世界の姫の身姿は捉えた。極上の美しさを纏う姫は我の為に咲く華ー……)
極冬王の脳裡に焼きつく美しい異世界の姫。
(……美しい黒曜石の瞳に、黒檀色の艶やかな髪を纏う美しき我が伴侶。稀有な異世界の姫……)
その様が脳裡に浮かんでは消える。
極冬王の身前に顕現するはずが、何処かへと姿を隠し、気配すら消える。
「異世界の姫が持つ氷華の紋様は、我の呼声に呼応していたはず……ーだが、今はその存在さえ感じない……ようやく氷華の紋様を持つ我の番が顕れたと云うのに、今や存在自体が消え失せ、まるで何かに阻まれているかの様にさえ感じる……」
極冬王は、独り言葉を紡ぐ。
古くから、手にした者に恩寵を与えるとされる異世界の姫。
「我のものとして慈しみ、我の飽くなく情欲を注ぐはずであった。我の手で咲く極上の美しき華ー……」
それが、忽然と気配を絶つ。
それもそのはず。異世界の姫に選ばれたのは、常春の王。
すでに、常春の王の激しい情愛を受けて、異世界の姫の初々しいその華は「幸か不幸かー」無惨にも摘み取られている。
ーとは云え、常春の王の飽くなき情愛を注がれ続ける異世界の姫は、今は眩ゆいばかりに美しく花開いている。
極冬王は思い巡らす。
(……必ず、まだこの世界の何処かにはいるはずー)
確たる想い。
そして、極冬王の想いを汲み取るかのように、“王《の守護たる双生の二枚翅”のヒョウが面白い報告をする。
極冬王を守護する二人の側近。
一の翅のヒョウに、二の翅のセツ。
ヒョウの報告によるれば「常春の王が、近く王后を迎える」との事。
それ以上の情報はないにしても、それだけでも充分。
極冬王は、不思議とその王后に興味が湧く。
あの常春の王が、王后に迎える程の女。
これまでの永き歳月の間、常春の王の情欲を魅く女は顕われていない。
それが今になり「王后だとー」見る価値はある。
「ヒョウっ、そなたは彼の国に赴き、事の真偽を確かめてまいれー」
極冬王の命に「我が王の仰せのままにー」そう云い、ヒョウは軽く頭を垂れる。
そして、すぐに消え去る。
常春の王にも引けを取らない極上の美貌を誇る彼の王は、「極冬王」と呼ばれる偉大な君主。
長く美しい紫紺の髪に、瞳は深き蒼。中性的な美貌を湛える極冬王。
冬子をこの世界に呼び寄せた御仁。
異世界の姫を手にする為に、〈召喚〉の儀を執り行った〈王の儀式の間〉へと赴いた極冬王。
儀式の祭壇を前にして佇む極冬王の美しく蒼い瞳は、固く閉じられ、その場から動く気配はない。
目まぐるしい程の想いが、胸中を駆け巡る。
(……確かに、異世界の姫の身姿は捉えた。極上の美しさを纏う姫は我の為に咲く華ー……)
極冬王の脳裡に焼きつく美しい異世界の姫。
(……美しい黒曜石の瞳に、黒檀色の艶やかな髪を纏う美しき我が伴侶。稀有な異世界の姫……)
その様が脳裡に浮かんでは消える。
極冬王の身前に顕現するはずが、何処かへと姿を隠し、気配すら消える。
「異世界の姫が持つ氷華の紋様は、我の呼声に呼応していたはず……ーだが、今はその存在さえ感じない……ようやく氷華の紋様を持つ我の番が顕れたと云うのに、今や存在自体が消え失せ、まるで何かに阻まれているかの様にさえ感じる……」
極冬王は、独り言葉を紡ぐ。
古くから、手にした者に恩寵を与えるとされる異世界の姫。
「我のものとして慈しみ、我の飽くなく情欲を注ぐはずであった。我の手で咲く極上の美しき華ー……」
それが、忽然と気配を絶つ。
それもそのはず。異世界の姫に選ばれたのは、常春の王。
すでに、常春の王の激しい情愛を受けて、異世界の姫の初々しいその華は「幸か不幸かー」無惨にも摘み取られている。
ーとは云え、常春の王の飽くなき情愛を注がれ続ける異世界の姫は、今は眩ゆいばかりに美しく花開いている。
極冬王は思い巡らす。
(……必ず、まだこの世界の何処かにはいるはずー)
確たる想い。
そして、極冬王の想いを汲み取るかのように、“王《の守護たる双生の二枚翅”のヒョウが面白い報告をする。
極冬王を守護する二人の側近。
一の翅のヒョウに、二の翅のセツ。
ヒョウの報告によるれば「常春の王が、近く王后を迎える」との事。
それ以上の情報はないにしても、それだけでも充分。
極冬王は、不思議とその王后に興味が湧く。
あの常春の王が、王后に迎える程の女。
これまでの永き歳月の間、常春の王の情欲を魅く女は顕われていない。
それが今になり「王后だとー」見る価値はある。
「ヒョウっ、そなたは彼の国に赴き、事の真偽を確かめてまいれー」
極冬王の命に「我が王の仰せのままにー」そう云い、ヒョウは軽く頭を垂れる。
そして、すぐに消え去る。
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