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第二章 聖杯にまつわるお話

第472話

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 今年のクリスマスは自宅でパーティー。
 ではなく、各地のスラムで鍋パーティー開催だった。

 パンドラちゃんの顔がまだそこまで広がっていなくて良かった。
 家族で手分けできる範囲で本当に良かった。

「ほら今日の飯は特別だぞ!」
「おかわりもありますから、慌てずとも大丈夫ですからね」
「さぁ今日は冷えますからね、教会の中でお食べください」

 教会にやってきたスラムの人達に元気に声をかけるパンドラ、続いて食事を渡す教会の司祭、ボランティアで手伝ってくれているご近所の方々。
 ここは比較的治安がいいからと僕も派遣されたけど、周囲の人が皆パワフルで気後れしています。

 治安が悪そうな所はイネスが行きました。
 目をキラキラさせていたので、きっと浄化しまくるつもりだろう。
 相棒に騎士様を指名していたけれど、騎士様大丈夫かな、イネスにいいように使われてないだろうか。
 帰宅したら光ってそうで心配です。

「ん? パンドラちゃん、あっちで何か揉めてる」
「ああ懺悔したい罪人集団だよ、言ってることよく分からないからいつも無視してる」

 おっと思わずちゃん付けで呼んじゃったけど、忙しさに気付いてないようだ。セーフ。
 カッコイイを目指す聖女だから「ちゃん」を付けて呼ばれるの嫌みたい、アー君が一時期「ママ」呼びを恥ずかしがっていたあれと同じ現象だろう。
 そのうち諦めるやつ。

「お兄さん、このスープおかわりしたいの」
「本当にもらえるの?」
「ん?」

 木のお椀を抱えた小さな子供たちが僕を見つめている。
 お兄さんって僕のこと?
 一瞬わからなかった。

 どうやらパワフルな皆さんに気後れしていたところ、僕を見つけて勇気を出して声をかけてくれたらしい。
 わかる。生きる力が強いよねあの人達。

 大丈夫、大丈夫となるべく優しく答えて誘導しようとしたら、元気なおばあちゃんが鍋ごともって駆け寄ってきて、スープどころかパンやらおにぎりやら置いてまた戻っていった。
 おばあちゃんなのに僕より元気!
 僕の出番が皆無!

「聖母よどうか、どうか我らの言葉をお聞きください」

 抱えきれないほどの食料を持って、にこにこ笑いながら去っていった子供達を見送っていたら、何か変な団体さんに絡まれた。
 危害を加えようとしないけれど、メソメソしながら愚痴のような祈りのような言葉を聞くのしんどい。

 シャムスやアー君のママだし、立ち位置は聖母と言えなくもないけど、最近は混沌が具現化した存在として静かにしててと懇願されることも多くてですね。
 つまり何を言いたいかというと、僕と関わると未来が変質してカオスになりますよ。

「どうか、どうか我らに慈悲を、罪を――」
「慈悲ならあっちで配ってますよ」

 今日食べるものに困ってる?
 今そこで配ってますよ?

 罪を犯して許しが欲しい?
 そういうのこそ、教会の分野だと思うんです。
 司祭も聖女もそこにいますよ。

 無償の愛、絶賛配布中です。

「罪を浄化したいなら方法あるにはありますけど」
「おお、なんと慈悲深い!」
「イネスちゃーん」
「はいぺかぁぁあ!!!!」

 呼んだらえっちゃんの闇から一瞬だけ現れて浄化光線を放ち、また戻ってしまった。
 気のせいか七色に光っていた気がする。
 忙しい反面、今日という日を楽しんでいるようで何より。

 えっと、それでですね。
 謎の宗教団体の方々、イネスの光線を浴びて綺麗な団体さんになったので、そのまま教会に預けた。

 人手が増えて教会の人達もにっこり。
 ハッピーエンドです。
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