88 / 111
極冬の国 篇
異世界の姫を取り戻す者
しおりを挟む
「……やはり、な。幼いトウ王子では、トウカ王女を取り戻すは難しいとみえる」
ーだが、極冬王には、そのような事は百も承知
両国の王らが、一度として刃を交えずとも、常に互いにの魔力は相殺されるように、王の実子である王子らとてそれは同じ。
甚大な魔力を持つ者同士、これまで互いに干渉する事もなく存在してきた。
互いの魔力がぶつかれば、両国の王らも無傷ではいられない。それこそ国が吹き飛び、消滅してしまいかねない。
それ程の甚大な魔力を持つ極冬王と常春の王。
(トウ王子はまだ幼い。ー故に、感情の起伏が激しいトウ王子は、ある意味では流されやすい。下手に攻撃を仕掛けずに様子を伺う常春の一の王子の方が、トウ王子よりは力量は上と見える。ふふっ、だが問題ない。此処は我が領土。我の庭も同然……今更、一の王子に何が出来る……?)
意外にも心中穏やかな極冬王。
愛してやまない異世界の姫は、紛れもなく極冬王の胸に身を任せて眠っている。
更には、より深く眠らせる為に冬子の唇を奪い、己れの魔力を注ぐ。極冬王の魔力に呼応して、冬子の胸に咲く大輪の氷華の紋様が妖しく光る。
極冬王の魔力を受けて育つ氷華の花。
氷華の姫たる美しい冬子。
極冬王が、無情にも冬子の心の臓に植え付けた氷華の種は、冬子の身体中に根を張り、冬子を縛る枷となっては、極冬王からは離れられない身体へと足らしめている。
冬子の心の臓に植え付けられた氷華の種を取り除き、氷華の紋様を消滅させる事ができるのは、それを施した極冬王自身。
およそ、常春の王ですら取り除く事は不可能。
或いは、もう一つだけその方法があるとすれば、心の臓を剣で貫き、その動きを止めれば、自と氷華の種は枯れる。
ーそれは即ち、その者の「死」を意味する。
この極冬の国にしか存在しない美しい氷華の花。
極冬王の魔力に依って咲く氷華の花は、この地をー、更に厳密に云えば、極冬王から離れ、その魔力の供給を断たれれば、途端に枯れ果ててしまう。
それは冬子とて同じ。
極冬王からは、常にその舌でもって口内を犯される冬子。
互いに舌を絡めては、混じり合う粘液と共に、魔力を注がれる冬子は、常に乱れ喘ぐ。
時には、極冬王の熱く滾る楔を深く咥えさせられ、口淫によっても欲情の汁と共に、魔力を注れる事もある。
極冬王が特に好むのは、一日とて置かずに成される激しい情交。
冬子の甘い蜜を垂らす淫靡な穴へと挿し込まれた極冬王の昂ぶる楔。存分に冬子の両の蕾を穿ち、幾度も吐き出される欲情の汁と魔力を、冬子の胎へと溢れる程に吐き出す。
その所為で、今日まで何事もなく、穏やかな生を与えられている冬子。
極冬王の色に、存分に染められている冬子。
(ー故に、其方は我から離れては生きられない身体。美しい氷華の姫は此処でしか生きられないのが運命……どうあっても我のものー)
くくっ、何が可笑しいのかー、極冬王からは、忍び笑いが漏れる。
