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第二章 聖杯にまつわるお話
第287話
しおりを挟む刀国の平和は門番さんにお任せし、僕らは湧き出る魅了系を元から断つ旅に出発しました。
日帰りだけどね。
「元を断つと言っても元凶はどこにいるかな?」
「迷った時の予言頼りです!」
「シャムス兄、どうぞ!」
『レモン』
「かあちゃ、レモン国が出現ポイントみたいだ!」
「うわぁ行きたくない、レモンまだ在庫あるんだけど。出来ればこっそり解決して、お土産貰わずに颯爽と帰宅したいな」
終わった頃に大量に貢がれるのではなく、叶うなら必要な分だけ購入とかしたいなー。
無理だろうなぁ、シャムスに貢いでいる筆頭が今や国母となったネリちゃんだもの。
「努力はします」
「すんのよ」
「まぁこの人数じゃ無理だろうけど」
『イグちゃんママの希望折ったらめっ、よ』
「悪い悪い」
とりあえずアー君の転移でレモン国の港に移動しました。
皆一緒だったのはそこまで、アー君親衛隊は音もなく散開、朱が率いる愉快な獣人団は近場で開かれている市場に直行、僕らはと言うとなぜか待っていた王宮の馬車に乗っています。
「え、思わず乗っちゃったけど、どこに行くんだろう?」
「ネリちゃんが手配したならお城ですね」
「お茶会か!」
『絵本の新作かな?』
「俺、レモンケーキはちょっと飽きた」
そんな会話をしている内に城門前に到着しました。
けどなぜか馬車が止まったまま動きません。
「ちょっと見てきます」
「行くんよ」
イネスを抱えたネヴォラがその場で転移し、直後に馬車の外が真っ白に染まったのですが。
霧ちゃんはシャムスを抱えて大人しく座椅子に徹しているしなぁ、じゃあ今のはイネスのぺかぁかな。
「悪者退治したんよ!」
「ママ、大当たりです! 見て!」
静かに馬車の扉が開かれたと思ったら、ドヤ顔のネヴォラとイネスが興奮気味に飛び込んできた。
扉の横ではきっちりとした服装の紳士が静かに控えている。この人が開けてくれたんだろうな、うちの子たちが騒がしくてすみません。
「アー君のゴブレットの欠片です!」
「シャムスの予言当たったんよ、レモン国に来た直後に答えが暴れてた!」
『えっへん』
「素晴らしい」
「はら、へった」
「涼ちゃんお腹空いたんですか?」
「土地に異常あるのか、早くおやつもらおう!」
二人が慌てて馬車に乗りこみ、座席に座ると同時に再び扉が閉まり、また馬車が動き出した。
馬車の中に響く涼玉の空腹音をBGMに、イネスとネヴォラが外で起こっていたことを一生懸命解説してくれました。
どうやらこちらにも魅了系が発生していたらしく、イネスがぺかっとして視界を奪い、ネヴォラが脛を攻撃して逃亡阻止、二人でボコボコにしてイグちゃんに引き渡したら、地面に不穏な空気を発する欠片が落ちていた。そんな感じのことを早口でお話してくれました。
なお攻撃力を最小限に調節してボコったので、殺してはいないそうです。
イグちゃんに引き渡した時点で相手死んだも同然なんだけどな……そこはいいのか。
「でな、イツキに残念なお知らせなんよ」
「この欠片、アー君のゴブレットの破片です。つまり、アー君の作った物を悪用するだけじゃなく、バラバラに壊したって事です」
「悪用してるかもってだけで殺意に溢れてるよな」
『逆鱗なの』
アー君の作った聖杯を悪意を広げるために利用するだけでなく、バラバラに壊してより多くの人間を使って悪意を広げようとしてるってことだよね。
所によって血の雨が降るでしょう。とか脳内でお知らせ流して現実逃避してる場合じゃない、早く事態を治めないと無駄に人が死ぬ。
よし、神薙さんの力を借りよう。
応援ありがとうございます!
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