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第一章 紡がれる日常

第79話

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 鍋ダンジョンオープン前日、長く帝国と敵対していた国が侵略を仕掛けて秒で壊滅したそうです。
 ちょっと前にも似たようなことあったなぁ。

「光の速さ」
「国境警備隊が皇帝に早馬を出そうとしたら敵が消えたらしい、国ごと」

 試食会で使う鍋を磨きながらアー君が教えてくれた。
 その向こう側では我が家の邪神様が、いつも使っているものより一回りも二回りも大きな寸胴鍋を上機嫌で磨いています。

 あれ、なんで僕ら朝から鍋磨いているんだろう?
 別にマイ鍋持っていく必要はないよね?

「国民が根こそぎ消える寸前「鍋!」っていう声が聞こえたとか何とか」
「ふふん、父様の尻尾で一撃だったぞ!」

 自分用の土鍋を手入れしながら俺様邪神が胸を張る。
 そうか、犯人はうちの邪神様かぁ。

「下手すると自分たちが死んだこと気付いていないかもしれないな、ラーシャに行ってもらおう」
『それかイネス解き放っちゃう?』
「イネス、もう一度ぺかーってやりたいって言ってたもんな」
「はい!」

 鍋に嵌ったイネスが元気よく答える。
 ねこ鍋ならぬイネス鍋、春日さんにお願いしてSNSにあげてもらいたい。

 新規ダンジョンに意識を奪われているのを好機だと思ったのだろうか、残念でした逆です。
 食事の邪魔をしようとしたと邪神様に認識され、戦争に関わっていた人間が丸っと消えちゃったみたいですね、神罰だと思って受け入れて悔い改めください。
 多分もう消化されたと思います。

 皇帝がいつも以上に仕事に忙殺されているのは本当だけどね、ダンジョンオープンに立ち会うために仕事を前倒しにしているらしく、巻き込まれた女神様が愚痴の神託を送ってきたから知ってる。
 これで戦争が始まっていたら参加出来なかったからね、神薙さんに感謝の意を示してレア度の高いものを捧げることをお勧めします。

「でも一つの国を一振りで滅ぼすなんて、もしかして神薙さん力増しましたか?」
「そうかもしれない」

 ん、待てよ?
 軽く尻尾を振って国一つ……もしや神薙さん、本体のサイズもアップしました?

「それで早朝から呼び出されて、消えた国の領土引き受けろって言われたんだ。いらない」

 敵国を滅ぼしたのは神薙さんだからね、一番話が通じるアー君に話を持ってくるのは仕方がない。

「ママいらない?」
「いらないかなぁ」

 神薙さんにはすでに断られたそうです、人間が食べ放題ならまだしも、全滅した土地に価値はないと。
 その土地の人間滅ぼしたの神薙さんですけどね。

「食べ放題……そう言えば知り合いの王子の国、どうしても穀物が育たないって言ってたな、金と人員提供させて穀物地帯作ろう。他にも数人誘って土地の管理代行させればいいな! よし、やっぱ領土引き受けた!」

 こうして帝国の隣の領土が丸っとアー君のものになり、宣言通り友人の王子や貴族らにお金と人手を出させ、広大な食物地帯を築き上げた。
 システムは互助会とほぼ同じ、月々一定額のお金を積み立て必要な時に引き出す。
 飢餓やお祭りなどの必要な時に利用してもいいし、毎月お金と引き換えに一定量を受け取るのもあり。

「帝国の教皇に大金積まれて、全国の教会に毎月配送する契約結ばされた。身内割引きで手数料値引きさせられたし!! ママどうしたらいい!!」
「アカーシャに相談しなさい」

 商業ギルドのルート使わせてもらえば負担軽減されるはずです。
 ギルド支店たくさん作っておいて良かったね。
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