「ーさて、トウカの事はセツとヒョウに任せると致そう。我は、愛しい氷華の姫が、二度と余計な者に惑わされる事のないように、王后牢へと連れ帰り、再び酷く罰を与えねばならぬ。くくっ、愛しい姫……其方は永劫に渡り、もはや王后牢から出る事はないー」
やはり、極冬王の笑みは仄暗い。
冬子をうっとりと見つめる極冬王の蒼き瞳には、狂気さえも混じる。
ーその刹那。
「ー配下に任せるなどと……随分と余裕ではないかー……だが、その余裕も最早ここまでー!」
突如、この場へと現れたのは、彼の国の絶大なる君主。
輝くばかりの黄金の髪を靡かせ、尊大な態度で佇む常春の王。
「ーその余裕が隙を生む」
常春の王の手には、見事な金色の王の剣が燦然と輝く。
その手に握る金色色の王の剣で、冬子を抱く極冬王の腕を一刀の元に両断する。
そこに躊躇いはない。
まさに瞬く間の出来事。
極冬王の切断された腕からは、血飛沫が上がり、思わず片膝を付く極冬王。
「ぐうううううっ!」
大量の血が流れ落ち、極冬王自身を赤く染め上げる。
斬り落とされ、転がる極冬王の腕。
「父上ーっ!!」
絶叫するトウ王子が、己れの父王の元へと飛ぶ。
そして、その手の中にいたはずの冬子は、常春の王の腕の中へと奪い去られる。
「……愛しい冬子……ようやく其方に逢えたー……」
しかと抱き締める常春の王。
あの頃と少しも変わることのない美しい冬子が、確かに常春の王の胸の中に眠る。
甘く芳しい香り。懐かしい匂い。
常春の王を惹きつけてはやまない美しい冬子が、確かに此処に在る。
「……どれ程に其方に逢いたかったことかー……愛しい余の宝。もう二度と其方を奪れはせぬ……!」
凪いだ心を落ち着かせるように、ゆっくりと金眼を閉じる。
「……愛しい余の冬子ー……其方だけを愛しているー」
尊大な相貌には、深い情愛が浮かぶ。
冬子を抱き締める腕には、更なる力がこもる。
ーしばし、逢瀬の刻。
後には、極冬王の惨事に叫び声を上げるトウ王と、方やー、安堵に湧く一の王子。
そう、常春の一の王子には別の狙いがあった。
極冬王の目を逸らし、刻を稼ぎ、父王である常春の王に、異世界の姫を奪い返す機会を与える事こそが、一の王子の最大の狙い。
ーだが、極冬王には、そのような事は百も承知
両国の王らが、一度として刃を交えずとも、常に互いにの魔力は相殺されるように、王の実子である王子らとてそれは同じ。
甚大な魔力を持つ者同士、これまで互いに干渉する事もなく存在してきた。
互いの魔力がぶつかれば、両国の王らも無傷ではいられない。それこそ国が吹き飛び、消滅してしまいかねない。
それ程の甚大な魔力を持つ極冬王と常春の王。
(トウ王子はまだ幼い。ー故に、感情の起伏が激しいトウ王子は、ある意味では流されやすい。下手に攻撃を仕掛けずに様子を伺う常春の一の王子の方が、トウ王子よりは力量は上と見える。ふふっ、だが問題ない。此処は我が領土。我の庭も同然……今更、一の王子に何が出来る……?)
