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第二章 聖杯にまつわるお話

第267話

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 我が家の末っ子、本人は赤ん坊でまだ喋れないので、女神様によるステータス開示が行われました。
 個人情報?
 ここ異世界、女神様は世界の管理人、僕の旦那様は世界の持ち主、何の問題もない。

 そして末っ子の名前は「天之狭霧神あめのさぎりのかみ」と判明しました。
 長いなぁ、呼びやすく狭霧、サギちゃんかサキちゃんか、または霧ちゃんとかどうかな。

「どうかな?」
『霧ちゃん』
「キリー」
「きっちゃん」

 僕らが声をかけるたびに力むのが可愛い、それを口に出すとむぐーって叫ぶんだ。
 生まれた時から自我があると大変だね、でも大丈夫、君のお兄ちゃんも通った道だから。

「霧と境界線の神、名前からして日本神話っぽいです」

 僕が子供たちと末っ子の呼び方を考える横で、アー君と大人たちが真剣な話し合いをしています。
 同じ部屋なのに会話の温度差が酷いなぁ。

「イグちゃん、釣るより三叉槍使った方が大物釣れるぞ?」
「それやるとクラーケン出るからなぁ、たまにはのんびりもいいぞ」
「エヴァ~、この芋もう食べていいか?」
「白様ダメですよ、もうちょっと待ってくださいね」

 ちなみに邪神一家は庭で釣りをしたり、伴侶の手作り料理を食べたりと自由に過ごしてます。
 あっちは通常通りだね。

「恐らくですが、神話の存在から厄介な存在を選び出し、欠片を集めてイツキの体に植え付けたのかと」
「ママへの脅威は?」
「とても言いにくいのですが」
「ほわぁああああんん!!」
「お話の邪魔しちゃダメだよ、ちょっとお庭散歩してくるね」
『僕らも行く』
「食前の運動だな」
「お庭で餅焼いてもいいですか?」

 シリアスな雰囲気をまとった女神様の声を遮ってしまったので、会話の邪魔にならないよう立ち上がったら子供たちも皆ついてきた。

「イツキ、オムツは大丈夫かい」
「うん、まだ大丈夫」
「ぐぎぃぃ!!」

 ピンクのフリルオムツが気に入らないようで、話題に出すたびに抗議してくるんだよね。
 ルドが尻尾を振りながら期待した瞳でこちらを見てくるので、スラちゃんを一匹呼び寄せてルドの背中に乗せます、その上に末っ子を座らせればあら不思議、世界で一番安全なチャイルドシートの完成です。

「俺もロデオに乗って散歩したい」
「お庭滅茶苦茶になっちゃいます」
『神薙様に怒られちゃうの』

 いや、でも雨のように作物が降るあれ、果樹園でやれば容易に食べ放題できるんじゃない?
 問題は果樹園にロデオが走るスペースがないってことなんだよね、最初はそれなりに整備されて歩く道あったはずなのに、隙間隙間に子供たちがあれこれ植えるから、今じゃただの森です。

「……続きを」
「はい」

 僕らが十分離れた頃、シリアスな空気を取り戻したアー君が女神様に続きを促した。

「ええとですね、言いにくいし、口に出すと哀れなのですが、私の管理下にあるこの世界において日本の神では力はほぼ出せません」
「は?」
「えっと、鈴、それはどういうこと?」
「私、異世界ファンタジーが好きなんです、読むのも書くのもプレイするのも異世界ものです。インド神話とかギリシャ神話は好きですが、手を出したら厄介そうな日ノ本の神はちょっとジャンル違いっていうか。荒ぶる神は神薙だけでいいかなって、いやあの独特な雰囲気は好きですし、八岐大蛇とかも好きなんですよ?」
「じゃあ俺の弟がママの腹を食い破らなかったのは……」
「謎能力の力もあるけど、そもそも力が発揮できない?」
「はい」
「……」

 庭を一周して座敷に戻ったら女神様以外が畳と仲良しになってました。
 なにがあったんだろうか。
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