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第二章 聖杯にまつわるお話

第396話

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 庭園に良い香りが漂い始めた頃、騎士に魔法使い、仕事上がりの大臣たちなど、続々やってきた。
 あの、晩餐会じゃないから無理して来なくてもいいんですよ?

「皇帝陛下のピザ」
「非売品」
「おお神よ」

 呼んでないのに来た人の大半が皇帝ピザのファンだった。
 皇帝ピザ、それはピザの皇帝。という意味ではなく、皇帝陛下その人が作ったという意味なんです。
 手作り料理が趣味の一つで、得意料理がピザ。
 食べるにはプライベートに招待されるか、紛れ込むか、冒険者としてクエストに参加して報酬として懇願するぐらいしか方法がない。
 紛れ込むってなんだろう。

「カニ獲れたので甲羅でお酒飲めます」
「でっかいな!」
『神薙様用?』
「神々なら女神の離宮で宴会してるよ」
『アー君!』
「だからあれは人間で消費する用、俺らはカニの身を食べような」
『あい!』

 アー君がシャムスを甘やかしている。
 なんて、なんて尊い光景なんだ!
 萌える。

「これが噂の皇帝ピザ」
「チーズが光っておる」
「うわ、うわ、これ食べていいのじゃろうか? 拝んでから食べるべきか?」

 登場時からずっと皇帝ピザを求めていた三人組が泣きながらピザを手に持っている。
 早くお食べください、冷めたら……涼玉の炎で焼き直せばいいか。

 そんな感じで好き勝手楽しんでいたら、仕事中で参加できなかった兵士の人が駆け込んできた。
 気付いた人が露骨に嫌な顔をしている。そうだよね、駆け込むってことは緊急事態だろうし、中止まったなし。

「皇后陛下、皇帝陛下はどちらにいらっしゃいますか!?」
「ちょっと待ってな、父ちゃん呼んで来い」
「おう!」

 皇帝よりも先に入口近くでお酒を飲んでいた女神様を発見、駆け寄って声を掛けた兵士に居酒屋のおっさんのような返答を返す女神様。
 帝国の皇后があれでいいのだろうか、ヘラ母さんかカイちゃんにマナー講座してもらいましょうか?

「何事だ」

 帝国皇子に連れられて皇帝登場、歩きながらエプロン外しているのを僕は見た。
 チラッとピザ好き三人組を見たら、緊急事態発生を感知して急いでピザを食べていた。
 そこはピザを諦めて気を引き締めるとかじゃないんだ。皇帝に仕える人たちが段々刀国民のようなマイペースさを身に着けている気がする。

「飛行系の魔物が王都に向かってきておりますその数、千!」

 わぁスタンピードかな?
 女神様何に興奮したんだろう。

「さらに北部より隣国に動きありと報告が!」
「よし潰そう」
「待て待て待て、皇帝は二か所も一度に回れねぇだろ」

 ピザ作りを邪魔された皇帝が若干キレ気味です、それを女神様が肩に手をかけて止めている。

「魔物はこっちで何とでもなるから、北部は任せたわ」
「分かった」

 へぇ女神様が動くんだ。どうやって解決するんだろう――ってこっちきた。わぁいい笑顔。
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