意外にも心中穏やかな極冬王。
愛してやまない異世界の姫は、紛れもなく極冬王の胸に身を任せて眠っている。
更には、より深く眠らせる為に冬子の唇を奪い、己れの魔力を注ぐ。極冬王の魔力に呼応して、冬子の胸に咲く大輪の氷華の紋様が妖しく光る。
極冬王の魔力を受けて育つ氷華の花。
氷華の姫たる美しい冬子。
極冬王が、無情にも冬子の心の臓に植え付けた氷華の種は、冬子の身体中に根を張り、冬子を縛る枷となっては、極冬王からは離れられない身体へと足らしめている。
冬子の心の臓に植え付けられた氷華の種を取り除き、氷華の紋様を消滅させる事ができるのは、それを施した極冬王自身。
およそ、常春の王ですら取り除く事は不可能。
或いは、もう一つだけその方法があるとすれば、心の臓を剣で貫き、その動きを止めれば、自と氷華の種は枯れる。
ーそれは即ち、その者の「死」を意味する。
この極冬の国にしか存在しない美しい氷華の花。
極冬王の魔力に依って咲く氷華の花は、この地をー、更に厳密に云えば、極冬王から離れ、その魔力の供給を断たれれば、途端に枯れ果ててしまう。
それは冬子とて同じ。
極冬王からは、常にその舌でもって口内を犯される冬子。
互いに舌を絡めては、混じり合う粘液と共に、魔力を注がれる冬子は、常に乱れ喘ぐ。
時には、極冬王の熱く滾る楔を深く咥えさせられ、口淫によっても欲情の汁と共に、魔力を注れる事もある。
極冬王が特に好むのは、一日とて置かずに成される激しい情交。
冬子の甘い蜜を垂らす淫靡な穴へと挿し込まれた極冬王の昂ぶる楔。存分に冬子の両の蕾を穿ち、幾度も吐き出される欲情の汁と魔力を、冬子の胎へと溢れる程に吐き出す。
その所為で、今日まで何事もなく、穏やかな生を与えられている冬子。
極冬王の色に、存分に染められている冬子。
(ー故に、其方は我から離れては生きられない身体。美しい氷華の姫は此処でしか生きられないのが運命……どうあっても我のものー)
くくっ、何が可笑しいのかー、極冬王からは、忍び笑いが漏れる。
「ーさて、トウカの事はセツとヒョウに任せると致そう。我は、愛しい氷華の姫が、二度と余計な者に惑わされる事のないように、王后牢へと連れ帰り、再び酷く罰を与えねばならぬ。くくっ、愛しい姫……其方は永劫に渡り、もはや王后牢から出る事はないー」
やはり、極冬王の笑みは仄暗い。
冬子をうっとりと見つめる極冬王の蒼き瞳には、狂気さえも混じる。
ーその刹那。
「ー配下に任せるなどと……随分と余裕ではないかー……だが、その余裕も最早ここまでー!」
突如、この場へと現れたのは、彼の国の絶大なる君主。
輝くばかりの黄金の髪を靡かせ、尊大な態度で佇む常春の王。
「ーその余裕が隙を生む」
常春の王の手には、見事な金色の王の剣が燦然と輝く。
その手に握る金色色の王の剣で、冬子を抱く極冬王の腕を一刀の元に両断する。
そこに躊躇いはない。
まさに瞬く間の出来事。
極冬王の切断された腕からは、血飛沫が上がり、思わず片膝を付く極冬王。
「ぐうううううっ!」
大量の血が流れ落ち、極冬王自身を赤く染め上げる。
斬り落とされ、転がる極冬王の腕。
「父上ーっ!!」
絶叫するトウ王子が、己れの父王の元へと飛ぶ。
そして、その手の中にいたはずの冬子は、常春の王の腕の中へと奪い去られる。
「……愛しい冬子……ようやく其方に逢えたー……」
しかと抱き締める常春の王。
あの頃と少しも変わることのない美しい冬子が、確かに常春の王の胸の中に眠る。
甘く芳しい香り。懐かしい匂い。
常春の王を惹きつけてはやまない美しい冬子が、確かに此処に在る。
「……どれ程に其方に逢いたかったことかー……愛しい余の宝。もう二度と其方を奪れはせぬ……!」
凪いだ心を落ち着かせるように、ゆっくりと金眼を閉じる。
「……愛しい余の冬子ー……其方だけを愛しているー」
尊大な相貌には、深い情愛が浮かぶ。
冬子を抱き締める腕には、更なる力がこもる。
ーしばし、逢瀬の刻。
後には、極冬王の惨事に叫び声を上げるトウ王と、方やー、安堵に湧く一の王子。
そう、常春の一の王子には別の狙いがあった。
極冬王の目を逸らし、刻を稼ぎ、父王である常春の王に、異世界の姫を奪い返す機会を与える事こそが、一の王子の最大の狙い。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
323
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる